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□ 恋のディテールたち(エッセイ) □

1.香りの呪縛


 私が香水を愛用し始めたきっかけは、「失恋」だった。
 
 彼は、十歳近くも年上。
香水をいつもつけている男性とお付き合いをするなんて、その頃の私には、初めての経験だったような気がする。
でも、最初の頃は、そんなことは、べつに気にかけていなかった。その香りは、いつも空気のように彼を包み込んでいたから。

彼と過ごした日々、幸せ絶頂の時期は、あっという間に不安な空気にかき消された。

ほかの女の影。

彼は、彼女との関係を隠そうともせずに言った。「彼女はまだ、子供なんだよ。ほんとに好きなのは君だけだよ。」
そんなばかばかしい常套句を信じようとして半年もフタマタかけられて、結局彼はその女を選んだ。

 その半年の間の、ある寒い日。夜も遅くなってから彼の部屋を訪ねた。いつもと同じような、軽いおしゃべりや冗談。
そして、そこからお約束のように甘いムードに流れていく。私に触れようとする彼。
 
でも、もうその夜の私は、心の中にどす黒く広がっていく彼女への疑惑を、消すことも忘れるフリをすることもできなくなっていた。
そして、抱かれることを拒んで、彼の部屋をあとにして、家路についた。

カーラジオさえつけずに、真夜中の高速道路をひとり走る。
エアコンに暖められた私の服からは、彼の香水の残り香と、引き返したいと言う衝動が立ちのぼってきて、悔しさとせつなさで涙すらも出ず、ただ呆然とハンドルを握るばかりだった。

 それからも彼は、気が向いたときには、私に未練があるようなことを電話で言ってきたり、かと思えば、平然と彼女との出来事を話して聞かせてきたりしたが、私はいつも、素っ気なく受話器を置いた。
それなのに、なぜか私の嗅覚だけは、彼の香水の香りをどこにいてもハッキリと嗅ぎ分けていたし、嫉妬で眠れない夜には、その匂いが、まるでそこにあるかのようによみがえってきて、私を苦しめた。

 「香りの呪縛」
 
なにかの小説で見たこの言葉。

頭では彼を拒絶していても、私の体は、この呪縛にがんじがらめにされていた。
そして私は、染み付いてしまった彼の香りを追い出すために、「自分の香り」を身に付けるようになった。
今ではその香りは、すっかり私の定番になり、彼とのことも遠い記憶になってしまった。

それでも、街を歩いていて彼と同じ香りを身にまとった人とすれちがうと、思わずふりむいてしまう自分に気づくこともあるのだ…。



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Date:2010/07/25
Trackback:0
Comment:10
Thema:エッセイ
Janre:小説・文学

Comment

*

あるある!
昔知り合った女性の方がつけていた香水が妙に鼻について、かなり年月が経ったのに覚えている。
あの人、今頃、どうしてるんだろう。

そんな気持ちになりました。
2010/07/25 【ヒロハル】 URL #- 

* こんにちは♪

エッセイならコメントできますねっ。(笑)
『香りの呪縛』、動物の持つ最大の本能、嗅覚。
ここを刺激されては、切ないです。思考が停止します。
私もパヒューム・フェチ(そんな言葉あったかな?)ですが、
好きな人には私の好きな匂いでいて欲しい。
これ、絶対条件です。(爆笑)
私がムスク大好きなのは、ジャコウジカのメスと何ら変わらないかも ... 汗。
2010/07/25 【CoCo】 URL #8Zcb/IVM [編集] 

*

文字を読んだだけなのに、感覚のどこかにホワンと、懐かしい、切ない香りが広がりました。
切なく苦い恋のディテール。
秋沙さんの語り口はとてもしなやかで大好きです。
もっと・・・もっと・・・。
いっぱい聞きたい。
癖になりそうです。
2010/07/25 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* ヒロハルさんへ♪

あるある!って思っていただけると、なんか嬉しいです。

記憶は薄らいじゃって、もうその人に対する恋愛感情なんかもどっかいっちゃってるのに、なぜかその香水のにおいだけは忘れられないし、同じにおいを嗅ぐとせつなくなるんですよね・・・。

いや、もう10年以上経っちゃったので、それすらなくなってる私ですが(笑)
2010/07/25 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* cocoさんへ♪

コメントありがとうございます♪

そうですねぇ、嗅覚はやっぱり本能的な部分だから、理屈ではどうにも抑えられないんでしょうねぇ。

cocoさんは、実際にお会いしたこと無いからブログからしかご本人を想像できないんだけれど、ムスクの香りが似合いそうな、神秘的な魅力をお持ちなんだろうなぁ。
私、ムスク系が似合わないのでちょっとうらやましい。
なんていうか、「色っぽく」ならずに、「いやらしく」なっちゃうんですよぉぉぉ。
大人になれば似合うようになるかな・・・と思いながら過ごしてきましたが、似合わないまま大人というよりおばちゃんになっちゃいました・・・なんで・・・?(^^;
2010/07/25 【秋沙 】 URL #- 

* limeさんへ♪

うれしいお言葉、ありがとうございます♪

ん~~~、このシリーズ、もっと書きたかったんですけどね。
結婚とともにすっかり恋愛に疎くなってしまってもう書けません。
ある意味、レアなエッセイです(笑)。
こういう感覚、どんどん失われていっちゃうんですかねぇ・・・。

もしも、ふとよみがえる瞬間があったら、このシリーズの続き、書いてみたいもんです。
まぁ、ないでしょうけれど(^^;
2010/07/25 【秋沙 】 URL #- 

* こんにちは^^

あ~~めちゃめちゃわかる~~~~~!!
めっちゃ共感出来る!!

こんな苦しい恋をした事、あります。
そして、長い間引き摺りました。忘れられずに、苦しみから逃れるために色んな事をした事もありました^^;

年月が経ち、すっかり忘れたつもりになっていても、ふとした瞬間に「香り」は思い出させるんですよね・・・。

わかるわ~~~・・・・・・・v-406

あつ! リンクの件のお返事に来ました!!
コチラこそどうぞよろしくお願いしますe-266 とっても嬉しかったです~~!
では早速、リンク拉致して行きますね(笑)v-398v-29
2010/07/26 【】 URL #9dnUgMTg [編集] 

* 蘭さんへ♪

リンクの件、ありがとうございます!
こちらも早速貼らせていただきました~。

蘭さんも?やっぱりあります?
苦しみから逃れるためにどんなことをしたのか気になるところではありますが、ま、それはお互い、あまり深く突っ込まないようにしましょう(笑)。

香水だけじゃなくて、空気の匂いというか湿度とか、そういうのも急に忘れかけてた記憶を呼び起こしたりしますよね~。
やっぱ、本能で感じるものなんだなぁ香りって。

こんなふうに「あるある」な感じのエッセイがあと3つ続きますよ~。
2010/07/26 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

まあ、私の場合は自分の体臭が(女ですから、そんなにはしませんが(苦笑))気になって香水集めを始めたのですが、結局今はドルガバの「ライトブルー」に落ち着いています。

匂いというのは記憶に直結しているそうですから、これはかなり辛い呪縛だったでしょうね…思い出すのも香り、忘れさせてくれるのもまた香り、かあ…ふーむ…深い…。
2011/12/05 【有村司】 URL #- 

* 有村さんへその2♪

おおお!
私も「ライトブルー」使ってました!

いや、実はこのお話で最後に書いた、「自分の香り」は、普通の「ドルガバ」だったんです。
だけど段々、甘ったるい感じが自分に似合わないような気がして、「ライトブルー」を使ってみたらすごく気に入って。女性物にしては珍しく、本当にすっきりしていていい香りですよね~。箱も瓶も素敵だし♪

でもね・・・今はライトブルーはダンナの物になってしまいました・・・(-"-;)
出産&子供が小さい間、香水を使わずにいたら、いつの間にかダンナが私のライトブルーを気に入ってしまって。
なんか、そうなると、同じのを使うのは悔しくて、泣く泣く(?)私は使わないことにしました(時々拝借するけど)
でも今は、香水を使うよりも、いい香りのボディクリームとか、ちょこっと練り香水をつけるとか、ヘアコロンをほんの少し、とかそのくらいにしてるかなぁ。

匂いって、視覚や聴覚のように日常的に使っているものとは違って、ものすごく「感覚」に訴えかけるんでしょうね。
2011/12/05 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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