もうひとつの「DOOR」

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□ くちなしの墓 第二部 □

くちなしの墓 24

 辰巳が帰ってからほどなくして、陽からメールが入った。

「今日の昼頃には戻ります。辰巳さんからホテルを移ったことも聞いてます。」
と、素っ気無いものだった。

仕事のことにも墓参りのことにもまったく触れられていない。
坂木は、問い詰めてやりたい気持ちをなんとか抑え、「まぁ何時間後かには帰ってくるのだから・・・」と放っておいた。


 それからの坂木は、寝不足にもかかわらずそわそわと落ち着かなかった。
つまみを食べた後のゴミやウイスキーの空き瓶をビニール袋にまとめて捨てた。
灰皿に山になっている吸殻も処分し、バルコニーへの扉をいっぱいに開けた。

都会の空気は排気ガスでにごっていたが、水色の空は晴れて明るく高かった。

やる事がなくなって、ソファーに座ってテレビをつけたり居眠りをしたりしていると、いつの間にか正午を過ぎている。

気温は高かったがバルコニーから吹き込む風が心地良く、うとうとしている時に部屋のチャイムが鳴って、坂木は飛び起きた。

やっと、陽が帰ってきたのか。

坂木は、ドアの所へすっ飛んでいったが、ノブに手を掛けようとしてから慌ててもう一度部屋の中へ戻った。
そして、タバコに火をつけるとそれを咥えたまま、両手で頬をごしごしとこすってから、つとめてゆっくりとドアを開けた。

「ただいま。」

いつも移動の時に持ち歩いている大きなスポーツバックと、何やら茶色い紙袋を提げた陽が、これまたいつものようにいたずらっぽい微笑を湛えた瞳で立っていた。

「お、おう。」

わずかに一週間ほど留守にしていただけの相棒に、坂木はどういう顔をしていいかわからなくなって、そそくさと部屋の中へ戻りソファーにどっかりと座った。

「わぁ、いい眺めだね。」

自分でドアを閉めて入ってきた陽は、荷物をおろすと窓のところで嬉しそうに声を上げた。
白いシャツに日差しが映えている。

「高そうなホテルだね。辰巳さんに怒られない?」

仏頂面でタバコをふかしながら、坂木は答えた。
「あいつに文句なんか言わせるもんか。」

陽はバルコニーに出て、まぶしそうに目を細めて眺望を楽しんでいたが、やがて部屋に入ってきた。

「坂木さん、お昼ごはんまだでしょう? 僕ね、なんだか無性にハンバーガーが食べたくなって買ってきたんだ。坂木さんのぶんもあるよ。」

先ほど陽が帰ってきた時から、その匂いでわかっていた。
陽は持ってきた紙袋からハンバーガーの包みやフライドポテトなどをテーブルに広げ始めている。

聞きたいことが山ほどあるのだが、何からどう質問していいかわからずジリジリとしながら、坂木は奇妙なほどに上機嫌の陽を眺めていた。

陽はコーラらしき飲み物を二つ、テーブルに並べたところで空になった紙袋を畳むと、
「はい、坂木さんにはこれも。」
と言いながら、バッグの中から缶ビールを取り出した。

冷えたものを買ってきたのだろう、表面に結露の汗をかいている。

「あぁ、お腹がすいた。」

陽はコーラを一口飲むと、早速ハンバーガーの包みをあけてぱくついている。

坂木は、受け取った缶ビールの栓を開け、一気に半分ほどを飲み下すと思い切って陽にたずねた。

「第二支部の仕事は・・・どうだったんだ?」

「うん、なんの問題もなかったよ。僕の仕事はセキュリティーの解除だけだったから、気楽だった。」

「そうか・・・。」

それ以上、何を聞き出したらいいのか、坂木が次の言葉をさがしている間に、陽は長いフライドポテトを美味そうに食べ、それをつまんでいた指を紙ナプキンで拭きながら、一つ前置きをした。

「辰巳さんから聞いてるかもしれないけど。」

「・・・。」

「坂木さんのお祖母さんのお墓、行ってきたよ。」

坂木はまたビールをごくりと飲んだ。よく冷えている。

「・・・よく場所がわかったな。」

坂木がやっとそれだけ答えると、陽はハンバーガーに食らいつきながら、まるで小学生が今日の学校での出来事を報告するかのようにしゃべり始めた。

「辰巳さんから坂木さんが暮らしていた場所は聞いていたから、その辺りのちょっと古そうなお店で、『この町で割と昔からあるお墓といったらどこですか』って聞いてみたんだ。そうしたら簡単にみつかったよ。大きなお寺だったし。」

「そうか・・・。」

陽の言うとおりなら、まだあの辺りには古くから住む人もいて、あの寺も変わらずにあるという事なのか。
あの街の景色が思い出されてきて、坂木は不意に胸苦しいような感情に襲われた。

陽は嬉々として話し続ける。

「あ、お墓はきちんとあったよ。掃除もされてるみたいだった。こっそりお花を供えてきたよ。
 あのあたり、新しい家とかマンションとかもずいぶん建っていたけれど、お寺の方へ行くと昔からあったんじゃないかって感じの所も残ってた。僕、坂木さんが育ったのはどんな所なのかなぁって思って、ちょっとそこいらを散歩してみたんだ。」

「そんな事をして・・・危険じゃないのか。」

「どうして? 僕みたいなのが一人でふらふら歩いていたって、誰もべつに気に留めないよ。」

「そりゃぁそうかもしれないが・・・。」

「まぁ、一応、歩きまわったことは辰巳さんには内緒ね。」

いたずらっ子のように大きな目をくるりとさせると、陽はますます楽しげになった。

「そうそう、その時にね、ちょっと面白いことがあったんだ。」

「面白いこと?」

「うん。あのあたりに古くから住んでるらしい人達って、すごく親切で世話好きで、昔の田舎みたいな感じなんだね。お墓を教えてくれたおばさんもそうだったし・・・。」

「何が面白かったんだ?」

「あの町の昔の様子なんかをね、ちょっと不思議な・・・っていうのかな、ご夫婦に聞いてきたんだ。」

「不思議な夫婦?」

「おじいさんとおばあさん。」

まるで知らない場所を探検してきた子供みたいだ。
自分の過去を陽に知られることが心配だった坂木は、陽のあっけらかんとした態度に安堵を覚えながら、そして少々その無鉄砲な行動に呆れながら話を聞くことにした。





     (つづく)

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 お待たせ致しました~。陽が帰ってきましたよ(^^)
しかも、なんだかゴキゲンです。どうしたんでしょうねぇ。

残す所あと3話。
ゆったりまったりと参ります。


キャラ投票のほうも、意外や意外、結構なデッドヒートになってきておりますよ(^^)
皆様奮ってご投票くださいね~。
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Date:2011/12/14
Trackback:0
Comment:14
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

*

そういえば、退院してからハンバーガーを食べていないことを思い出し、今からマックに走ろうかと思いました。笑。

陽が戻るまで、とても時間が長かった気がする。

陽、テンションが高いですが、何を知ったんでしょう。
2011/12/14 【ヒロハル】 URL #- 

* ヒロハルさんへ♪

おお!もうハンバーガーにかぶりつけるまでに回復なさってるのですか!24時間営業の店舗へ急げ!(笑)
なんででしょうねぇ、時々無性に食べたくなるんですよね~。なんか怪しい薬とか混ざってるんじゃないかと思ってしまう(笑)

陽が戻るまで、坂木が待ったのはたったの1週間ほどなんですが・・・
実は・・・このお話の読者様は、1年以上待っていたって事に今、気付きました。たいへんお待たせ致しましたm(_ _)m

テンション高いですねぇ。坂木のおばあさんの墓参りをして、坂木の昔過ごした場所を見ることができたって事が、単純に嬉しかっただけなのかもしれないです(^^;
2011/12/14 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

うああ~、遅くなってしまった!
陽が、帰って来たというのに~!
(興奮気味)

ふはは。いや、私よりもソワソワしているおっちゃんが一人・・・。
もう、可愛いんだから、坂木さん^^
「おかえり~」ってハグしちゃえ。(ごめん、夜中はナチュラルハイです)

しかし、陽が・・・なんだか中高生の坊やみたいにかわいい! なんで?どうしてこんなに陽気?
なんか、親元を離れて、ちょっぴり冒険してきた子狐みたい。ハンバーガー、食べてるし・・・。(*´ー`*)
(なにしても、かわいいのだ)

いやん、気になる。いったい、陽は何に出会ったんでしょうね。
私も坂木の横に座って、聞きます!

・・・ううう。嬉しいのに、なんかマジで泣きそう・・・。何ででしょう。
2011/12/14 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011/12/14 【】  # 

* 不思議な話…

うう、いたく興味をそそられました。
なんじゃ、それ?
絶対、何かあるよね~(世の中に「絶対」なんて存在しね~ぜ、と言いつつ…)

『小夜子は、(冷たいようですが)失ったものに執着しすぎて自ら危険に飛び込んでしまいましたが…』
↑そう、そういうことだよな、とfateは最後は彼女の中に夜叉を見た気がして、実は切なかった。
それはfateの‘闇’と実は少し似ています。
過ぎたる愛は暴力となる。
「愛」と「暴力」を、言葉を変えれば何にでも当てはめられるように。
そこに至るともう‘人間’ではいられなくなる境界線。fateは、それを超えた途端、待っている昏い運命を見つめ続けて酔い続けているのかも知れない、と、ここで思いました。
アブね~(^^;

そうやって、去りゆくモノを見送り続ける。
坂木の立ち位置が、実は一番苦しいものかも知れないですね。
今後、明かされる「不思議な話」を聞きに舞い戻って参ります~(^^)

2011/12/14 【fate】 URL #- 

* limeさんへ♪

陽以上にlimeさんがハイになってる(*^_^*)

坂木ったらもう、素直じゃないですねぇ~。本当は犬みたいに駆け寄っていって尻尾振りたいくらいなんだろうに(笑)。
だけど、これ、upしてから思ったんですが・・・
実は陽も、かなり照れくさいのかもなぁって。
だから、ハンバーガーを二人分買ってきて、ぱくぱく食べながらやたらとおしゃべりになってごまかしているんじゃないかなぁ。おかしな二人です(^^)

それにしても、ちょっと可愛すぎましたね、この陽。もう私の中では、ソファの上で体育座りしてハンバーガーを食べている小学生くらいになってしまってますよ(^^;

もうそんなに、驚くような内容は出てこないですが・・・(ネタバレじゃんそれ)どうぞ、坂木の隣でおしゃべりな陽の話を聞いてあげてください(^^)

(坂木の横にずらりと読者様達が並んで、陽の言葉を待っている図を想像してしまった)(笑)
2011/12/14 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* 鍵コメさんへ♪

やはり・・・・あなたでしたか(^^;
2011/12/14 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* fateさんへ♪

小夜子は一見おとなしそうだけれど、正義感が強くて激しい情熱を秘めている女性だったのかも、ですね。
彼女が一番許せなかったのは、工藤ではなくて、梶田がいなくなったからと言っていつも近くで見守ってくれている壮太にさっさと乗り換えようとする自分だったのかも知れません。
過ぎてしまったもの、失くしてしまったものにケリをつけたかったのでしょうが、やはり過去よりも、壮太との現在や未来にもっと目を向けて欲しかったですね。現実に壮太という、生きて心を持った人間が自分を気遣ってくれていたのだから・・・。「過ぎたる愛は暴力となる。」・・・なるほど・・・。


あ、陽のお話ですが、「不思議なお話」というほど不思議かどうか、作者は自信ありません~~~。
「ちょっと不思議な感じのするおじいさんとおばあさんに話をきいて来た」くらいの感じかなぁ~(^^;
(なんと無責任な作者だろう)

まぁ、聞いてやってください~(^^;
2011/12/14 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

陽が帰ってきた~っ ^^
ご機嫌なのもいいかんじ♪

久しぶりに陽が帰ってきてあたふたしてる坂木さんがおもしろいっす ^^

も、もしやその老夫婦とは「あの」夫婦では…

>坂木は・・・陽に出会って、たぶん、「今度こそ守りたい」と思ったのではないかと

ああ、そうなんですね!!
この秋沙さんのコメ返を読んで、あらためてその読解力の深さに唸りました。西幻も共感です。
2011/12/14 【西幻響子】 URL #U8GV5vt2 [編集] 

* 西幻さんへ♪

お待たせ致しました(^^)
大丈夫ですか? しゃべりすぎじゃないですかね?(^^;

坂木のこういう不器用で照れ屋なシーンは、どんどん浮かんでしまいます(笑)。

さぁ、西幻さんの予想する「老夫婦」、当たっているでしょうか・・・。って、わかっちゃうかな、やっぱし。

limeさんの「白昼夢シリーズ」を読んでいると、坂木が陽を守ることにすごくこだわっているなぁと、いつも思うんです。俺は本当に守れているのか、とか。守られてるのは俺だったのか、とか。

それで、坂木にとってこの「守る」という言葉がキーワードなのかな、と思ったのが、この「くちなしの墓」をかき始めたきっかけでもあります。
2011/12/14 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

>やっと、陽が帰ってきたのか。
やっと陽が出てきたか(笑)

ほんとかどうか知りませんが、某有名ハンバーガーのバンズは3か月はもつそうです。という話を聞いて以来、食べられなくなりました。3か月ももつパンなんて、何が入っているんだかわかりゃしない。。
2011/12/15 【綾瀬】 URL #- 

* No Title

陽の冒険記を、坂木の横にずらりと並ぶ皆様に私も合流させていただき、聴かせていただきます。

坂木の顔をちら見しながら。

ふふふ、この方、ホント良いですね。
お帰り、とか、(ビール)ありがとう、とかって言えないんですかね。

陽の話を聞きながら、どんな表情を見せてくれるのか、楽しみです^^
2011/12/15 【けい】 URL #- 

* 綾瀬さんへ♪

はい、やっと!出てきました(^^;
いやぁ本人も、あまりに久しぶりなもので張り切っちゃってしゃべるしゃべる・・・(笑)


げっ・・・・3ヶ月ももつバンズ・・・・?
すごい・・・。
確かに何が入ってるんだかよくわかりませんが、う~~~む。それを食べたら私も3ヶ月くらい老化が止まるとかそういう効果はないんだろうか・・・(^^;(ないない)
2011/12/15 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* けいさんへ♪

はいは~い、どうぞどうぞ、けいさんもこちらにお座りください。
あ、ちょっと、そちらもう少し詰めていただけますかぁ?

なはは、坂木、なんというか「日本男子」ですね(^^;
やっぱり「ありがとう」くらいは言っていただきたいなぁ~。一緒に暮らしたら不満がたまりそう(笑)。

陽の話を聞いて坂木がどうなるか・・・・ふふふ。それは次話で、表情をチラ見しながらお楽しみくださいね(^^)
2011/12/15 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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