もうひとつの「DOOR」

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□ くちなしの墓 第二部 □

くちなしの墓 22

◇     ◇     ◇     ◇


 言葉少なに酒を飲んでいる間に、夜は深くなってきている。
さすがの辰已も、今夜はしみじみと酒を味わっているようだった。

宝石箱をひっくり返したような、とはよく使われる表現だが、まさにその通りの夜景も時間と共に灯りがまばらになりつつある。

辰已が持参したウィスキーを自分のグラスに注ぎ足し、琥珀色の液体が残りわずかになってきたのを確認して、ふと、坂木が口を開いた。

「なぁ・・・。俺があの時、OEAに入らずに姿を消していたらどうなっていたんだ?」

いつの間にか、しっかりとスーツの上着をハンガーに掛け、ズボンはプレス機にかけてワイシャツなのに下だけスウェットを借りている辰已は、
「あぁ?」
と、重そうになってきている瞼を上げて坂木の顔を見た。

「逃げる可能性だって考えていたんだろう?」
「さぁな。」
「とぼけるなよ。俺はやっぱり消されたのか? 組織の事を知ってしまったからにはな。」
「それは俺が決めることじゃないからなぁ。」
「この狸オヤジが・・・。」

くっくっく、と意味ありげに笑った辰已は、昔を懐かしむように目を細めた。

「実を言うとな。俺は最初にお前さんについてのデータを見せられた時から、お前さんをOEAに引っ張り込んでみたらどうか、と思っていたんだ。
 それで、工藤の尾行をやめさせるにはどうするかって事になった時、わざわざ直々に会いに行ってみたわけだ。」

「ふん。そいつはご苦労なこった。」

タバコに火をつけて、ふうっと煙を吐き出すと、辰已は続けた。

「実際、お前さんに会ってみて、俺の勘は当たりだと思った。だが、話をしてみたら、お前さんが小夜子を守るのに必死になっていることがよくわかった。・・・まぁ、やり方には少々問題があったがな。
 それで思ったんだ。『守りたいものが側にあるんなら、OEAに入る必要は無い』ってな。」
 
「・・・・。」

「組織の存在を匂わせはしたが、そうでもしなきゃお前さんの暴走が止まらないと思ったのもあるし、『小夜子たちを守るためなら組織の事は口外するな』とでも言っておきゃぁ、お前さんはその通りにするだろうと踏んだんだよ。」

辰已はそこで、ソファーの背にもたれて伸びをしながら、大きなあくびを一つした。

「あの親子を死なせちまう事になるとは思ってもみなかったがな・・・。あれで、どうあってもお前さんは連れ帰らなきゃならん、と考えたんだよ。
 まぁ、お前さんが逃げたとしても、部下が張り付いていたからな。いずれ俺が追いかけて行って、首根っこ掴んでOEAに連れてくることになっただろうよ。」

「結局そういう事かよ。」
坂木も、大げさにため息をついてみせる。

「しかしだな。あれから銀龍会や、他にも工藤が関わっていたヤクザさんの中には、工藤は殺されたんじゃないかと疑う動きもあったのは確かだ。あいつは、また戦争を起こす画策をしていたようだったから、情報源として工藤を使っていた組では大慌てだ。
 お前さんの存在にまでたどりついた様子は無かったが、危ないところだったことには違いない。
 俺はお前さんの命の恩人じゃないか。」
 
「よく言うよ。」
呆れ果てている坂木を尻目に、辰已は立ち上がると使われていないほうのベッドに寝転がった。

「なんだよ! 泊まっていくつもりかよ!」

「だいぶ飲んだなぁ。いや、ちょっと横になって目をつぶるだけだ。」
「それを『寝る』って言うんだよ!」
「瞑想をするんだ。」
「ふざけるなよ、おい!」

そう言っている間にも、辰已はイビキをかき始めた。

「・・・ったく、しょうもねぇ。」

坂木はヤケになって、瓶の中に残ったウィスキーを、全て自分のグラスに注ぎ入れた。

――――― 命の恩人か・・・。俺をOEAに連れてきた辰已が恩人なら、陽を連れ帰ってしまった俺はどうなんだ・・・?

坂木は、ぶんぶんと頭を横に振った。

――――― いや、恩人とは言い難いな。あいつはまだ子供だった。他にまっとうに生きていく道はもっとあったはずだ・・・。それなのに俺は、あいつをさらってきちまったんだ。それにしても、陽・・・。いつになったら帰ってくるんだ?
 
 
「馬鹿野郎。さっさと帰ってこい!」

坂木が小さくつぶやくと、まるでそれに呼応するかのように、グラスの中の氷がカランと音を立てた。



◇     ◇     ◇     ◇




 壮太が廃屋のある空き地にたどり着いた時、日は西に傾きかけていた。
まだ残る雲の隙間から、まるで天上の世界への階段のように、金色の光が放射状に射している。

壮太は、小夜子が倒れていたというあたりの地面を、買ってきたばかりのシャベルで掘り始めた。小さな穴をいくつか並べていく。
夕べの雨で土は水を吸って柔らかいとは言え、雑草の根がはびこっていたりして、思いのほか時間がかかった。
いつの間にか、壮太は汗だくになりながら穴を掘ることに没頭していた。

最後の穴を掘り終える頃にはあたりには夕闇が降りてきており、やがて車のエンジン音が聞こえてきて近くに止まった。
ドアを開け閉めする音に続いて草を踏む足音が壮太のすぐ後ろに来ると、低いよく通る声が言った。

「来ていたか。・・・何をやってるんだ?」

壮太は振り向きも答えもせず、作業を続けた。辰已は黙ってその場に立っている。

壮太は持ってきたバッグから、夕べ辰已から受け取った新幹線の模型を取り出し、ハンカチできれいに拭くとそれで丁寧にくるみ、最後に掘った一番深い穴の中にそっと入れる。
それから、梶田の遺影と、小夜子とハルキの映った写真もそこへ一緒に入れると、土を埋め戻しはじめた。

「なるほど。お前さんにとっての三人の墓というわけか。」

黙々と土をかけていく壮太を、辰已もそれからはただ黙って見守った。

完全にその穴を埋め、落ち葉や草をかけてすっかり元通りにした壮太は、手を止めて立ち上がり辰已に向き合った。

「辰巳さん、俺はその『OEA』とやらに行きますよ。
 ただ・・・1つだけ、聞いてもらいたいことがある。」
 
「なんだ?」

壮太は真っ直ぐに辰已の目を見た。

「あんたは、俺に『幹部候補生』になれと言ったが、それは断る。
 俺に、『実行部隊』としての訓練を受けさせてくれませんか?」
 
 
 
 
       (つづく)


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 予定では、次話で過去のお話しは最後となります。

そして、そこを書き上げれば、あとは既に書き上がっている部分を手直ししてupしていくだけ・・・。


やっとここまで来た、という安心感と同時に、なんだか離れがたいようなフクザツな気持ちです。

まだ何話か残っていますが、終盤に入ります。
もう少し、お付き合いくださいませ・・・。
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Date:2011/12/07
Trackback:0
Comment:14
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

* No Title

辰巳さん、狸オヤジ… ぷぷ(笑)

坂木がもしも陽を連れ帰らなかったら…どうなっていたんでしょうねぇ。ちょっと考えてみたんですけど、想像つきませんでした。

壮太の掘ったお墓には、彼の涙も埋まっているような気がします。
悲しいな…。

うーん、そうですか。物語は終盤に…。
連載が終わってしまうのは寂しいです。
2011/12/07 【西幻響子】 URL #U8GV5vt2 [編集] 

* No Title

過去と現在との二重構造が、たまらんです。
ごろんと転がって寝てしまう酔っ払い親父。・・・いいなあ。
あれ?そこは陽のベッドじゃないのかい?おっさん。

そして、気ごころの知れた現代の二人もいいけど、
まだちょっととげとげした感じの、過去の二人もいい。

坂木が陽を連れ帰らなかったら・・・。
いや、あのときの坂木には、その選択は無かったですからね。
あのとき、坂木が連れ帰らなかったとしたら、・・・きっと、考えるのも恐ろしい結末が陽には待っていたように思えますi-241
(って、坂木に言ってやってください)

ああ・・・もう、終盤なんですね?
過去の回想も終わって、終盤なんですね?
続きを読みたいけど、寂しい・・・。
どうか、なが~~~い終盤にしてください(>_<)
2011/12/07 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* 西幻さんへ♪

ふふふ、ちょっと最近、辰已が話をごまかすときのすっとぼけ方が気に入っている私です(^^)

limeさんのコメントにもありますが、坂木が陽を連れ帰らないという選択は、ありえなかったんでしょうね、やはり。もしも、そんな事があったとしたら・・・陽は今頃生きてすらいなかったかも、と思ってしまいます。

壮太はここに、哀しさも辛さも、全てを埋めてしまうつもりなんでしょう。
辰已は「3人の墓」と言いましたが、「村井壮太」という人間も入れて4人の墓なのかもしれないですね。


連載が終わるのを寂しいと言っていただけるなんて、嬉しいです。
でも、この二人の旅は、ずっと続けさせておきたいな、と思ってます。
2011/12/07 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* limeさんへ♪

こんな日くらい、最後まで大人な酒の飲み方を・・・と思っていたのに、またやってくれましたねぇ辰已。
(またそういうふうに書きやがってと辰已が怒っております。limeさんの所へ帰ってきたらおっさんの愚痴、聞いてやってください)(笑)

まったくねぇ・・・坂木も陽に「俺はお前の命の恩人だ」くらいのこと、言えるほどの図々しさがあってもいいのに(笑)。


大丈夫です。私の悪い癖で、エピローグが長いです。
たぶん、最終話まであと5話、かな・・・。

2011/12/07 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011/12/07 【】  # 

* 鍵コメPさんへ♪

なんで鍵コメ!?(笑)
2011/12/07 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

実行部隊か……幹部では力を持て余すかもしれませんね。

そんな壮太にもいつかは幹部入りの話が舞い込んでくるのかな。
次はそういうお話書いてみません?
これはlimeさんに言うべきなのか。笑。
2011/12/07 【ヒロハル】 URL #- 

* ヒロハルさんへ♪

あはは。結構、壮太は「武闘派」?(笑)

幹部入りの話かぁ・・・。

辰已の下にいる限り無さそうな気もするけれど、そういうのも面白いですね♪
limeさんに提案してみてください(笑)

でも、私もそろそろ次のお話のネタ、考えないとなぁ(まだなんもないんかいっ!?って突っ込まないでください)(-"-;)
2011/12/07 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

二人のおっさんの飲み会が良いですね。

本音を言っているのか、ごまかしを言っているのか・・・

こんな組織にいるばっかりに、もしかしたら気の合う仲間になれたかもしれない二人なのに、みたいに思えてきました。

ていうか、めっちゃ気は合っていますよね。
合わせ方が何か問題有りみたいだけど・・・?

辰巳が、がーっと寝込んでいるときに陽が帰ってきちゃったら、坂木はどこに寝る?
もちろん陽にベッドをゆずるという前提で。。。
2011/12/09 【けい】 URL #- 

* けいさんへ♪

どうなんでしょうね、この二人のおっさん・・・(^^;

もしかして、「仕事」が絡まない関係だったら、特にお互いに興味を持つこともなく過ぎ去ったかもしれないし。。。とも思ってしまいました。

辰已はOEAではエリートですし出世頭でもあり、結構恐れられている存在なんだと思うんですよ。
なんたって「総合管理部長」(だったかな?)ですからね~~。
でも、そんな辰已に歯に衣着せぬ物言いをする坂木が、実は辰已は可愛くてしょうがないだろうし、そんな坂木だからこそ辰已も安心して酔っ払いオヤジになれるんでしょう。


あ、辰已がいる間に陽が帰ってくるっていうのは、まずありえないです。絶対にそうならないように辰已が仕向けます(笑)。この日も、自分がいる時間には帰らないように、何かしらの理由をつけて陽には指示したと思います。で、そそくさと逃げていったよ(笑)
2011/12/10 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

>もしかして、「仕事」が絡まない関係だったら、特にお互いに興味を持つこともなく過ぎ去ったかもしれないし。。。とも思ってしまいました。

ああ、そうか。そうかもしれませんね。この二人。
互いに逃れられないカルマのようなものを持ってるから、惹きつけ合うのかなあ。

辰巳っていう男、いろいろ、遊べそうですよねぇ。
なんか、からかって遊んでみたくなりました。
クリスマス企画で・・・と思ったけど、別のを考案中だし。(これがまた、暗い)
うーん。
しかたない、脳内で遊びましょう^^←アブナイ人
2011/12/10 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* limeさんへ♪

もしかしたら、普通に会社の上司と部下だったら大げんかかも?(笑)

クリスマス企画、楽しみだな~(^^)
私も何か考えようかと思っていましたが、たぶんくちなしの墓の連載がちょうどクリスマスあたりで終わると思われるので、ちょっと無理かな・・・。
じゃぁ、お正月企画か・・・?(笑)

ぜひぜひ、また辰巳で遊んでください~~!!
limeさんが書いてくれる番外編が、また私のスピンオフのヒントになるんですよ~。
2011/12/10 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* ああ、ここまで来たのか…

なんて、不思議な感慨に浸りました。
limeさんのところの『白昼夢』と交互に拝読させていただいてきたせいかも知れません(^^;

坂木はこうやって、二重に人を想っていくのか。すべて失った人々を。
一番辛いのは‘人間’である、彼かも知れないな、などと。
ヒトは悲しい生き物だと、改めて思います。
むしろ、すべてを初めから越えていた陽や、愛する人のもとへ逝けた小夜子は幸せだったのではないか? と。
う~ん、そう思わずにはいられないことを仕出かしているから、そう思いたいのかも。

愛すべき人間って、彼のような不器用な人かも知れないですね。

2011/12/13 【fate】 URL #- 

* fateさんへ♪

エレジーをお読みになった直後にこれでは、かなり辛いものがあったでしょうね(ToT)

坂木という人は、本当に「人間」そのものかもしれないですね。
愛するものを失って、それでも生きていかなければいけない・・・。
陽は本当に最初から天使のようで「生」に執着が無かったし、小夜子は、(冷たいようですが)失ったものに執着しすぎて自ら危険に飛び込んでしまいましたが。でも坂木だけが、そんな人達への愛情も罪も全て一人で請け負って「生きていく」事を不器用ながら選んでいるんです。

透明な儚い世界にも憧れますが、やっぱり私は、ドロドロしていてもかっこ悪くとも、「生」に執着して生きていく人間を描きたいのかもしれないです(^^)

fateさん、いつも素敵な感想を本当にありがとう。
もう、このお話の最終話までには連載に追いついていただけそうですね(^^)
2011/12/13 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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