もうひとつの「DOOR」

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

にほんブログ村 小説ブログへ 人気ブログランキングへ←こちらもぽちっとお願いします(^^)

→ 「スポンサー広告」目次へ戻る
*    *    *

Information

□ 月 (白昼夢「扉」スピンオフ) □

月 (1)

「お~っす、ユミ! なんだよ~シケた面してんじゃ~ん」

あ~、こいつ、なんだっけ名前。ま、いっか。

「べっつに~。たいしことないよぉ。バイバ~イ。」

真夜中の盛り場には、顔見知りがたくさんいる。
約束なんかしてなくても、誰かに会える。
あたしは、ここが好きだ。

ガッコウなんかつまんない。一応、マジメに登校して、友達ともつるんでるけど、
話す内容なんて、好きなセンパイのこととかテレビのアイドルとかばっかで退屈。
家はもっとサイアク。
ババァはいっつも不機嫌で、パートの愚痴とか、どっか具合が悪いとかしか言わない。
ジジィはもっとひどくて、人の顔見りゃ説教したがるし。

ここに来てる時だけ、なんか、あたしがあたしでいられる気がする。
ネオンがあたしを呼んでるってか?(笑)

「あ、ユミ来たじゃ~ん。今日はバイトじゃないの~?」
ゲーセンには何人か、いつもの連中がたまっていた。
「なんかね~、ヤバそうだったから中止~」
「ふ~ん?」
「ミユキー、あんた今日すっごいまつげ~。」
「これ、マジすごいっしょ~? いいマスカラみっけたんだよぉ。安いし~」
「へぇ~。どこのやつ?」
「『マツキヨ』にあるよ~。行ってみる~? 教えたげるよ~」
「あ~、今日はパス。バイト代入んなかったから、マジボンビー」
「なんだよそれ~だっせ~! しょうがね~なぁ。マックおごったろうか?」
「マジ~!? うれし~」

バイトって言うのは、ウリ(売春)のことだ。
高校生中心のウリをあっせん(どういう漢字書くか知らないけど)してるヤスって呼ばれてるオトコから紹介してもらって、おこづかい稼ぎしてる。
今日の相手は、いい歳こいたおっさんだったみたいだ。
おっさんの相手すんのは正直キモイけど、たいがいお金をたくさんくれるから
ちょっとの間ガマンすりゃいい。

だけど今日はツイてない。
待ち合わせのラブホの前まで行ったら、なんかパトカーとかいっぱい来ちゃってて
人だかりがしてた。
野次馬が話してたのを聞いた感じだと、部屋で死んでる人が発見されたって。
ラブホで死ぬなんて、恥ずかしいヤツ。
おかげで、バイトがパーになった。
約束してた男はそれっきり連絡してこないけど、まぁいいか。

・・・と思っていたらケータイが鳴った。
ウリのバイト専用のほうじゃなくて、あたしの携帯。
画面を見ると、ヤスからだった。
「もしも~し」
「あ、ユミ? ちょっとやべぇことになってるからさ、お前、バイト用のケータイ、
今すぐ川かなんかに捨てろ」
「へ?」
「なんかよぉ、おまえが今日会うはずだったおやじが、ラブホで心臓麻痺で
死んでたらしいんだよ。で、お前のケータイでそのおっさんとやり取りしただろ?
名義はオレになってるからお前だってバレないと思うけど、オレんとこには
捜査が入るかもしんないから。わかったな。また連絡すっから、しばらくはおまえから
してくんなよ」

一気にそんだけしゃべると、ヤスは一方的に電話を切った。
声がマジだったから、冗談じゃなさそうだ。
なんだそれ。ラブホで死んでたのは、あたしが会うはずだったおっさん?
アホらしい。
でも・・・確かにヤバイかもしんないな。・・・捨てよ。

川・・・ね。
川っていうよりドブみたいだけど、裏通りのほうにあったな。
一応、川沿いが公園みたくなってるところ。

ミユキがなんか騒いでる。
「ね~ユミ~! マックは~?」
「ごめ~ん。なんかね、よくわかんないけど、用事ができちったぁ」
「あ、そう? んじゃまたね~」

ミユキと別れて、裏通りから川沿いの公園に入る。
ベンチや芝生の上でいちゃいちゃしてるカップルがたくさんいる。
おいおい、そんなことまでしちゃってていいのかよ。

あたしは、そういうやつらがあまりいない、茂みの影になったところまで行って
暗い水の中に携帯を落とした。

どぼん!と予想以上に大きな音がしてちょっとビクッとする。
ま、誰も気付かないよね・・・?

周りを見回した時、一人の男に視線が止まった。
川のフェンスによっかかってタバコを吸いながら、携帯を見ている。

安っぽい蛍光灯の光に照らされて、くるくるした髪が緑色に光っているように見える。
遠くのネオンの赤い光で、ジーパンの長い足と革ジャンがところどころ血の色みたい。
携帯の画面に照らされた顔は、青白くて無表情だ。

男はふっと顔を上げてこっちを見た。
やばい。目が合った。さっきケータイ捨てたの、見られたかな。
ちょっとトロンとしたような目。パーマかくせっ毛かわからないけど、ウェーブのかかった前髪が
おでこに少しかかっている。

あたしは一瞬、体が固まったような気がしたけど、その男はすぐに興味なさそうに目線をはずすと、繁華街の方へ歩いて行ってしまった。
ちょっとだるそうに、背中を丸め気味で。

「なんだ? アイツ・・・」

べつに、気にすることもないか。
見られたわけじゃなさそうだし。
でも、こんなところ一人でぶらぶらするようなヤツ、あんまりいない。
街で遊んでるやつらとも違うみたいだし。彼女にフラれでもしたのかな。

それにしても、今日は変な日だ。
なんかもう、遊ぶ気もなくなっちゃったな。
仕方ない。家にでも帰るか。警察とか多そうだし。
ツイてないなぁ。

あぁ、空が明るいと思ったら満月か。街にいるとネオンが明るいし気付かなかった。

真っ白に冷たく光る月を眺めて、ため息をつきながら家に向かう途中で、
あたしはその不思議な男のことなんてすっかり忘れていた。




     つづく





← BACK         目次へ         NEXT→
関連記事

にほんブログ村 小説ブログへ 人気ブログランキングへ←こちらもぽちっとお願いします(^^)

→ 「月 (白昼夢「扉」スピンオフ)」目次へ戻る
*    *    *

Information

Date:2010/07/01
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://akisadoor.blog118.fc2.com/tb.php/2-6bb9a6ef
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。