もうひとつの「DOOR」

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□ 恋のディテールたち(エッセイ) □

4.薬指のリング

ring.jpg 恋愛のシーンで、指輪はとてもおしゃべり。
 
指輪を贈る、もらう、返す、というのはそのまま恋愛の進行を決定するし、左手の薬指に指輪をしている、していないで恋人がいるかどうかや、夫婦の仲を推し量るもできる。
 
 初めて指輪をもらったのは、高校生の時。
相手は年上で社会人だったから、なんと、贅沢にもプラチナとゴールドを使った、結婚指輪にもなるようなリングだった。
学校には彼氏からもらった指輪をしている子は多かったけれど、そんな高級なのをしていると、輝きが違う。みんなの視線が手に集まる。それが快感だった。

本当に優しくて、包容力のある人だったけれど、あまりにも子供だった私は、「指輪を送ってくれた」という意味が、すぐに重くなってしまった。
まだまだ、刺激的な生活が魅力的だったから・・・。

所詮は、まがい物の宝石の輝きや、愛らしい小物に魅力を感じる年頃で、プラチナを身に付けるような大人ではなかったという事だろう。

 彼に別れを告げる日、私は高校生にしては大人っぽい服を着て、口紅を塗って、彼の部屋に行った。(なんで女は、決断の時には化粧が濃くなるんだろう?)
 
そして、申し訳ない気持ちから言葉が出なくて、黙って彼に、指輪を返した。

彼は、「仕方がないね」とひとこと言って、それを受け取って私を抱きしめてくれた。

 その時初めて、自分はすごく大きなものを失うんだな、と思った。

分不相応な指輪を捨てる時、皮肉にも指輪の価値がわかる大人に、少し近付いたのかもしれない。


 高校を出て、アルバイトをしながら知り合った次の彼は、同じ歳。
お互い、そんなにお金がないから、露店で売っているような安いシルバーのリングをおそろいで買った。

その恋でも、指輪は重要なディテールだった。
ケンカをすると、どちらかが激昂して指輪を投げ捨てる。
そして、それを拾ってまた薬指にはめると、前以上にお互いが大切なような気がしたものだった。

その恋は、彼から別れを告げられて終わった。最後の時に、二人で指輪をはずし、キーホルダーでひとつにつないで、海に投げた。今思うと、なんとも少女趣味なことをやったものだが、しばらく彼が忘れられなかった私は、時々、その海にひとりで行って泣いた。
「海の底では、きっと指輪がつながっている」と。

でも、きっと実際には、安物の指輪とキーホルダーは、あっという間に塩水で錆びて、ばらばらになってしまっただろうけれど。

 若さゆえの付き合い方、別れ方だった。
安くて簡単に手に入って、すぐに錆びてしまうシルバーのリングのように。


 結婚指輪を、なぜ左手の薬指にするかというと、その指は心臓につながっているからだという説がある。

その事を、指輪をはずした時に実感するのは、皮肉なことだと思う。
手荷物を1つ、忘れてきてしまったような喪失感を、しばらく味わうことになる。

恋人を失った寂しさは、遊びまわったり何かに夢中になってごまかすことができるけれど、指輪がない、という心もとなさは、簡単にごまかせない。
簡単に、他のリングをするわけにもいかない。
その指は、特別な指だから。

ずっと指輪をしていたから、そこだけ細くなり、肌にも白く跡がついている。
リングがはまっていた期間が長ければ長いほど、それはいつまでも残る。

結局私は、その跡がすっかり消えてなくなるまで、次の恋をしなかった。


 年齢と共に、軽々しく指輪をもらうこともできなくなってしまった。それからの恋では、薬指にするべきリングをもらったことがない。
 
 心は物では表せない、というのも正論だけれど、私は薬指にするリングにだけは、こだわりたいと思っている。
最近は、結婚指輪をしない人も多いけれど、「結婚」という、ある意味覚悟のいる約束事をするからには、心臓につながる指は、縛り付けられておいていいと思う。
シンプルな、していることも忘れてしまうようなリングでも、失ったらひどく不安になる・・・。それは、夫婦を象徴しているような気がするから。

 気がつけば30歳。何もつけていない薬指が軽くて、彼に「左手の薬指がさびしいなぁ・・・」などと言ってみてはいるのだけれど。


(恋のディテールたち・終)




 いかがでしたでしょうか?「恋のディテールたち」。

ん~~~、やっぱりかなりお恥ずかしい内容でございました。


ま、これを書いた少し後に、めでたく薬指にリングをすることができたわけですが(半ば脅しをかけてゲットしたという話もありますが)それとともに、恋愛にはとんと疎くなってしまいました。

でも、こうやってあらためて読み返してみて、やっぱり恋愛は普遍のテーマだなぁとも思いました。
皆様から「わかる~」とか「こういうことあった~」とコメントをいただけるのが、とても嬉しかったです。
機会があったら、またこういうエッセイを書いてみたいものです。
「恋心」だけだったら、いくつになっても持っていたいもんですねぇ。


さて、持ちネタが残り少なくなってきましたが(もう!?)、次はまた、白昼夢シリーズのスピンオフを掲載予定です。
今度は一人称では書かれていないので、陽と坂木のやり取りもたくさん出てきます。

掲載スタート前の解説などで詳しく書くつもりですが、次回作「旅路」は半分はlimeさんの作品です。
「原案:lime 作:秋沙」と言ったところでしょうか。

ちょっと長くなりますが、お付き合いいただければ・・・
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Date:2010/08/03
Trackback:0
Comment:10
Thema:エッセイ
Janre:小説・文学

Comment

*

そういえば、私は結婚指輪って付けたことないです。
なんだか、その中に「制約」が感じられて。刻印のような気がして。絆だと感じられないなんて酷い女です・笑
やはり左手の薬指って特別なんですかね。ファッションリングは好きなんですが。(なお悪い?)
秋沙さんの過ごしてきたいろんな形の恋。
そうやって大人の女性になるんだよね、って、しみじみ。またぜひエッセイ、書いてくださいね!

そして、いよいよ「旅路」ですね?
私が原案??・・忘れていました。(ホントに・笑)
どうしても続きが書けなかったプロットをあきささんに渡したんですよね。あきささんは、女性の微妙な心の葛藤を書くのが上手いので、見事に書きあげてくださいました。
みなさん、私の描く物語と違う、人間味や色気のただよう白昼夢をお楽しみください。
2010/08/03 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

*

全篇拝見させていただきました。
僕もこの様に素敵なストーリーを自らのブログに綴りたいのですが、いかんせん僕は
恋愛沙汰には縁遠い男でして…。実に薄っぺらい人生を送っております。

探していたCDは「スウィートソウルミュージック」が収録されたアーサー・コンレイのCDです。
ケースだけ見つかって中身がナシ、という完全に失くしたパターンですね。

今までずっと「恥ずかしながら~」と思ってました。
全く意味が違ってきますね。
2010/08/03 【蛇井】 URL #- 

* limeさんへ♪

確かに「制約」でもありますねぇ。
私の場合、まだこれを書いた頃には絆だと思えてたんでしょうけれど(笑)、
今はなんでしょうね、「抑止力」?(^^;
これをするのをやめてしまったら、たぶん文字通り「たががはずれた」状態になるでしょう(^^;

若いときは恋愛至上主義だったんですねぇあたしって(笑)。
あのエネルギーはどこから来てたんでしょう。
エッセイは難しいけれど(だって自分の体験が皆無だから)、私も恋愛小説を書いてみたい気がしてきましたよ。
limeさん、やってみましょうか、お互い。


「旅路」、原案はlimeさんですよ、忘れないでくださいよっっ(^^;
2010/08/04 【秋沙 】 URL #- 

* 蛇井さんへ♪

お読みいただきましてありがとうございました。

いや~私も、かなり尾ひれをつけてエッセイに仕立て上げたわけでして、
実際にはかなり薄っぺらい恋愛ばかりしておりましたよ(笑)。

そうか、「スウィートソウルミュージック」と言ったら、やっぱりそのものズバリ、アーサーコンレイなんですね。
「スウィート・ソウルミュージック」と中点を入れるべきだったかな(^^;

この時の思い出の曲は、ランディクロフォードやアニタベーカーです。

あぁ・・・ケースだけあって中身がないCD・・・たくさんあります(T_T)
しかもそれが、借り物だったりするから恐ろしい・・・。


「恥ずかしながら~」だと思ってますよね!?
こういうふうに、本当に言ったことと違う言葉にすりかわって人々に記憶されてる名言、すごいいっぱいあるんですって。
人の記憶なんて、あてにならないもんですね~?
2010/08/04 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* こんにちは^^

「恋のディテール」は、指輪で〆られたんですね~~。

・・・何だかこのシリーズ、私にとって物凄く親しみがあるシリーズでした。
私は結婚指輪をしていませんが(以前就いた職業が、アクセサリー禁止だったので)、私と主人の指輪を一緒にして、主人がネックレスではめていてくれてます。
やぱり、「何でもない」事なのかも知れませんが、「指輪」って恋愛アイテムには欠かせないものなのかも知れませんねv-290

次は、「白昼夢」のシリーズですか!?
うわ~~~~~~~っv-405 めっちゃ楽しみです!!e-266
また夜が眠れなくなる・・・・・・(笑)。
2010/08/04 【】 URL #9dnUgMTg [編集] 

* 蘭さんへ♪

うれしいお言葉の数々、光栄至極にございます。

もうちょっとこのシリーズ書いてみたいと当時も思っていたのですが、
なんか指輪が出てきちゃったら〆ですよね(笑)

で、指輪をもらって「嫁」という立場をゲットしちゃったら、こういうエッセイが書けるような経験も感覚も消えうせてしまったと言う・・・(笑)

なるほど、アクセサリー禁止のお仕事だったら結婚指輪もできませんよね。
でも、ダンナ様がそうやって身に着けていてくださるなんて、素敵なご夫婦だわぁぁぁぁぁ。


はい!次は白昼夢スピンオフ、再開します。

だけど・・・limeさんの書くあの世界のファンの方々に受け入れられるかどうか、ちょっと心配でして。
陽と坂木が「月」よりはたくさん出てきますが、ちょっと雰囲気が違うかもしれません。

でも、お読みいただければ幸いです♪
2010/08/04 【秋沙 】 URL #- 

* ひとつの物語が出来そうですね!

指輪ひとつを取っても、こんな素敵な世界が描けるなら、そのアイテムで、何か小さな物語がいくつも生まれそうです!
fateには無理!
なんというか、可愛い恋愛って描けない。
『砂糖を焦がせば薫る日々』のかおるさとーさんなんんかが描く女の子は逸品だし、『プリンと乳酸菌』の乳酸菌さんの描く世界は童話のように可憐です。
それと同じように、秋沙さんの世界は大人の女性の恋というものが秀逸です。
そういう細やかな恋愛の揺れや、振れ。
陽さんを想う相手ではなく、彼に引き寄せられる女性像の描写は素晴らしかった。なんか、関係ないけど、通りすがる女性っていうのが、まだまだいても良いなぁ、と夢見るfateであった。


2011/11/17 【fate】 URL #- 

* fateさんへ♪

「指輪」は特に、物語が生み出しやすい小物かもしれませんね。
だけど私も「可愛い恋愛」は苦手かも・・・(^^;
いや、それにしても、そんなふうに言っていただけるなんて、嬉しくて舞い上がっちゃいます。
恋愛ものが得意とは自分ではまるっきり思っていなかったのでびっくりもしてます。
(だからって、何が得意なのと聞かれれば、何もないんですが・・・)

陽の近くを通りすがる女性・・・
ふむふむ、まだまだいても良いかも(^^)
(limeさんも、連載終了後にそういう番外編を書いてくれたんですよ)
ちょっとヒントをいただけちゃった(^^)ありがとうございます。
陽と坂木はもっともっと書いていきたいと(limeさんの許可も貰わないうちから)思っているので、考えてみます。
2011/11/18 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

さて、指輪でめでたくお話は終わったわけですが…。

指輪って結構意味が「重い」んですねえ…。

なんだか色々考えさせられました。

と言いますか、このエッセイ全体自体が普段考えないことを考えるきっかけになったと思います。

秋沙さま、お疲れ様でした!
2011/12/09 【有村司】 URL #- 

* 有村さんへ♪

いや~~、私もこんなことを考えていたなんて自分で忘れてました(^^;

指輪でも何でも、「恋に落ちている」時には、全てのディテールに意味を持たせたくなっちゃうのかもしれないです。
なんてことない小物でも大好きな人にもらったら特別なものになるし、興味のなかった場所でもデートで行ったらその瞬間から「思い出の場所」になるし、ね。

そういう気持ち、もう忘れかけているしこれから自分で味わうことは無いんだろうけれど、せめて、小説の中の登場人物にはリアルに味あわせてやりたいもんです(^^)

こっぱずかしいエッセイでしたが、読んでくださってありがとうございました!
2011/12/10 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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