もうひとつの「DOOR」

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□ くちなしの墓 第二部 □

くちなしの墓 23

 「『使徒』になりたいって言うのか?」
辰已は片眉を吊り上げて驚いた顔をした。

「あぁ。」

「だが、お前さん、人を殺したこともないのに『実行部隊』はなかなか辛いもんがあるぞ? もちろん、「仕事」は人を殺すことだけじゃぁないんだが。
 それとも・・・人を殺してみたいのか?」

壮太は、またしゃがみ込んで作業を始めた。
先程掘った小さな穴の方へ、買ってきたくちなしの苗を一本一本、丁寧に植えていく。

「人殺しなんかしたくもないね。あんた達『OEA』が、罪のない犠牲者を出さないために悪人どもに制裁を加えるっていうのも、正直それが正しい事なのか俺にはわからない。
 そのために、小夜子やハルキのような犠牲者が出たって事も、俺には許せそうにない。
 そんな俺が、『神に代わって』人殺しの指図をするなんて事、やっちゃいかんのじゃぁないかと思うだけですよ。
 あんた達の理念はご立派かもしれないが、人は神を気取ったりするもんじゃないだろう・・・と俺は思うんです。」
 
辰已は、
「ほう。」
と一声発すると、可笑しそうに声を殺して笑った。
「組織にとっちゃぁ、キケンな思想だな。」

「俺を連れていくのは、やめますか?」
「・・・いや。むしろ気に入ったね。」

壮太は、素手でくちなしの苗床にかぶせた土を固めながら言った。

「俺は確かに、人をこの手で殺したことはまだ無い。
 だけど、小夜子とハルキを死なせた責任は、俺にもある。俺はあいつらを守ってやれなかった。・・・もう、この手は汚れているのと同じなんだ。
 この罪は消えるもんじゃないけど、何かできるとしたら、俺は、自分の手を本当に血で汚してでも生きていくしかないんだろうと思ってるだけだ。」
 
腕組みをしてしかめっ面をしていた辰已がうなずいた。

「わかった。
 これから立ち上げる訓練施設では、『訳があって世間にいられなくなった子供たち』を『はえぬき』としてゆっくりと育てる計画なんだが、実際の所は『使徒』の数が足りないというのが現状だ。
 お前さんには、即戦力として動いてもらうための短期訓練を受けてもらうことになる。
 ・・・厳しいぞ。」
 
「望むところだね。」

全ての苗を植え終わった壮太は、立ち上がって確認するかのようにそこを眺めた。
辰已も、隣へ来てそれに倣う。

「何を植えたんだ? その花は、くちなしか。」
「あぁ。・・・小夜子はくちなしの花が好きだったんだ。」
「なるほどね。だが、そこに元々生えているほうの木は違うのか? 似たような葉っぱじゃないか?」

くちなしを並べて植えた後ろには、はじめから低木が茂っている。そこを差して辰已が不思議そうな声を出した。

「そっちは『榊』ですよ。ここに祠があった名残だろう。」
「あぁ、あの神棚に供えたりするやつか。そいつは、花は咲かないのか?」
「咲くには咲くけど、小さくて目立たない花ですよ。」
「ほう。そいつは知らなかった。」

二人はしばし、無言でこの「墓」をみつめていた。
季節が終わりに近づいているくちなしは、うなだれたような花をその小さく頼りない枝のところどころに咲かせている。

突然、何か思いついたのか辰已がぽんと手を打った。

「よし、お前の名前は『坂木』にしよう。」
「はぁ?」
「使徒は皆、本名を捨てて新しい人間になるんだ。そのために免許証などの身分証明書も用意される。いい名前じゃないか。お前さんは今日から『坂木』だ。」

「葉っぱは似てるのに、くちなしに比べたら地味な花しか咲かない『榊』が俺にはお似合いってわけですか。」
壮太は自嘲気味に笑った。
その脳裏には、小夜子の家の庭にある榊の葉が思い出されていた。
小夜子がよく、祖母に届けに来た「榊」の葉・・・。

「そのままの『榊』という漢字では特徴がありすぎるから、『坂道』の『坂』に『木』で坂木だな。
 お前さんは今から、『坂木』になるんだ。『村井壮太』は今ここで消える。」
 
「なんでもいいっすよ、名前なんて。」

壮太はバッグからタオルを取り出して、手についた泥を拭った。

その様子を眺めていた辰已が、やがて少し改まった口調で言った。
「気は済んだか?」

「あぁ。」

「よし。それじゃぁ行くか。」

辰已が運転席に乗り込みエンジンをかける。
壮太が乗り込むと、車はゆっくりとその場所を後にした。

助手席で、これからは「坂木」として生きていく事になる壮太は、目の中に焼き付いた暗闇に浮かぶ白い花の残像を消すかのように、固く目を閉じた。



◇     ◇     ◇     ◇




 人が動く気配を感じて、坂木は目を覚ました。
いつの間にか、ベッドで眠ってしまっていたらしい。

そのままの姿勢で部屋の中を見ると、辰已がスーツに着替えているところだった。

坂木はまだ完全には開かない目で、腕時計を確認してため息をついた。
「まだ6:30じゃねぇか。・・・ったく、年寄りは朝が早いな。」

ベルトを締めながら、辰已がふん、と鼻を鳴らす。
「俺は誰かさんと違って忙しいんだよ。」
坂木はカチンと来て、寝返りを打ちながら言った。
「好きで暇にしてるわけじゃないね。」

「そうか? それなら仕事をやろう。今日の夜までには正式に指示が来ると思うが、明日には移動してもらうぞ。」

「仕事? パートナーも戻っていないのに、か?」

「陽には、今日のうちにここへ戻るように言ってある。明日の午前中には二人で第三支部へ行け。」

「第三支部だと!?」

思わず、坂木は毛布を跳ね除けて起き上がった。

「何か文句があるのか?」
鏡の前でネクタイをしめながら、辰已がドスの利いた声で言う。

「大有りだね。」
坂木は吐き捨てるように答えた。

最後に第三支部の仕事をしてから、まだ一年も経っていない。
その時、現場を立ち去る陽を目撃した女・・・ターゲットに飼われていた商売女だったのだが・・・を、逃がすか殺すかで、独裁的な第三支部長だった黒崎と陽がもめて、危うく殺されかかったという、忌々しい思い出があるのだ。

辰已は呆れたような声を出す。
「何を言ってるんだ? すでに黒崎はロシア支部とKGBの残党の裏工作の件で更迭されている。それに関わったものも一掃された。そのせいで俺はこのところ多忙を極めたがな。
 第三支部には今は新しい支部長も就任しているし、何も問題はないじゃないか。」

「・・・。」

「一週間ものんびり過ごせたんだ。せいぜい張り切って仕事をしてくれよ。」
すっかり身支度を整えた辰已は、
「じゃぁな」
と手を上げると、さっさと部屋を出ていった。

「くそっ・・・。目が覚めちまった。」

坂木はのっそりとベッドから立ち上がり、バルコニーに出てタバコに火を点けた。
昨日までの長雨が嘘のように上がり、動き出した都会の騒音が、その上空にかかる排気ガスの靄と共に次第に膨らんできていた。


陽が帰ってくる。

次の仕事が第三支部というのは気に入らないが、陽が帰ると思うだけで、長いトンネルを抜けたような気分を坂木は味わっていた。




     (つづく)

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 「第三支部」とその支部長「黒崎」にまつわる忌々しい思い出ってなんだっけ・・・?という方は、
limeさんの「白昼夢第9話 天使の称号」をご参照くださいませ。
(カッコいい辰已が見れます)(^^)


これで、坂木の過去「壮太」のお話は終了です。
この後、エピローグ的なお話です。・・・と言っても4話もありますが(^^;


そして・・・・!
お待たせ致しました! 陽が帰ってきます・・・!(^^)
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Date:2011/12/11
Trackback:0
Comment:10
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

* No Title

おお!陽が帰って来る・・・。
うれしい。

そして、読み進めるうちに、いろんな新鮮な驚きがたくさんこぼれてきました!
坂木は、やっぱり榊からきたんですね。
最初に濃緑の葉で榊が出て来た時に、お!と思いました。
くちなしと榊。・・・・なんか、ジンと来ます。うまいなあ。

しかし・・・・まさか、辰巳が名付け親だったとは!!ww
なんか、意外でもあり、面白くもあり。
でも、「名前なんて、なんとでも決めてくれ」っていう坂木の投げやり感が垣間見えて、いいですねえ^^

そしてまたびっくりなのが、これはあの第三支部でのいざこざの後・・・。
ああ、そうか、「旅路」が、あの直後だったんですもんね。
(なんか、年表作りたいですね)
そうか・・・。なんか、悲しいですね。もうあんまり時間がない。
ああ、もう、何であんなことになるんだろう。(だれのせいよ)

でもやっぱり、この辰巳と坂木の会話シーンって、微妙な空気感があっていいですね。この物語がぐっと、二人の関係性に深みを出してくれました。

なんだか、最近若い子ばっかり書いてるから、こんな渋いおっちゃんたちが恋しい・・・。

いや、でも、やっぱり陽だ!次回は会えますね?帰ってきますね?すぐにUPしてください(もう、強制になってる^^;)
2011/12/11 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* limeさんへ♪

「榊」「坂木」・・・ダジャレかいっ(゜o゜)\(-_-)
とか突っ込まれるかとヒヤヒヤしました(^^;

本当にくちなしの葉と榊の葉、似ているかどうか自信が無いんですが・・・(超いい加減だなぁ)
なんか勝手に、坂木の名付け親を辰已にしてしまってよかったんでしょうか(って今更聞くなって)(^^;

limeさんには、原作者として前もって意見を聞いておきたい部分と、やっぱり「そう来るか!?」とびっくりさせたい部分とがあって、いつもそのせめぎあいです。
結構、「そんなつもりじゃなかったのに・・・」とlimeさんに思わせてしまっている部分もあるかと思います・・・。すみませんm(_ _)m

そうなんです、酔っ払った辰已が「あの時俺が助けてやったのに・・・」とか「久しぶりにコルトをかまえた」とか言い出してしまったので、「天使の称号」の後、ということになってしまいました。(辰已のせいかよ)
ただそうすると、もうあまり時間がないって事になってしまうのが、ちょっと心残り・・・。


ホント、年表作りたい(笑)。


お待たせしましたね~。陽、帰ってきます!
でも、ちょっとお叱り覚悟です。陽・・・いつになくおしゃべりです(^^;
2011/12/11 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

陽が帰ってくる~っ!(しかも「いつになくおしゃべり」、だなんて…
ふぅ~、なんか単純にうれしいです。

小夜子の事件で傷ついた坂木は、その後出逢った陽に救いをもとめたんですかねぇ…?思わず「白昼夢」を再読したくなりました。

辰巳が名付け親だったことにlimeさんがびっくりしてて、笑ってしまった(笑)
二次創作というのはこういう楽しさもあるんですね。
2011/12/11 【西幻響子】 URL #U8GV5vt2 [編集] 

* No Title

「くちなし」だから、秘密を口外するな、という意味かと思いましたが、うーむそうきましたか。

やるな秋沙さん(^^)
2011/12/11 【ポール・ブリッツ】 URL #0MyT0dLg [編集] 

* No Title

本当だ。「坂木」の下りで、limeさんが驚いている。笑。
憎い演出じゃないですか。

くちなしっていい香りがするんですけど、いかんせん虫に食われ易いのが……。
2011/12/11 【ヒロハル】 URL #- 

* No Title

お見事な展開です!
めっちゃ感動ほぉ~~

『村井壮太』は今ここで消える・・・に、じ~~ん~~

しばし余韻に浸る自分・・・秋沙さん、引き上げてください。。。

陽が帰ってくる・・・何しゃべるのかな。
2011/12/12 【けい】 URL #- 

* 西幻さんへ♪

西幻さんも、ず~~っと根気よく陽を待って下さいましたね~(^^) お待たせしました。
ちょっとね、「しゃべりすぎ」って怒られるんじゃないかってヒヤヒヤしてます。

坂木は・・・陽に出会って、たぶん、「今度こそ守りたい」と思ったのではないかと・・・ほとんど反射的に。
ぜひともまた「白昼夢シリーズ」再読なさってみてください(^^)
私も、スピンオフを書くからには、私のを読んでからlimeさんの所に戻ったら、何かしら最初には感じなかったものを発見したり考えたりしていただけたらいいなぁと思ってるんです(^^)

うふふ。そうやって、limeさんを驚かすエピソードを、どうしても入れたくなってしまうんですよ(^^;
そのうち怒られるんじゃないかと思いながらもいたずらがやめられない~(笑)
2011/12/12 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* ポールさんへ♪

あはは、「口無し」ですか(^^;

いやぁ、やっぱり私はミステリーの才能はなさそうですね(笑)。
単純に、小夜子の好きな花だから、くらいの発想しかありませんでしたよ(^^;
2011/12/12 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* ヒロハルさんへ♪

ダジャレですけどね~(笑)。

もうあまりにも前に書き始めたので、なんで「坂木」→「榊」を思いついたのか、まるっきり思い出せないんですよ(^^;

良い香りのする植物は、たいがい虫がつきやすいんですよねぇ・・・。
この小夜子達の墓も、虫だらけになってしまうんだろうか・・・ってお~~~い!!(^^;
2011/12/12 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* けいさんへ♪

ありがとうございます♪

頭の中に最初に浮かんだこの展開を、きちんとカタチにするにはずいぶん時間がかかってしまいました。
まぁ、だいぶ危ない綱渡りもした気がしますが(笑)

もうちょっと余韻に浸っててください♪(*^_^*)
次回から、陽が帰ってきて空気が変わりますからね(^^)
2011/12/12 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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