もうひとつの「DOOR」

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□ くちなしの墓 第二部 □

くちなしの墓 5

 非情にも、バスはそれからしばらく走ってから、やっと次の停留所に停まった。
 
壮太が駆け戻ってみても、当たり前の事だがその場所に先程の人影はもう無かった。

男が出てきたビルは白っぽいタイル貼りで、間口はそれほど広くは無い。
見上げると、3階建てだろうか、1階にはシャッターの降りたガレージらしきものがあり、その横に階段とエレベーターに続く小さな玄関があった。

隣がパチンコ屋なので、時折客が出入りするときに中の騒々しい音楽やジャラジャラという玉の音が聞こえるが、商店街の終点あたりの道には、それほど往来は無い。

壮太は、ビルの入口に人がいないのを確かめ、何食わぬ顔で入ってみた。

開きっぱなしになっているガラスのドアの中の壁には郵便ポストが3つ付いており、その上に各フロアの表札が出ていた。

1階のプレートは真っ白で何も書いていない。やはり車庫か物置だろう。
2階には「ドラゴン・カンパニー」とあり、小さく「パチンコHEAVEN本部」と書いてある。隣のパチンコ屋の名前だ。
3階には「龍和興業」。
そして、4階だけはいかめしい黒い表札に、金色の文字で「銀龍会 事務所」という文字が浮き彫りになっていた。

壮太はそこを出て通りの反対側に渡ると、少し離れた場所からもう一度そのビルを見上げてみた。
なるほど、3階建てだと思っていた最上階は広いバルコニーになっていて、その奥に4階フロアがあるようだ。観葉植物が置いてあり、中は見えないようになっている。

工藤らしき人物があのビルから出てきたということは、銀龍会に関係があるのだろうか。
その前に、さっきの男が本当に工藤だったのかを確かめる方法はないものか。
そんなことを考えていると、ビルから二人の男が出てきた。

一人は体格のいい男で、角刈りの頭にサングラス、渋い紫色のダブルのスーツといういでだちで、もう一人はひょろりとしていて、派手なシャツに赤っぽいズボン、頭はリーゼントでやはりサングラスという、絵に描いたような極道スタイルだった。

「『銀龍会』のチンピラか・・・。」

壮太は小さくつぶやいてから、車道を挟んだ反対側を、二人の男と同じ方向に歩いて行った。
男達は肩をいからせて商店街をそぞろ歩き、やがて定食屋らしき店に入って行った。

少し考えてから、壮太もその店の暖簾をくぐった。
夕飯時なので、店の中は客が多い。
チンピラ二人がちょうど空いている席に座るところだった。
かろうじて他にも空席があったので、壮太も客用の新聞や本が置いてあるところから適当な週刊誌を取ってそこへ座った。

メニューを見ながらチンピラに注意を向けていると、体格がいい方の男が何かに気付いたように席を立ち、一人で競馬新聞を広げながら食事をしている男の側へ行った。

それを見ていた壮太は、椅子から飛び上がりそうになった。

あいつだ。工藤だ!

ヤクザらしき男は、工藤に声をかけ一礼した。
工藤もそれに軽く会釈を返しただけで、お互いに同席するわけでもなくヤクザは自分の席に戻ってメニューを見ている。

壮太も必死になって動揺を抑えつけ、注文をして雑誌を広げた。
ちらちらと、この3年間忘れたくとも忘れられなかった男の顔を盗み見る。
白っぽい開襟シャツにグレーのスラックス姿の工藤は、どこかの事務員のようにも見えて、ヤクザという風格では無かった。

しかし、酒やけしているのかどす黒い顔と軽薄そうなうすい唇は3年前のそのままで、監獄生活で少し痩せたせいか、ますますそのギョロリとした目が強調されていた。

運ばれてきた料理を、壮太は味もわからぬままとにかく腹に詰め込んで、雑誌を読むふりをしながら観察していると、工藤はビールのグラスが空になったようで、読んでいた競馬新聞を畳み始めた。

昨日からあんなにも、どうやって工藤を探し出そうかと策を練っていた壮太だったが、こうしてあっけなく目の前にターゲットが現れてしまっては、その先にどうするつもりなのか全く考えていなかった自分に腹が立った。

とにかく、奴の住んでいる場所や行動パターンを調べてみよう、そう思って壮太はさりげなく自分も店を出る準備をし始めた。

その時、ふと、さっきのチンピラの一人と目が合った。正確にはサングラスなのでこちらを見ているような気がしただけなのだが。

工藤が席を立って勘定を支払っている。
壮太も後を追いたいのだが、確実にリーゼントのチンピラはこちらを凝視していた。

(工藤を探っているのを気付かれたのか・・・?)

動くに動けずじりじりとしていると、なんとリーゼントが立ち上がってこちらへ近付いてくる。
内心冷や汗をかきながらも、昔のワルだった頃に身につけた不遜な態度で、チンピラを睨み返す。

リーゼントは壮太の前に立つと、サングラスをちょっと下にずらして小さな目をいっぱいに見開いてから、拍子抜けするほどの甲高い声を出した。

「センパイ・・・? 壮太センパイっすよねぇ!?」

その子供のような腫れぼったい目と、八重歯には見覚えがあった。
「タカシ・・・か・・・?」

「やっぱり! 壮太センパイだ! いやぁどうしたんすか。お久しぶりっす。」

工藤が店を出て行く。
壮太は内心舌打ちしたが、この思いがけない再会をしてしまったからには、無下に席を立って追うわけにもいかない。

仕方なく、チンピラと向き合った。

「タカシ・・・お前今はこっちにいるのか?」

タカシは確か、壮太の一つ年下だったはずだ。
中学生の頃、悪いグループの中にいて、いつも「センパイ、センパイ」と金魚のフンのようにくっついて回り、「かっこいいっすねぇ、壮太センパイみたいになりたいっす」が口癖だった。
兄弟が多く貧しい家庭の三男だか四男で、とにかくツッパリに憧れて不良の仲間入りをしたつもりだったらしいが、喧嘩では一番最初にやられて伸びている始末で、いつも壮太達中心メンバーの使いっ走りになっていた。

しかし、人懐っこくて何故か憎めない性格だったので、からかったり馬鹿にしながらも側にいさせてやったのを思い出す。

タカシは壮太の向かい側に座り込んで、ニヤニヤしている。

「そうなんっすよ。壮太センパイも・・・?」

「いや、俺は仕事場の人と飲みに来た帰りだ。」

「すっかりカタギなんっすねぇ、壮太センパイ。頭良かったもんなぁ、センパイは。」

「ただの鉄工員だよ。お前こそなんだ、ずいぶん立派ななりじゃないか。」

「いやぁ・・・。」

タカシは照れくさそうに頭をかいた。まんざらでもないような顔をしている。

「もちろん俺は高校なんか行けなかったっすからねぇ。フラフラしてたんですけど、あそこにいるアニキに拾ってもらえて。今じゃいっぱしのヤクザですよ。」

タカシは少し、胸を張った。

(自慢するような事かよ)

壮太は内心思ったが、「すごいじゃないか。どこの組なんだ?」と話を合わせてやった。
「銀龍会っていうんすよ。このへんは銀竜会のシマなんです。」

「あちらさんがお前の『アニキ』かい?」

「そうなんすよ。アニキは組長のボディーガードもやるような人で、強いのなんのって。」

ぜひとも関わり合いになりたくないな、と壮太は思ったが、せっかく知り合いがいたのだから、と壮太は思いついた。

「さっき、お前の『アニキ』が挨拶していた人がいただろ? もう出て行ったが。俺が住んでるところの近くでもみかけたような気がしたんだが、あの人も『銀龍会』なのか?」
タカシは、先程工藤が座っていた席をちょっと振り返ってから言った。

「あぁ、工藤さんっすか?」

わかっていたのに、その名前が出るとやはり動悸が早くなる。
壮太は精一杯の演技で、「工藤さん・・・と言うのか。」と素知らぬ顔で答えた。

「俺は直接話したことはないっすねぇ。銀竜会の構成員じゃないみたいですよ。でも、最近ちょくちょく組長のところに顔を出すんっすよ。すぐ帰る時もあるし、組長と別室で長いこと話し込んでることもあるみたいっすけど。」

「へぇ・・・銀竜会の人じゃぁないのか。」

その時、もう一人のヤクザのほうが、立ち上がってドスのきいた声を出した。
「おい、タカシ、帰るぞ。」

「あ、アニキ、すいません、今行きます。」慌ててタカシも立ち上がる。

(相変わらずパシリなんだな。)
壮太は内心、笑いを噛み殺した。

「センパイ、またこっちのほうに来ることもあるんすか? また会えますかねぇ?」

「あぁ、こっちにも時々飲みに来るから。」

「そうっすか。じゃぁ、すんません。あ、アニキ、待ってくださいよぉ。」

バタバタと出て行ったタカシを見送ってから、壮太もゆっくりと勘定を済ませて店を出た。

工藤と銀龍会がつながっている。
いくら昔はワルだった壮太だとは言え、ヤクザさんが絡んでくるのはごめんだ。

しかし、タカシが言うには工藤は組員というわけではなさそうだ。

もう少し、時間をかけて調べてみるかな・・・。
そんな事を考えながら、バス停に向かった。




    (つづく)


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週一で更新、とか言いながら、ほぼ2週間が経ってしまいました~~、すいません。
しかも、あまり話が進まない・・・(ToT)

せっかく波に乗ってきたところだったのに、なんだか急に忙しくなりまして。
ムスメが運動会やら遠足やらと行事が多い時期だというのに、風邪をひいて休んでいたり、私自身も体調不良・・・。

そこへきて、バンドのホームページ作成というミッションが・・・(>_<")

いやいや、言い訳はいけませんね。

次もまた一週間ほどお待たせすると思いますが・・・思い出したらまたいらしてくださいませ。
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Date:2011/06/06
Trackback:0
Comment:8
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

* No Title

工藤、後ろでヤクザが絡んでましたか!
単体でも厄介な感じなのに、組織がらみになると、壮太もやりづらいですね・・・。

ちょっと、あのパシリ・・・じゃなかった、タカシが使えそうですが。
でも、危険な匂いがしますよお、壮太。
あまり無茶しないでね?
(でも、無茶しないと進まない(>_<) )
気をつけて無茶して・・・。

展開はゆっくりになりますが、秋沙さんのは、臨場感を高めるために不可欠な描写ですよね。時間の経過も、そのおかげで正確に伝わってきます。
私が端折ってきた部分です。^^;
もしもいつか、投稿作品とかを書くことがあれば、私もめいっぱい書きこみたいなあ。
(仕事してる限り、無理っぽいですが(T_T))

バンドの方も、忙しくなりそうですね。
HP、なかなか作成、大変でしょう?
わたし、10年前に作って、作り終えた後、3日熱出して寝込みましたから・笑
蜘蛛の巣の張った脳を、久々に使ったからでしょう。
秋沙さんならきっとそんな苦労はしないだろうけど、でもやっぱりブログよりは手ごわいんでしょうね、今でも。

ああ、だらだらと書いてしまった・・・。
とにかく、HPも、この続きも、楽しみにしていますね^^
2011/06/06 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* No Title

うわ~、後輩に裏切られて倉庫かなにかに連れ込まれてフクロにされるパターンだよお……。

不幸の足音が聞こえる~。

でも続き楽しみ(なんてやつ(笑))


バンドのほうもがんばってください。でも無理はしないでね(^^)
2011/06/06 【ポール・ブリッツ】 URL #0MyT0dLg [編集] 

* limeさんへ♪

そうですか?不可欠な描写ですか???

そ、そうですよね。必要なんです! <(`^´)>エッヘン
なんて、かなり自信がなくて(^^;

どうやって壮太を工藤にお近づきにさせるか悩んで悩んで、とうとうオヤッさんとパシリ・・・ぢゃなかった、タカシという登場人物を無駄に増やしちゃいました。

もうここからは、どんどんストーリーの進め方が破綻していきますが(ぇ、ラストにはどうにか修正しますのでお待ちくださいませ・・・。

HP作成、本当に久しぶりで忘れちゃってて。
これでも昔は、自作のHP、季節ごとにトップページを模様替えしたり、かなり凝ったものを作っていたんですが・・・。ヒマだったのね(^^;
いやいやlimeさん、熱出しましたか!?
あれは一気にやろうと思っちゃダメですね。

近日中には一部公開できると思いますが、メンバーみんなわがままですから、あちこち直しながらゆっくりやっていきます~。

こっちも書きます~~~~(これが大事だろ)
2011/06/08 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* ポールさんへ♪

はははは。
大丈夫です、タカシはそんなに頭の回る奴じゃぁありません。
っていうか、なんで登場させたの?というくらいの脇役です(あ、これってネタバレか)

でも不幸の足音は確実に近付いておりますので、楽しみに(笑)待っていてください。更新は遅いですが。

所詮は無理ができない性格ですので、どんなにおまたせしてもマイペースで参りますよ~(^^)
2011/06/08 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

きな臭いにおいがしてきましたねぇ。
無機質なものの描写を交えながら坦々と進んでいく…、
秋沙さんのストーリーは、実は身体に悪いかもしれない。
なんてそれは冗談ですが、どきどきしてきますね。

バンドの方も、進んでいるんですね。
機会があったら是非聴かせて下さい。

2011/06/22 【】 URL #41q05U9. [編集] 

* 銀さんへ♪

身体に悪いほどドキドキしていただけたら本望です(笑)。

無機質なものの描写は好きで、ついつい長くなっちゃうんですよね~。

バンドのホームページも、なんとか公開にこぎつけました。でもまだいろいろと修正があって、こちらがおろそかになってしまって・・・(-"-;)
早くこっちに戻ってきたいのですが。

銀さんも楽しいプロジェクトが進んでいて楽しみですね♪
バンドのホームページに関しては、こちらには公表しないので(なんとなくイメージ的に別物にしておきたい)、そのうち個別に知りたい方にはお知らせします(笑)
2011/06/22 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

タカシとの出会いで何か変わるのかな。
それにしても壮太の気持ちがいじらしいよなぁ。
これも恋のなせる業なのかな。
初恋にしてはキツイよねぇ。

工藤・・・こいつは根っからの悪って気がする。
関わり合いたくない輩だね。
壮太はどうするのかな。
2011/11/25 【ぴゆう】 URL #- 

* ぴゆうさんへ♪

このあたりから、物語の進み方がものすご~~~く緩慢です。(いや、ここまでだって充分にまどろっこしかったんですが)

あまりストーリー展開に関係ないキャラクターもどんどん登場しちゃいます(笑)

それにしても・・・壮太の初恋、あんまりですよね。
重すぎます。かわいそうに(^^;←ひどい作者

工藤がどんな奴なのかは・・・そのうちわかってくるか・・・な・・・?
2011/11/25 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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