もうひとつの「DOOR」

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□ くちなしの墓 第二部 □

くちなしの墓 16

「俺だって・・・・。」

壮太は口ごもった。
何か言わなければ。
言わなければならないが、言ってしまったが最後、何かが粉々に砕けてしまいそうな気がした。
何が・・・?
俺は一体、何を守ってきたんだ? 何を隠してきたんだ?

小夜子は固まってしまったかのように、壮太をみつめている。
壮太も、目を逸らしてしまったら何もかもが闇の中に落ちて行ってしまうような気がして、その瞳を見つめ返した。

「てつ」の客たちの笑い声がひときわ高く響いた。

この部屋はいつも甘い香りに満ちている。
そうだ、これは、梶田の遺影に捧げられたくちなしの香りだ・・・。

その香りを深く吸い込んだ一瞬、壮太は目眩を感じた。

「俺は・・・。俺が・・・、俺が、お前とハル坊を幸せにしたいんだ。」

言ってしまってから、壮太は何かとてつもない塊が、自分の身体の中に火の玉のように湧き出したのを感じた。
なんなんだこれは・・・?

その正体を手繰り寄せようと、必死に小夜子の表情をみつめる。

「壮ちゃん・・・」

消え入りそうな声を小夜子が出した。
小夜子の瞳が揺れている。
揺れて、壮太の顔から一瞬逸れてどこかを気にしているような気配がした。

どこを・・・?
壮太はゆっくりと、小夜子の瞳が揺らいだ方向に顔を向けた。

そこには、写真立ての中の亡き親友の笑顔があった。

あぁ、俺は、壊してしまったんだ・・・。
何故だかわからないが、そう感じた。
ずっと守ってきたものを壊してしまった。
先程感じた胸の中の熱い塊が、急速に萎んでいく。

壮太はゆらりと立ち上がった。

「悪かった・・・。今言ったことは忘れてくれ。」

「待って! 壮ちゃん・・・!」

小夜子が戸惑ったように呼び止めたが、壮太はもうその場には居られなかった。
足早に階段を降りて、靴を履く。

「あら壮太さん、お帰りかい? ハルちゃんはどうだった?」

常連客とおしゃべりをしていたおかみさんに声をかけられる。
暗い部屋から出てきたので、店内の蛍光灯が目を突き刺すように眩しかった。

「眠ったみたいなんで、帰ります。」
やっとの思いでそれだけ言うと、逃げるように「てつ」を後にした。

自分の部屋へ帰り着くとすぐに、尻ポケットからナイフを取り出して元の煎餅缶に戻し、乱暴に押入れへ放り込んだ。

激しい動揺と自己嫌悪で、身震いするほどだった。

くちなしの甘い香りが、そんな自分を苛むようにまとわりついてくる。

薄っぺらな夏掛けの布団を頭まで被っても、その香りからは逃れらそうになかった。




 どこかでけたたましくベルが鳴っている。
うるさい・・・、一体何の音だ・・・?

手を伸ばすと、触れたのは目覚まし時計だった。
音を止めて、畳の上に放り出す。ひどい寝汗をかいていた。

台所の流しで顔を洗うついでに、頭までバシャバシャと水を浴びる。
ランニングまでびっしょりになったが気分は晴れない。

作業着に着替え、低く垂れ込める灰色の雲の下、鉄工所へ向かう。
仕事になどまるっきり身は入らず、ただ機械的に身体を動かした。

「おい! 壮太! どうした?」

声をかけられてハッとすると、終業時刻のサイレンが鳴り響いていた。
佐藤が、心配そうに壮太の顔をのぞき込んでいる。

「どうした・・・? なんだか元気が無いな。風邪でもひいたか?」

「いや・・・ちょっと考え事してただけですよ。」
苦笑いで答えたが、佐藤はまだ納得が行かないような顔をしている。

「さぁ、上がりだぞ。帰ろう。」
「そうですね。」

佐藤の後ろについて行きタイムカードを押す。
壮太はふと、このまま帰りたくない、と思った。

「おやっさん・・・今日、付き合ってもらえますか?」
「おう、行こうか。」
「ただ・・・こっちの方でいいですか? この近所のどっかで。」
「かまわんよ。」
「じゃぁ・・・行きましょう。」

佐藤と連れ立って、鉄工所からほど近い居酒屋へ歩く。
「あの幼馴染みさんの店へは行かなくていいのか。」
「あぁ、あそこはこの時間は混み合うんで。後で顔を出しますよ。」

嘘ではない。後で顔は出さなくてはいけないと思っている。
ただ・・・なんとなく後回しにしたいだけだ。

しかし、入ってみた居酒屋も鉄工所を上がった工員たちで混んでおり、壮太は嘘がバレたような後ろめたい気分になった。
明日は鉄工所が休みだ。どこもかしこもこんななのだろう。

二人は無口に酒を飲んだ。
佐藤は、最初の乾杯をした時にだけ、
「本当に風邪を引いたわけじゃないんだな?」
と念を押したきり、後は何かを問いただしたり様子を伺うような事は言い出さなかった。

壮太には、それがありがたかった。

二杯目の酎ハイのグラスを開けた時、佐藤が言った。
「そろそろ、俺は帰る時間だが・・・。」

(何か話したいことがあるんじゃないのか?)
一瞬、壮太の顔をじっとみつめた佐藤の小さな瞳は、そう語っている。
しかし、壮太は目を逸した。

「じゃぁ、ここは出ましょうか・・・。」

壮太は、バス停まで佐藤と歩いた。二人共無言のままだった。
バスが来ると佐藤は、
「じゃ、来週な。」
と片手を上げて乗り込んでいった。

壮太はバスが見えなくなるまでそこに佇んで見送った。

休み前夜で、どこの居酒屋も鉄工員達で賑わっている。
壮太は、商店街のはずれの方の小さな流行らない居酒屋で一人、酒を呷った。

小夜子の揺らいでいた瞳が、どんなに酔っても頭から離れない。
夕べ口走ってしまった事を、どうにかして今から打ち消すことはできないのか。

俺は、梶田の友人として、小夜子の幼馴染として、二人の幸せを願っていたはずだ。
梶田亡き後も、遺されたハルキを育て、梶田への想いを抱き続ける小夜子を見守っていきたいと思っていた。
死んでしまっても、梶田と小夜子と俺、そしてハルキで、いつも一緒にいられるじゃないかと思っていたのではなかったのか?

それなのに俺は、小夜子に、梶田を忘れろと言ったのか。
小夜子の、梶田への想いを一番良く知っているはずの俺が。
その想いの強さは、夕べのあの小夜子の瞳の揺れを、見なくたってわかっていたはずではなかったのか。

壮太の脳裏に、高校生の時に梶田から「小夜子が好きだ」と告げられた時の事が蘇っていた。

あの時俺は・・・。
二人がうまく行くことを、本当に心から望んだのか?

梶田は親友で、小夜子は幼馴染だ。
どちらも失わずにいられるように、計算したんじゃないのか・・・?

俺は・・・俺は本当は、ずっと前から小夜子を・・・。

そこまで考えが至ると、慌てて酒を呷って打ち消す。

そんなことを繰り返して、夜は更けていき、壮太は酩酊寸前だった。

ふと、油汚れで煤けた壁掛け時計を見ると、そろそろハルキがトイレに起きだして小夜子が二階に上がる時間だった。

今日はきっと「てつ」も混んでいるし、その時間に紛れ込んで小夜子の様子をおかみさんに聞くだけなら、小夜子と顔を合わせずにすむかもしれない。

こんなに酔っていても、辰巳から言われた「小夜子を守れ」という言葉は頭から離れなかった。
あの「組織」とやらは、いつ工藤に「制裁」を下すんだろう。
制裁が下って、工藤が消えるのならば・・・。
もう何も心配はない。俺のする事ももう、無い。

その時は、そっと小夜子の前から姿を消そう。

そんな事を考えながら、壮太は重い体をひきずるようにして居酒屋を出た。




     (つづく)

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あぁぁぁぁ、緊迫感が薄らいでいく・・・(^^;

はい、壮太、思いっきり自己嫌悪モードです。ほとんどイジケに入っております。


次話、事態は急展開を・・・・見せ・・・ます・・・(たぶん・・・)。
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Date:2011/11/15
Trackback:0
Comment:14
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

* No Title

いじけることならうちの桐野くんも負けてないぞ!(自慢にならん(笑))

いじけるというのは、人間が血の通った人間である証拠だと思っています。

いじけすぎるのもなんですが、適度ないじけはいいのではないかなあ。
2011/11/15 【ポール・ブリッツ】 URL #0MyT0dLg [編集] 

* No Title

・・・・・・・・・・(ToT)


いや、しゃべりますから。

壮太~~! なんであんたはそんなに純粋なんだ~~。
もう、本心のまま突き進め~~~。
と、あばれたくなりました。
私が小夜子なら、嬉しいんだけどなあ。
きっとここで壮太の胸に飛び込んだら、絶対お互い幸せになると思うのよねぇ。
復讐より、幸せな未来を。
ハルキのためにも。
どうよ、小夜子!

次回、急展開? ・・・・やめてください(爆
自分は悲劇を書くのに、余所様での悲劇は、辛いですね・・・。
(でも、早く読みたい^^;)
2011/11/15 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* ポールさんへ♪

イジケ自慢してどうするんですか(^^;

確かに、適度ないじけは自己分析になったり、次のステップへのバネになったりするのかもしれません。

・・・が、この壮太のイジケ具合は、「適度」と言えるのだろうか・・・(^^;
2011/11/15 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* limeさんへ♪

イライラするったらありませんね。壮太の純粋さは。
純粋と言うか健気と言うか義理堅いと言うか・・・。
きっと、長いこと無意識に抑えつけすぎたんでしょうね、自分の素直な感情ってものを。

小夜子は、どう感じたんでしょうか・・・。
あえて、ここでは小夜子の気持ちは省きました。
壮太の目線だけで語っています。

そう、次話で事態は動きます、たぶん。(書けておらんのかいっ!?)

やめてほしい?いいのかい?やめていいのかい?ん?
(なんのプレイよ)(自爆)

2011/11/15 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

きっと小夜子は「思わず」遺影を見てしまったんでしょうねぇ。
その行為によって壮太がどう感じてしまうのかも意識できずに。
でも、本当は嬉しかったんじゃないでしょうか、壮太の告白が。
だからだめだよ、壮太~、小夜子の前から消えたりしちゃ!!

佐藤さん、あいかわらず粋ですな ^^

次回の急展開が楽しみ♪
2011/11/16 【西幻響子】 URL #U8GV5vt2 [編集] 

* No Title

壮太の胸の苦しみがとても切ないです。

limeさんの言うように小夜子が
「壮ちゃん!」と言って彼の胸に飛び込めば一件落着なんですけどね。

いかんせん、それがどちらも裏切りのような気がしているのでうまくいかない。

辰巳ちゃん、やっぱり早く動いたげて!
2011/11/16 【ヒロハル】 URL #- 

* No Title

いやぁ~、壮太は正直で誠実です。

おやっさんに何も言わずに抱え込むところなんか、も~~っ、くぅ~っ。

このまま自分の想いに正直に行って欲しいです。

けど、誰か救ってやってください・・・
2011/11/16 【】 URL #- 

* 西幻さんへ♪

何と言いましょうか、若さ故の思い込みの激しさというか、こういうふうに悲観的になってしまう事ってあるかなぁと。
小夜子の気持ちについては、あえて語りませんが、うん、西幻さん、さすがです。
未亡人になったことがないからわかりませんが(^^;、やはりどうしても、前に進もうとしたら一瞬でも亡き夫の事が頭をよぎってしまうんじゃないかなぁと。

おやっさん、朴訥として温かい感じの、平凡なおじさんを描くつもりだったのに、なんだか最近かっこよくなってきちゃいました(笑)。おかしいなぁ(^^;

次話・・・お楽しみに、というかなんというか、フクザツです(-"-;)
2011/11/16 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* ヒロハルさんへ♪

壮太の苦しみに関しては、かなり皆様からイライラされてしまうのでは・・・と心配だったので、「せつない」と思っていただけるのは嬉しいです・・・。

そうなんです。二人共、きちんと話しあえばいいのに、不器用で、そして真面目すぎるんですよね。
梶田のことを吹っ切ってしまっていいものか、どこかで後ろめたさのようなものを感じているのかも知れません。

さぁ、辰已ちゃんは動いてくれるでしょうか(^^;
2011/11/16 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* 名無しのけいさんへ(^^)

けいさん・・・ですよね?(笑)

ほんっと、壮太は正直で誠実。
だけど、正直過ぎ、誠実過ぎ(笑)。

これが女子だったら、「も~聞いてよ~。こんな事があってさぁ。どーしたらいいのかわかんないのよねぇ」なんてガールズトークもできそうなもんですが(^^;

救ってあげたいですけどねぇ・・・
なんと言っても、このお話は「白昼夢シリーズ」・・・。
2011/11/16 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

壮太……

酒など飲んでいる場合ではないだろーに!
と、PCの前で叫んでしまいました。
飲んでる場合じゃないよー好きな人はどんどん奪ってかないとー
…まあ、それができないのが壮太なんでしょうけど。。

続き、楽しみにしてます。

あ、キャラ投票しておきました。おもしろいー
うちでもやろうかしらん♪(スメラギの結果は目に見えてわかるので、やる意味がないとはおもいますが)
2011/11/17 【綾瀬】 URL #- 

* No Title

あいやー
投票したのに、コメント欄の文字数が多すぎてエラーに(汗)
ま、また24時間後に投票しますですー
2011/11/17 【綾瀬】 URL #- 

* 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011/11/17 【】  # 

* 綾瀬さんへ♪

おっ、綾瀬さんは「どんどん奪う」肉食系女子・・・?
φ(.. )メモシテオコウ

いや、ほんと、酩酊状態になってるバヤイぢゃないですよね、壮太・・・。

キャラ投票、楽しいですよ~~~。
あ、綾瀬さんのところでもやってほしい!
スメラギの結果?
そうかなぁ、ちょっと考えただけでも、スメラギと美月の一騎打ちだけでも面白そうだし、あぁだけど、夜魔も大好きだし、なんせ私はかなり「死神」がお気に入りだったりするし・・・。うあぁぁぁ迷いますよこれは。

あ、エラー出ちゃいましたか(^^;
大丈夫です。まだまだ連載終了まで時間はたっぷりあります(笑)
2011/11/18 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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