もうひとつの「DOOR」

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□ 旅路 □

旅路 (2)

 海へと落ちる崖の上から少し歩いたところにあるホテルの一室。

だがその部屋は海とは反対側にある。
少しだけグレードが高いので一応寝室とリビングの二部屋があるが地味な作りになったその部屋で、ソファに座ってヒゲ面に眼鏡の男が新聞を広げていた。
しかし、イライラと貧乏ゆすりをしながら、読むというよりは紙面を目で眺めているだけだ。

午前中は特に予定もないので朝寝坊をしていたが、彼の属する組織の本部からの電話で起こされた。
それからだいぶ経ってかなりの空腹なのに、一緒に泊まっている相棒の姿が見えない。

「どこへ行きやがったんだ、陽のやつ」

声に出しながら言ってバサッと新聞を閉じたとき、部屋のドアが開く音がした。

「陽か? どこへ行ってたんだ?」

部屋に入ってきた陽は、少し間をおいてから「散歩」とぶっきらぼうに答えた。

「朝飯は? まさか先に食ったわけじゃないだろうな。オレはお前が帰るのを待ってたんだぞ。腹ペコだ」

鏡に向かって乱れたウェーブの髪を直していた陽はちらりとヒゲ面の男を見ると、くすっと笑って答えた。

「坂木さん、とってもよく眠ってたから起こしちゃ悪いと思ってさ。僕もおなかがすいてたけどガマンして散歩に行って時間をつぶしてたんだよ」

「それにしちゃぁ遅いじゃないか。さっき辰巳からの電話で起こされてなぁ、辰巳のやつ・・・」

坂木はふと言葉を止めて、陽の動きを眺めた。
なぜだろう。何かヤケになっているような苛立っているような、かすかだがそんな感じがする。

いつも猫のように音を立てずに行動する陽だが、今日はドアの開け閉めや靴の脱ぎ方がどこか投げやりだ。

「おい、何かあったのか?」

「どうして?」
表情も変えずに、シャツを着替えようとボタンをはずしながら陽が答える。

その手首のあたりを見て、坂木はハッとした。

「おい、どうした、その腕」

「え?」

「怪我してるじゃないか」

シャツのカフスのあたりに、血が滲んでいる。
陽は全く気付いていなかったのか、ボタンから手を離して自分の腕を見てから
「あぁ」と小さく答えた。

「なんでもないよ」

「何やらかしたんだ?おまえ」

「なんでもないって」
少しムッとしたような顔をした陽は、また何事もなかったようにシャツを脱ぎ始める。

「バカやろう。なんでもないやつが、そんな怪我して帰ってくるか」

「たいしたことじゃないよ。それより辰巳さんの電話はなんだったの」

「んぁ? いや・・・次の仕事が延期になったから、しばらくここにいろという指示だ。
怪しまれないように取材旅行のふりでもして、外出のときはカメラを持ってせいぜいゆっくり観光でもしてろだとよ。まったく本部は平気で人を振り回して・・・
っておい! そんな話は後でいい! その怪我はなんだって聞いてるんだ」

「坂木さん、お腹がすいてイライラしてるでしょ。先に行ってていいよ」

「なんだと? オレは一歩もここを動かないぞ。お前が怪我のわけを話すまでな!」

陽は「まいったな」というように少し笑うと、ため息をつきながら言った。

「わかったよ。話すよ。ただし、まずは朝ごはんを食べようよ。僕も腹ペコだよ」



--------


ホテルのバイキングの朝食の時間は、とっくに終わっていた。
ホテルの中のオープンテラスの席がある喫茶店で、軽食を頼んでブランチとなった。

二人は無言のままでとにかく空腹を満たした。
その間も坂木は、陽が何か言い出すのを待っていたが、当の本人はそ知らぬ顔をしてゆったりと食事をしている。

食後のコーヒーに口をつけたとき、たまらなくなって坂木が切り出した。

「・・・で?話してもらおうじゃないか」

陽は半ば呆れ顔で、
「本当にたいしたことじゃないのに・・・」と前置きをすると、
仕方なく、転落しそうになった女性を助けたことを打ち明けた。

話を聞き終わると、坂木はニヤニヤと笑い始めた。

「それで? 人助けしたのに、なんでそんなにふくれっつらをしてるんだ?おまえは。」

「助けてすぐにその人・・・『私、死ぬつもりだったんですけど!』って僕に怒ったんだよ」

陽はまるで小さい子供がへそをまげたような表情をしている。

「はっはっはっはっは! それなら、ほっといてやればよかったじゃないか!」

「あの人は、死ぬつもりなんかなかったんだ。誰かに話を聞いてもらいたかっただけなんじゃないかな」

「はた迷惑なオンナだな。そんなことのために狂言自殺なんかするようなバカは、いっぺん死んでみなきゃわからないんじゃないのか?」

陽はくすっと笑って答える。
「死んじゃったら何もわからないじゃない」

「んぁ? あぁ、そうか?そうだな。」

しかしそれから陽は、うつむき加減に何かを考え込むような顔をした。

「まだ生きる力があるんだから、生きてみたほうがいいんだよ、きっと。・・・それに・・・」

そこで顔を上げて、遠い目で海を眺めながら小さな声でつぶやいた。

「本当に死のうとしている人間は・・・自分のために涙を流したりしない。」


坂木は心の中で舌打ちをした。

くそっ。またか。
こいつの心の傷は、今でも涙どころか血を流してるんだ。
こいつの前で、失恋くらいのことで死ぬフリをするなんて、とんでもないことをしてくれる女がいたもんだ。

坂木の脳裏に、初めて陽に出会ったとき、血の海の中で横たわっていた女性の姿がよみがえる。

なんと言葉をかけたものか坂木が考えあぐねている前で、陽は小さく伸びをすると
いつものように人懐っこい笑顔を浮かべて言った。

「それじゃ、『取材』にでも出かけようか。カメラを持って。」

   (つづく)
   

第二話です。
一話よりは少し読みやすかったでしょうか・・・?

この部分は、ほとんどlimeさんの案をそのまま使ってるんですが、
もう、これを書いちゃったらほとんど満足という感じでした(笑)。
陽と坂木のちょっとおかしな会話。
何を隠そう、私はこの「坂木」が大好きでして、
坂木の会話を書いているときだけはすらすらと進むんです。

で、これを書いちゃったらあとはなかなか筆(キーボード?)が進まなくなってしまって苦労しましたが・・・。

ミステリーというよりは、会話劇のような感じでお気軽に読んでいただければ・・・。




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Date:2010/08/09
Trackback:0
Comment:12
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

*

とはいえ、鬱病になっている人間は、ほっとくとほんとに自殺を決行して死んじゃったりしますから、自殺未遂者を見れば止めるというのは基本なんですけれど。

うーむほんとに迷惑だなあ自殺未遂者って。

そういう人にかけるアドバイスとして最適なのは、「お前は病気だから病院へ行け」なんですけど、絶対反発されるからなあ……(^^;)
2010/08/09 【ポール・ブリッツ】 URL #0MyT0dLg [編集] 

*

鬱病のひとの自殺未遂は、本当にそれ以外に選択肢が無いですからね。自分も死ぬ気で助けないと危険です。
そして、あの病気は本当に治りにくいから、何度も繰り返しますしね。

ただ…加奈子のはそれとは違いますから、ちょっと気を抜いて書けるかな・・・って感じですね?秋沙さん。

秋沙さんの坂木、豪快であったかくて好きだな~♪
二人の会話をいつまでも聞いていたい。(いつも言ってるけど、本当にそう思います)
2010/08/09 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* ポールさんへ♪

もしもこれが、本当にうつ病を患っていたりして本気で自殺しようとしている人だったら、陽の止め方も違ったものになっていたと思いますよ~。

ここで重要なのは、加奈子は本気で死ぬつもりだったのではないってことなので、そのへん、よろしくお願いいたします(何を?)(^^;

2010/08/10 【秋沙】 URL #- 

* Re: タイトルなし

その通りでございます♪

鬱病の患者さんの自殺願望は深刻です。
そんな人の苦しみも知らない加奈子は、こんなふうに狂言自殺なんぞやっちゃぁいかんのです。
やっぱ加奈子むかつくわ(^^;
いっぺん死んでみりゃよかったのに(ぉぃぉぃ)

もういっそのこと、坂木の会話だけで一つお話を書きましょうか(笑)
2010/08/10 【秋沙】 URL #- 

*

ああ~~!
それ、いいですね!
二人の会話劇。コミカルな感じで。
噛み合ってるようで噛み合ってない二人の会話なんて、
面白そうだな~ (●´艸`)
2010/08/10 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

*

私もよく死にたいと思うほう(おい!)なので
今回のお話は興味深いです。

本気で死ぬ気のない人に対しては
ああいう止め方も有りだとは思います。
まあ、小説ですしね。笑。

以前、ある方から「命貰い」という作品を読んだ人が、
「死ぬのを望む人にどうして死ぬのが悪いと言って聞かせますか?」
というヘビーな質問をいただきました。
正直、ちゃんとした答えは出せませんでした。

自分自身、なぜ生きているのかがわからないから。
死ぬ間際になれば、わかるのかなあ・・・・・・いや、きっと最期までわからない気がしますね。

何だか重苦しいコメントになり、し訳ありません。汗。
2010/08/10 【ヒロハル】 URL #- 

* limeさんへ♪

一つ前のコメ、limeさんへというタイトルを付け忘れました。ごめんなさい(^^;

ほとんど坂木と陽の会話だけでお話が進むって、いいですよね。なんか、たわいもない感じで。
あ、でも、limeさんの「その手の中の天使」なんかはそれに近いですよね?
2010/08/10 【秋沙】 URL #mQop/nM. [編集] 

* ヒロハルさんへ♪

私は、どんなに自分が悪くとも、「死にたい」とは思わないほう(笑)なので、いささか無神経なことを書くかもしれません。あらかじめ謝罪しておきます。ごめんなさい(^^;

まぁ、このお話の中の陽のやり方は、小説だからこそ、と言ってしまえばそれまでですが(^^;、陽だからこそできたのかもしれません。

う~~~ん、ヘビーな質問をされてしまったんですね(汗)。
なぜ生きているのか・・・確かにわからなくなることもありますね。
とりあえず、説得力は無いですが私が思うには。

「生きている」というその事実そのものが、自分の意思とは関係なく自分の身体の細胞の一つ一つが「生きよう」としている結果なのだからだと私は思ってます。
事故などであっけなく即死してしまうこともありますが、そんな時でも、身体は生きようともがく。
祖母がガンで亡くなるのに立ち会ったときにそう思いました。
もう意識も無いのに、身体が必死で「死」に抵抗している様をずっと見ていて、「人は簡単になんか死ねない。自分の意思で簡単に死のうとなんか思っちゃいけない」って感じたんです。

あとは・・・
人が死んだらどうなるのか、結局明確なことは誰にもわからないから。だと思うんです。
死んだら救われるとかすべてが終わるとか、そんなのわからない。
だったら、生きて、希望を見出したほうがいいと。それができるのならやってみたほうがいいと。
古畑任三郎も言ってました。
「たとえ、明日死ぬことになっていたとしても、人は生まれ変わることができるんです。」ってね。

長文失礼しました。
2010/08/10 【秋沙】 URL #mQop/nM. [編集] 

* 壮絶に辛い過去が見え隠れ~

なんか、苦しんでいる本人には申し訳ないですが、そういう過去を持つ男ってぞくぞくする~

あ、それから、せっかくいただいた秋沙さんのコメントにまたマヌケな返信をしたわ(--;と返信終了してから気付いたfate。
あの、秋沙さんがおっしゃっていることは十分、理解しておりますから~
つまり、作中の親のように取りたてて酷い人間に見えなくても、子どもの心は壊れていくこの現状、ということ。
一時期、新聞をにぎわせた家庭内暴力とかも。それで殺された親も。実は我が子を初めから憎んでいた訳じゃない。むしろ、家族を守るために働いていただけ。
そういうことなど。

これ以上突っ込むと、不正コメントとしてはじかれますので、またの機会に(^^;

続き、ドキドキしながら拝読させていただきに伺います。


2011/11/05 【fate】 URL #- 

* fateさんへ♪

あー、そうですよね、「白昼夢シリーズ」未読のfateさんには「なんのこっちゃ?」ですよね(^^;

私もfateさんになり変わって、こちらを先に読んでからlimeさんの「白昼夢」を読んでみたいな~って思いました。どんなふうに感じるのかなぁ~。
謎が解き明かされていくドキドキ感が味わえるのではないかと思うんですが・・・。

あ。それに、こちらを読んでからもう一度「くちなしの墓」に戻っていただければ、坂木という人物ももっと深く味わっていただけるかと。


え~?全然間抜けな返信なんかじゃなかったですよぉ。
私こそなんか焦点がずれてたんじゃないかとお恥ずかしいです(^^;
fateさんがあのお話を書かれた時の気持ちがよくわかりました~。
あの作品に手を入れなくても、あれをまた発展させたお話を書いてみたりするのも素敵ですよね。
有名な作家さんも、過去の作品をさらに膨らませて、新しい作品を作り出したりしていますものね。

fateさんのお話は一貫したテーマが感じられて、素晴らしいなぁと思います。私のは本当にミーハーに「陽と坂木」(あ、辰巳も)が大好きで自分でも書いてみたいってそれだけなので(^^;

次はfateさんのどのお話を拝読しようかな♪

2011/11/05 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

こんにちは。

加奈子さんが「本気で死ぬ気じゃない」のは前回を拝読してよく伝わって来ましたよ。

本気で死にたいときって、もっとこう、ねえ…(苦笑)

それよりも、坂木さんって、陽君の「おとん」というより「おかん」のようですね(笑)
まあ、心配する気持ちも分かりますが。

それにしても…「超美形のガチャピン」が物議をかもしてしまったようで申し訳ありません!
2011/11/25 【有村司】 URL #- 

* 有村司さんへ♪

ありがとうございます(^^)

加奈子が本気ではないことを表現する上では、ちょっとだけ(5秒くらい?)悩みました。
本気ではないとは言え、傷ついて投げやりになっていることは確かだし、実際にこういう理由で死を選んでしまう人だっているでしょうから・・・。
深刻さと馬鹿らしさ、その匙加減がちょっと難しかったです。

あはは、坂木が「おかん」!
そうですね、なんか、「母親」とか「お母さん」と言うよりは「おかん」(笑)。
心配しておろおろしたり、怒ってみたり意地はってみたり、ちょっとlimeさんの原作とは違った趣になってしまっているかもしれませんが、これはこれ、で楽しんでいただけたら嬉しいです。


「超美形のガチャピン」は、近年稀に見る大ヒットですよ!(笑)(笑)(笑)
2011/11/25 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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