もうひとつの「DOOR」

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□ くちなしの墓 第二部 □

くちなしの墓 6

 壮太は、なぜこんなにも工藤にこだわるのか、本当の所は自分でもよくわからなかった。
 
過失とは言え親友を殺した男がそれでものうのうと生きている、それが許せないだけなのか。
しかし、今更工藤を見つけ出してどうしようと言うのか。
何をしたところで死んだ梶田は戻っては来ない。

そんなことを繰り返し自問するのだが、結局は、あの裁判所で見た工藤の卑屈な笑い顔が脳裏に浮かび、沸々と憎悪が煮えたぎって来るのだった。


 それからは、壮太は工藤をみつけた街に通いつめた。
一人で出向くこともあったり、佐藤に「この前の立ち飲みが気に入った」と言っては一緒に行ったりもした。

一週間ほど経ったある日、工藤の探索は呆気無く進展を見せた。

いつものように佐藤がそそくさと帰った後一人で立ち飲み屋に残っていると、工藤がふらりと店に入ってきたのだ。
もう、この前のように動揺はしなかった壮太は、さりげなく、しかしじっと工藤の行動を観察した。

どうやらこの店では、工藤は常連のようだ。
例の賄いのおばちゃんも「あら、いらっしゃい」と声をかけたし、何人かの客と軽く挨拶をしながら奥のほうのカウンターへと進む。

作業服姿やチンピラ風の男など、常連席にいる者たちと時々二言三言、言葉を交わしながら、グラスを二回ほど空けると店を出ていく。

壮太も少し遅れて居酒屋を出た。

商店街のメイン通りのアーケードの下をのんびりと歩く工藤を、壮太は慎重に尾行した。
工藤は時々、ひょいと細い路地に入っていき、パチンコ屋の換金所の人間と立ち話をしたりしながら、やがてまた別の居酒屋の暖簾をくぐった。

さすがにここでも店の中に入ったら気付かれるかもしれない・・・と思い、ちょうど真向かいにガラス張りのパチンコ屋があったので、居酒屋の扉が見える位置に座って、ロクに見もせずに球を弾いた。

今度の店も、1時間もしないうちに出てきた工藤は、先程よりも幾分、上機嫌のように見えた。酒が少し、足に来ているらしい。

「このままついていけば、自宅がわかるかもしれない・・・。」

壮太は、距離を図りながら工藤の後を追う。
やがて、アーケードから逸れて住宅街の中を抜けて工藤が向かったのは、小さな公園だった。

公園で休憩して酔いを覚ますつもりなのだろうか、と、壮太は少し離れた所から様子を窺っていた。

しかし、工藤が取った予想外の行動に目を疑った。

工藤は公園には入って行かず、公園を囲む低いフェンスの脇に停められた何台かの路上駐車された車の中の一台に乗り込み、エンジンをかけたのだった。

「あいつ・・・! 性懲りも無くまだ飲酒運転をしてるのか・・・!」

しかも、あの事故の後だ。運転免許も失効しているはずだろう。

血が逆流するほどの憤りを覚えた。
工藤の運転するシルバーのセダンは、乱暴に発進して走り去っていく。

そのナンバープレートと、ルームミラーにぶらさがった小さなくす玉の飾りも、壮太は見逃さなかった。


 怒りと動揺を鎮める方法がみつけられないまま、壮太はバスに揺られて家の近くまで戻ってきた。
 
少し落ち着いてくると、小夜子の事が気にかかりだした。
このところ、工藤の行方を探すことに夢中になっていて、「てつ」から足が遠のいている。

腕時計を見ると、まだ閉店まで少し時間があるので、思い切って暖簾をくぐってみた。
明日は鉄工所が休みなので、かなりの客が残っている。

おかみさんは壮太の姿を見ると、「あらいらっしゃい。ずいぶんとお見限りだったね。」と笑いながら皮肉を言った。

「いやあ・・・。」
壮太が頭を掻きながらカウンター席に向かう間、小夜子は客の注文した料理を運びながらじっとその行方を見つめていた。
しかし、そこに笑顔が無い。

その様子を素早く察知したおかみさんが、
「ほら、小夜子さんもおかんむりだよ。」とわざと明るく言い放った。

「そんなことないですよお。」
やっと小夜子が少し微笑んで言ったが、すぐに料理を出した客の方へ顔を向けてしまう。

店内は賑やかで、おかみさんも小夜子もくるくると動き回っている。
壮太は一人、小さなつまみと酒をちびちびとやって客が引いてくるのを待った。

小夜子は相変わらず、こちらを見ようともしない。

壮太の方も、先程見た工藤への怒りを抑えようと衝動的にここへ来てしまったものの、少し冷静になってくると、小夜子にだけは工藤の事を気取られてはいけない、と思い始めた。
できることなら、あの男は工藤とは別人ということにしておいて、このまま小夜子が忘れ去ってくれればいい。

そんなことを考えながら、今夜の小夜子の不自然な態度を良い事に、壮太もあえて話しかけたりせずにいた。

休日を前に気分が解放されている客たちは、なかなか立ち上がろうとしなかった。
いつもならもう店を閉めている時間になっても、いくらか数は減ったものの、まだまだ店内は賑わっている。
しかし、料理や酒の注文は少なくなってきていた。

小夜子が、このところ店に顔を出さなかったことを怒っているのなら、少しご機嫌をとっておくか、と壮太が思い始めた頃、小夜子はすっと二階へと上がっていってしまった。
よくこの位の時間になるとハルキがトイレに行きたがって目を覚ますので、様子を見に行ったのだろう。

代わりに少し手があいたおかみさんが壮太の席へやってきた。

「どうしたんだい、近頃は。一週間丸々顔を出してくれないなんて珍しいじゃないの。」

「はぁ・・・すいません。たまには鉄工所のオヤっさんの家の近くの方にも行ってあげようかなと思って、向こうへ通ってたんですよ。」

「あぁあの、佐藤さんって人かい? まぁそりゃ、あの人はちょっと家が遠いから付き合ってあげるのもいいと思うけど。そっちにお気に入りの店でもできちまったのかね。」

笑顔でそんな事をズバリと言うのだから、このおかみさんが鉄工員たちに好かれながらも密かに恐れられているのがわかる。

「そんなことないですよ。ちょっと疲れてまっすぐ家に帰った日もあったりして、気付いたら一週間経ってただけで。」
苦笑いで答えた壮太に、おかみさんはちょっと声を潜めて言った。

「小夜子さんが心配してたよ。壮太さんの具合でも悪くなったんじゃないかってね。そのうち『もういい』なんて言い出しちゃって、あれは結構怒っているかもしれないよ?」

おかみさんは、半分本気で心配してくれているようだが、残りの半分は壮太と小夜子の痴話喧嘩を面白がっているようにも見えた。

返事に困った壮太がつまみをつついていると、おかみさんはいつもの調子で話を続けた。

「あぁそうそう、この前あのお客さんがまた来たよ。ほら、小夜子さんが人違いして慌てて壮太さんの所へ飛んで行った、あの人。
フラっと来てちょっと飲んですぐ帰ったけどね。
なんだかあの人、顔が広いみたいで常連さんたちとしゃべってたわ。
工藤さんって呼ばれてたね。」

思わず箸を取り落としそうになって、壮太は慌てた。
ビールをごくりと一口飲み、どうにか平静を装おう。

「びっくりしたんだけど、あの人ムショ帰りなんだってねぇ。何をやったか知らないけど。暴力沙汰って感じには見えないけどわからないよねぇ。どうも目つきが良くないよ、あの人は。」

そんなことまで、おかみさんが知ってしまったということは、小夜子は・・・。
壮太が質問するまでもなくおかみさんは続けた。

「小夜子さんもあの人と二言三言、話をしてたみたいだけど、なんだかその後の小夜子さん、コワーイ顔をしててねぇ。
 『何かあのお客さんにいやらしいことでも言われたかい?』って聞いてみたんだけど、ちゃんと答えてくれなくて。
 とにかく、『あの人が来たら、今度からは私が相手をするから小夜子さんは関わらなくていいよ』と言っておいたけど。どうも女好きな感じがするから気をつけたほうがいいわよ。
 壮太さん、顔を出さないでいるとそういう事もあるんだからねぇ。」
 
最後の一言はどうも、冷やかしているようにも聞こえたが、壮太はそれどころではなかった。

「おかみさん・・・、そいつ、来たのは一回だけですか?」

「あぁ、そうだねぇ。あ、はいはいどうもありがとうね。」

何人かの客が帰り支度を始めたので、おかみさんは勘定をしにそちらへ行った。
あとに残った客は数人の常連だけだったので、帰る客を見送りがてらおかみさんは暖簾を片付け始めた。

それを合図に常連客もノロノロと席を立つ。
壮太もこれ以上居座るわけにも行かずに立ち上がった。

結局、壮太が店を出るまで小夜子が二階から降りてくることは無かった。





    (つづく)



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大変ご無沙汰致しました~~~。

もう何も言い訳はしますまい。


コメントのお返事も書かずに失礼しております・・・。
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Date:2011/09/09
Trackback:0
Comment:14
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

* No Title

久々の更新だ~。うれしいな^^
前回までの話も、ちゃんと覚えてて、すっと繋がりました。
まだまだ、執拗な壮太の追跡は続きそうですね。
でも、見つけたとしても、壮太自身にその先が見えていないみたいだし・・・。
いつかバッタリと対峙する日が来るのかな。
楽しみです。

小夜子、怒ってるんでしょうか。
やっぱり怒ってる?
しかたないかあ・・・。
でもそこで慌てて機嫌を取りに行かない壮太、いいですね。
この二人の関係も気になります。

はっ。
ハッピーエンドではなかったですよね。このお話。
どうなるのか・・・。
途中まででもいいから、続きを読みたいな~~。
ね?
(おねだり)
2011/09/09 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* No Title

あっ、さりげなく更新してる。笑。

小夜子さんが良からぬことを考えていなければいいですが・・・・・・。
2011/09/09 【ヒロハル】 URL #- 

* No Title

工藤の飲酒運転でまた犠牲者が出ないか心配であります。

今回はバックに暴力団がいますのでさらにひどいことになりはしないか心配であります。

それにしても久々の更新、長かったなあ!(^^)
2011/09/09 【ポール・ブリッツ】 URL #0MyT0dLg [編集] 

* limeさんへ♪

長らくお待たせいたしまして・・・m(__)m
前回までを覚えていていただけて、助かります(^^;)

壮太の追跡をどこまで書き込むか、これが今の一番の難題でして。あまりダラダラしたくないし、でもリアリティがないご都合主義の展開も・・・いや、もう、じゅうぶん私の都合なんですけど(笑)。
どのくらいの日数とか、もう私にもハッキリとわからなくて(笑)

相変わらず不器用な壮太と小夜子です。
若いって素晴らしいけど、辛いわね(^^;)

途中まででもなんて言わないで~~~。
たとえ一年に一度くらしいか更新できなくても(ぇ)絶対にこのお話は完結させますからぁぁぁ。
2011/09/10 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* ヒロハルさんへ♪

もうなんだか、オオカミ少年みたいになってしまうので、更新しましたって言って回るのも恥ずかしくって、こっそりupしました(^^;)

お、ヒロハルさん、なかなか鋭いご指摘で。
そうですねぇ・・・小夜子、ちょっと何を考えてるんだか謎ですね。
ただ怒ってるだけならいいですが・・・。
2011/09/10 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* ポールさんへ♪

前回の更新日見て、自分でびっくりしちゃいました(^^;)

バックに暴力団なんて、めんどくさい展開にしちゃったなぁと我ながら思います(´・ω・`)

昔は飲酒運転なんてみんな、当たり前のようにしていたような・・・恐ろしい。
2011/09/10 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

うーむ、工藤が不穏なかんじですねぇ。。。
なにかたくらんでいるんでしょうか??
何が起こるんだろう ^ ^;
2011/09/10 【西幻響子】 URL #U8GV5vt2 [編集] 

* 西幻さんへ♪

あ~~~、嬉しいなぁ、西幻さんからのコメント・・・(^^)

工藤、今のところどういう人物なんだかよくわからないですね。
・・・と書いて気付いたけど、ホント、どういう人物なんだろう(^^;)
作者しっかりしろ(^^;)
2011/09/10 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

工藤と小夜子と壮太の間に俄かにじわじわと不穏な波が立ち始め、いったいどこへ流れていくのでしょう?
2011/09/12 【】 URL #41q05U9. [編集] 

* おはようございます^^

良かった~! お元気そうで(*^^*)

再開、楽しみにしていました!
ちょっと話の内容を忘れちゃってる感じなので(笑)、この前の1、2話くらいを読み直さなければ上手く把握出来ない・・・(爆)。

しかし・・・・性懲りもなくイライラしますね~v-412
今のような厳しい罰がなかったので、好き勝手してたんですよね・・・・・。
小夜子、何怒ってんのかな??
心配が昂じて・・・・だけではなさそうな・・・・v-394

次回を楽しみにしてますねv-290
でも、くれぐれも体調とかにはお気をつけ下さい(><;
2011/09/13 【】 URL #9dnUgMTg [編集] 

* 銀さんへ♪

やっと、じわじわと来ました(^^;)

もう、あとは転がり堕ちていくだけ・・・のはずです、たぶん(^^;)
2011/09/16 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* 蘭さんへ♪

ご無沙汰しちゃってごめんなさい。
蘭さんのところも、のぞいただけで帰ってきちゃったり・・・(あ、ランキングはクリックしてますよ~)(笑)。

もう忘れちゃいますよね、ここまでのお話。
すいません・・・(ToT)

本当に、飲酒運転当たり前の時代でしたね。
(かくいう私も・・・( ゚д゚)ハッ!)
小夜子の態度、どういう心境なんでしょうね。次回あたりもう少しわかってくるか・・・も・・・・?(^^;)

お互い、体調には気をつけましょうね!
私も、どうやら更年期の始まりがちょこっと来てるみたいなんですよ・・・(ToT)
2011/09/16 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

やっぱ飲酒運転した奴って懲りないのよね。
最低だ。

壮太の心の中には重い鉛が入ってしまったのよね。
どんどん大きくなっていくよう。
小夜子と関係を結んでいたら、ここまではならないような気がする。
小夜子も壮太も二人共明日を考えられなくなっているものね。
辛いわぁ~
2011/11/26 【ぴゆう】 URL #- 

* ぴゆうさんへ♪

死亡事故まで起こしておいて、まだ飲酒運転をするなんて、工藤くらいかもしれませんが(^^;

でも、今はともかく、一昔前は、飲酒で切符切られたくらいだったら繰り返す人が多かったですよね。

小夜子も壮太も、純粋で若すぎますよねぇ。
工藤が出てくるのが、もうちょっと遅かったら・・・あるいは二人は、お互いの気持を確かめ合って新しい人生を歩んでいたのかもしれないなぁ。
そこへ工藤が現れたとしても、二人で話し合って乗り越えたかもですよね。
2011/11/26 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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