もうひとつの「DOOR」

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□ くちなしの墓 第二部 □

くちなしの墓 7

 翌日、休みだというのに壮太は早朝から目を覚まし、銭湯が開く時間を待って出かけた。

 梅雨とは思えないほど良い天気で、あまり湿気もない。暑さも立派に真夏のようだ。
商店街のそこここで、「暑いですなぁ」「まるで梅雨明けですねぇ」「このまま夏になるのかねぇ」などという会話が漏れ聞こえてくる。
誰しもが、これは梅雨の中休みに過ぎず、これから梅雨明けの直前にまとまった雨が来ることを経験的に知っている故の事だろう。

湯から上がり、定食屋で遅めの朝食と早めの昼食を兼ねてしっかりと食べた後、一旦部屋に戻ってTシャツとジーンズに着替えた壮太は、バスに乗った。
銀龍会の事務所のあるビルや佐藤の教えてくれた立ち飲み屋がある商店街を通り過ぎると、バスは住宅地やまだ畑が残る地区を抜ける国道を走っていく。

特急電車の高架が見えてきた。
やがてバスはその高架の下を沿うように走る道に入り、終点の大きなターミナル駅へと向かう。
しかし、壮太はその手前でバスを降りた。

記憶に間違いがなければ、裁判所で聞いた工藤の住所はこの付近で、町名はそのまま停留所の名前になっている。
周りは戸建ての家やせいぜい3階建てくらいまでのアパートがあるばかりで、田畑も多く、空が広い。
国道沿いにぽつんと立てられて屋根も何もないバス停で、壮太は持ってきたポケットサイズの地図を広げて景色と現在地を見比べる。

工藤の住所はうろ覚えで、番地までは記憶していない。
しかし、地図で見てみるとこの町はさほど広くなく、国道の反対側はほとんど田畑だ。
今、壮太が立っている側に立ち並ぶ住宅街を、全て見て回ったところで1~2時間で済むだろう。
壮太は歩き出した。

住宅街は静かだった。
時折、手押し車につかまるようにして歩く老人や買い物袋をさげた主婦とすれ違う。
子供の手をひいた若い母親も見かけるが、昼時だからか遊んでいる子供は少ない。
国道から遠く響いてくる大型トラックのエンジン音の他は、干した布団を叩く音や家の中から時々子供の声が聞こえるくらいだ。

壮太は、住宅街の中の駐車場に停められた自家用車を一台一台確かめていた。
人の目がある時には、地図を広げ電柱に書かれた番地やアパートの名前を確認しながら、あたかも新しく住む物件を探しているかのようなフリをした。

30分ほど、そうして歩いていただろうか。
6台ほどのスペースがある駐車場で壮太の目が止まった。

シルバーのセダンだ。

夜に見た時よりも、中天を少し回った太陽からの日差しを受けて白っぽい銀色に見えるが、ナンバーも、ルームミラーに下げられたくす玉のマスコットも、工藤が乗っていた車に間違いなかった。
駐車場の後ろには、2階建てのアパートがあり、それぞれの階には渡り廊下に横一列で5つずつのドアと曇りガラスに格子のはまった窓が並んでいる。2回へは鉄製の外階段で上がるようになっている、昔ながらの造りだ。それぞれのドアには表札があるが、名前を書いてあるものは少ない。
ここはあのアパートの専用駐車場だろうか。

壮太は、注意深くそのアパートの周りをぐるりと回ってみた。
反対側には1軒1軒をボードで区切られただけの続きベランダがあり、掃き出し窓が1軒に2つ並んでいる。6畳か4畳半の二間と台所という間取りなのだろう。
洗濯物が干してある家、窓を開け放して網戸にしている家などもあるが、中に人がいるかどうかまでは通りからはよく見えない。1階の部屋は、ブロック塀に阻まれて覗かれないようになっている。

また駐車場の方へ戻ってきた壮太は、少し離れた場所に公園があるのをみつけて、そこのベンチに陣取った。ここからなら、車も、アパートのドアも見渡せる。

公園とは名ばかりの小さなスペースだった。
遊具は錆びたブランコと滑り台があるだけで、周りは植木もなく戸建ての家ばかりなので容赦なく日差しが照りつける。

アパートとは反対側に自動販売機があるのをみつけ、壮太は適当な炭酸飲料を買ってきて飲んだ。

一度、アパートの1階の部屋のドアが勢いよく開き、小学生くらいの男の子が「行ってきまーす」と飛び出してきた。
それからまた静けさが訪れる。

何本目かのタバコをつけた時、三輪車に乗った小さな子供と母親が公園にやってきて、ブランコで遊びはじめた。
母親が時折、ちらちらと壮太を見る。

これ以上ここで粘るのはまずいかな・・・そう思っていた時だった。

今度は2階の、端から2つ目のドアが開いて女が出てきた。
40代くらいだろうか。痩せた女だ。茶色く染めた髪をアップにしている。
黒地に真紅の稲妻のような模様の入ったゆったりとしたTシャツに、黒い細身のパンツ、足にはヒールの高いサンダルを履いている。服装はラフな割に、濃い化粧をしている。

赤い革製のハンドバッグを持って、外階段をカツカツと音を立てて降りてきたその女は、さりげなく離れた場所から見ている壮太には気付くこともなく、バッグから車のキーを取り出した。

乗り込んだのは、あの、シルバーのセダンだった。

「工藤の女、か・・・。」

梶田を轢き殺した時も、工藤は「内縁の妻」の所有する車に乗っていた。
その時と同じ女なのだろうか。

女の運転する車は、国道の方へ出ていった。

壮太はベンチから立ち上がり、もう一度アパートの裏へ回ってみた。
女が出てきた部屋をそっと覗ったが、人がいるかどうかはよくわからない。

ともあれ、車の所有者がわかった。きっと工藤もあのアパートで暮らしているのだろう。

壮太も来た道を戻って国道のバス停へ向かった。

午後2時半。
屋根のないバス停で、短く濃い影を落としてバスを待ちながら、女が行きそうな場所を考えた。
あのラフな服装なら買い物程度か。
ここから近い買い物をする場所なら、あの商店街のスーパーか。

今日はまだ時間がたっぷりある。行ってみるか。

バスを降り立つと、休日のスーパーマーケットは客で賑わっていた。

用もないのにスーパーに入っていくのも気が引けたので、仕方なく壮太は商店街を歩いてみた。
あの立ち飲み屋も、工藤が立ち寄る居酒屋もまだ開いていない。
日曜日だから休みなのかもしれなかった。
銀龍会の事務所のあるビルの前も通ってみたが、人の出入りは見られない。
隣のパチンコ屋は休日のせいか客も多く、景気よく音楽やアナウンスが流れていた。

ぶらぶらと、スーパーマーケットの方へ戻ろうとしている時だった。
向かい側から、黒に赤い稲妻のシャツの女が歩いてきた。
両手に、買い物袋を下げている。

「当たりだ。」

壮太は踊り上がりそうになるのをこらえ、何食わぬ顔で女とすれ違ってしばらく進んでから、踵を返し、女の後を追った。

スーパーと銀龍会のビルの、ちょうど中間辺りで、女は雑居ビルに入って行った。
見上げると5階建てくらいの高さで、小さな看板が縦にずらりと並んでいる。
いずれも居酒屋やスナックのようだ。

ちょっと遅れて入り口を入ると、エレベーターが上へ上昇しているところだった。
止まったのは3階。

エレベーター横の表札を見ると、3階にはバーとスナックが一件ずつ入っている。

あの買い物をして店に入っていくのなら、あの女はたぶん、スナックのママだろう。
いかにも水商売らしい風貌だ。
だとすれば、この「スナック笑美~Emi~」という看板のほうか。

また平日の夜にでも来てみるか、と壮太はビルを出た。

工藤はどこにいるのだろう。
少し気になったが、今日は大きな収穫があったのだし、と引き返すことにした。
途中、大きなおもちゃ屋があったので立ち寄ってから、またバスに乗った。

暑い中を歩きまわって疲れてはいるが、小夜子の機嫌も気になる。

「少しハルキとも遊んでやるか・・・。」

バスの座席で、壮太は顔を手でゴシゴシとこすった。
目付きが悪くなっている気がする。
気分を入れ替えるために目を大きく開いてみたり閉じたりしてみた。



     (つづく)

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今回は、とってもと~~~っても読みにくくなってしまいました。
説明的でごめんなさい・・・。
いっそのこと、全て省いてしまおうかと思ったくらいで・・・(^^;)


でも、ゆっくりとですが、お話は進みますので・・・。
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Date:2011/10/05
Trackback:0
Comment:8
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

* No Title

壮太の粘り勝ちですね~。
ジワジワと狙いを定めて追っていく姿に、執念が見えます。
目つきがだんだん鋭くなっていく壮太。
なんか、手に取るようにわかります(≧∇≦)
そんなことをしてる自分が、ちょっと嫌なんですね・・。
でも、ちょっと頼もしくてカッコいいよ。
後に、OEAで、その目つきをするのね、坂木(´Д`。)

もうすぐ追いつめられるのか。
そして、追い詰めた後、どうする気なのか・・・。
考えてるんでしょうか、壮太。

う~~ん、気になる。次はいつ???
2011/10/05 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* No Title

「壮太探偵す」、ですね。
目つきが悪くなってくるの、わかるような気がします(笑)

秋沙さんともシンクロした気分になって喜んでる西幻です(「銀龍会」に… ^^;
2011/10/05 【西幻響子】 URL #U8GV5vt2 [編集] 

* limeさんへ♪

ま、小説ですから、妙に順調にいっちゃってますが(^^;)

たぶん壮太は、その後にどうするつもりか、考えてないですね(笑)。
そんなんで工藤を追い詰められるのか、ちょっと不安になっている作者なのでありました(^^;)

次は、なるべく早くupします!
今回があまりにもつまらなかったので(笑)
2011/10/05 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* 西幻さんへ♪

あはは、ちょっと素人にしては上手に「探偵」し過ぎちゃってますかね。
ま、作者の都合です。お許し下さい(笑)

そうそう「銀龍会」!
組の名前をつけるの、すごく苦労しました。
実際にある名前にするわけにはいかないし、でも、それっぽい名前にしたいし・・・
というわけで、ドラマとかだったらよく使われている「銀龍会」に決めちゃいました。
でも最初は「龍神組」にするつもりだったんですよ。
なので、先に書いてしまった続きの部分にはまだ「龍神組」と書いてあるところがありまして・・・
今慌てて、そういう部分に出てきた矛盾点を洗い出して推敲しているところです(^^;)
2011/10/05 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

私が寝込んでいるうちに更新頑張っていたんですね。秋沙さん。笑。

一気にとはいかないので、またちょっとずつ読んで追いつきますね。

PS.お見舞いコメントありがとうございました。
2011/11/02 【ヒロハル】 URL #- 

* ヒロハルさんへ(^^)

わ~いヒロハルさんだ~!おかえりなさい!

えへへ・・・頑張ったとはいえ、1ヶ月でやっと6話・・・(笑)すぐに追いつかれちゃうと思います(^^;

ちょうどここらへんは、ものすごく退屈な部分で読みにくいでしょうし、ゆっくり来てください(笑)。
2011/11/02 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

壮太の願いがこうして尾行をしていくうちにどんどん形になっていきそう。
心に育てた闇って消えないものね。
その闇を育てて、何がいいのか・・・
どうにも辛い。
二人で新しい道を歩き出して欲しかったなぁ~
それがないのがわかっているだけに、辛い。
もーーーーーー
2011/11/28 【ぴゆう】 URL #- 

* ぴゆうさんへ♪

壮太の執念ですね。若さ故・・・とでも言いましょうか。
まぁ実は作者の都合だったりするわけですが(^^;

だけど、ちょっとこのお話は極端ではありますが、こういうふうに心の闇に囚われて、どんどん自分から悪い方向へ動いていってしまう、ということはありますよねぇ・・・。

もうちょっと、もうちょっとで二人で新しい道を歩き始められたはずなのに・・・。
まぁ、ここで良い方向へ歩んでしまったら、limeさんの「白昼夢シリーズ」もなくなってしまうわけで、そこが辛いところです(-"-;)


あ、ぴゆうさん、わたくし、ちょっと微熱が続いておりまして、皆様のブログへの訪問が減ってしまっております。ごめんなさい。
読んでもコメントせずに戻ってきてしまったり・・・。
体調万全になったらまたエラく昔の記事にコメントしてすみませんが、伺いますのでお見捨てなきよう~~~m(_ _)m
2011/11/28 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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