もうひとつの「DOOR」

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□ 旅路 □

旅路 (3)

 宿泊しているホテルに戻った加奈子は、フロントの人間から鍵を受けとるときに、
その視線が自分の服の泥汚れに向けられていることに気付いた。

やはり「自殺の名所」だけあって、女性の一人旅は要注意なのだろう。

できるだけ明るく「ありがとう」と言って部屋に向かう。

とにかく、熱いシャワーを浴びたかった。
パンツスーツを脱いで見ると、少し膝にかすり傷がついているだけで他に目立った怪我はないが、つかまれた手首がじんじんと脈打つように痛かった。

潮風でべたべたする髪と体を洗い流し、ホテルに備え付けのガウンに着替えてベッドに座り込む。
さっぱりしたせいか、急に仕事をしている時のように頭が働き始めた。

まずは、このモヤモヤを少しでも取り除こう。

そう思い携帯電話を取り出す。
そして自分の会社へダイヤルした。

無断欠勤をなじられるかと思って覚悟していたが、電話口に出た上司は「どうしたんだ? 心配したぞ?」と猫なで声を出した。

「すみません・・・ちょっと疲れが出たのか体調が悪くなってしまいまして・・・。
2~3日お休みをいただきたいのですが・・・。」
思い切り疲れた風を装った声を出すと、上司は慌てたように言った。

「いいよいいよ。最近忙しかったからね。少しゆっくりしなさい。キミがいないと正直困るところもあるけれど、長期に休まれてしまうほうが問題だからね。」

「はい・・・申し訳ありません。また連絡します」

電話を切って、しばし呆然とする。
まさか、優一と私の破談がもう知れ渡っているとか? などということも頭をよぎったが、まだそんなことはないだろうし・・・。
さっきの男の『大丈夫。会社はあなたを待っているよ』という言葉を少し思い出したが、同時に自分を笑ったあの顔を思い出して、腹が立ってくる。

(普通は自殺を疑うわよ。現にホテルのフロントのさっきの目つき・・・)

もうこのホテルにはこれ以上泊まらないほうがいいかもしれない。
そう考えて手早く身支度をして荷物をまとめると、チェックアウトをしにフロントへ向かう。

「急な仕事で戻ることになったので・・・」と、頼まれもしない小芝居を打ってホテルを後にした。

だけどこれからどうしよう。

そう思いながら街の方へとぶらぶら歩く。
海の景色だけではなく、古き良き町並みが残っているのも、この土地のセールスポイントだ。
しばらく散策していたが、ほどよく足も疲れてきたところに空腹だったことを思い出した。

観光客向けに古い建物を改造したらしい洒落たインテリアのカフェで、窓際の席に座り遅い昼食をとる。
古い町並みを訪ねるのは好きなのだが、優一と二人で旅をしたことを思い出してしまう。

旅行の計画をする時、いつも優一は「キミの行きたいところでいいよ」と優しく言ってくれた。
奮発して大きな老舗の日本旅館に泊まったこともあったっけ・・・。
揃いの旅館の浴衣を着て、豪華な食事に舌鼓を打って、お酒にほどよく酔って。
温泉で温まった体を重ねた夜・・・。
しかし、甘美な思い出は途端に、自分の顔があの優一と腕を組んで歩いていた女性に代わり、どす黒い感情に覆われていく。

「あぁいやだ!」
きつく目を閉じて妄想を追い払おうとしたが、胃の辺りをかき混ぜられるような不快感がぬけない。

一つ大きな深呼吸をして、窓の外に目をやった。

一人の男性が歩いている。少し遅れてもう一人。

後ろを歩いている背が低くてがっしりした感じの男性が呼び止めたのか、前を歩く長身の男がちょっと立ち止まって振り向いている。

「さっきの・・・!」
ハッとする加奈子。

あのくるくるとウェーブした髪は見間違うはずもない。
一緒にいる男は・・・? カメラを持っている。ヒゲにメガネの男。
仕事かしら?旅行雑誌の取材かなにかみたい。

なんだか凸凹な組み合わせで面白いわね・・・とちょっと笑えてきたが、すぐに今朝のやり取りを思い出してまた腹が立ってきた。

何か一言でいいから、言ってやりたい。
何を・・・? よくわからないけれど、あの、私を笑った男ともう一度話がしたい。

優しげな顔で話すくせに、なんとなく自分を突き放すような態度。
少し寂しげな笑顔、華奢に見えるのに助けあげられた時の腕の力・・・。
「自分で登っておいで。この手は絶対に離さないから」
まっすぐにこちらを見ていた、少年のような光の宿る丸い目・・・。
うまく説明のできない感情が湧き上がるのを感じてとまどっているうちに、窓の外の二人の姿はもう見えなくなっていた。

慌てて席を立った加奈子は、会計を済ませて店を出て、二人が去った方向へと歩き始めた。


   (つづく)
 ちょっと更新が遅くなってしまいました~。
子供の行事のつきそいなどでバタバタして夏バテ気味だった上に、なんかしらんがムスメとダンナがこの週末、リビングに布団を敷いて寝てたりしてたので、パソコンを使うことができずにおりました~。

旅路第3話、つなぎの部分なので面白くないですね(^^;
次はなるべく間をあまり空けずに更新いたしまする・・・。


そうそう、一つ書き忘れていました。
このお話は、limeさんから原案をいただいて書き始めた・・・ということは第一話の追記に書きましたが、
そのとき、「細かい設定が私の考えていたのと同じ!」とlimeさんが言ってくださったのともう一つ、
「私も主人公の名前を『加奈』にしようと思ってたんだけど、言いましたっけ?」と。
いや、聞いてなかったんです。
偶然でした。私は「子」をつけましたが、でも漢字も同じ「加奈」。
これにはビックリしましたよね~?limeさん(^^)






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Date:2010/08/16
Trackback:0
Comment:10
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

*

被害妄想が入ったとき人間はろくなことをしでかさないものですが……加奈子さんドツボ状態ですな。

かかわらないほうが無難なようであります陽くんたち。
2010/08/16 【ポール・ブリッツ】 URL #0MyT0dLg [編集] 

* ふふ。

よし、行け加奈子、ひっかきまわしちゃえ!
なんて、酷いことを言ってしまいそうになる傍観者・笑

新鮮なんですよね、秋沙さんの加奈子。
私の白昼夢にない、変わり種。
やりにくいでしょうね、坂木達(●´艸`)ヾ←鬼
2010/08/16 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* おはようございます~。

お盆はドタバタしていて、すっかりご無沙汰しちゃいました(><;

面白い!
2話目が坂木と陽の会話、3話目が加奈子の様子をそれぞれに書き分けられてて、お互いが同じ時間を別々の場所で過ごしてる・・・ってのが伝わって来ます。
ちょっと、TVのワンシーンを観てる感じ。

とうとう3話まで我慢出来ずに読んじゃったけど、次の更新が楽しみですe-266
2010/08/17 【】 URL #9dnUgMTg [編集] 

* ポールさんへ♪

なははは。
ここで関わらないようにしちゃうと、お話が終わっちゃうんですけどね(^^;

加奈子さん、ドツボですね(笑)

男性諸氏から見たら、加奈子ってどうなんでしょう?
やっぱむかつきます?(^^;
2010/08/17 【秋沙 】 URL #- 

* limeさんへ♪

そうかぁ、もっとひかきまわしちゃえば良かったのかな(笑)

たぶん、私自身の性格がおかしいので、私の書くお話に出てくる女性はみんな、なんか変ですね(^^;
2010/08/17 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* 蘭さんへ♪

あまり意識しないで書いてましたけど、こういうふうに同時進行的にばらばらの場所で起きてることを書くのって楽しいですね。

私、そういうのが多いかも。
べつの場所のことだったり、時間が前後したり。
読んでる人は大変ですね(^^;


「旅路」かなりダラダラと長いですので、のんびりとお付き合いいただければ・・・♪
2010/08/17 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* 加奈子

fateも割と、名前を付けるときって第一変換で出てくる漢字を使うことが多いです。しかも、あ行とかあ段とかから始まる発音し易い名前が好きです。
もっと言ってしまえば、登場人物の名前を考える作業は大嫌いです(--;

旅情溢れているなぁ…と、恐らくしみじみする場面ではないんだろうが、旅行したいな~と背景の景色にぼうっとしているのだ。

人物はイライラしていたり、ハラハラして何かを追ってみたり、過去に涙ぐんだりしているのに、景色は雄大に静かにそこに在るのみ。
そういうところ、良いなぁ、と思います。
旅情あふれる温泉宿。
旅行客を心配する宿。
背景目線だと、きっと何もかも許して受け入れているのに、そこに自分のことで手いっぱいの人物たちは同化することなく通り過ぎていく。
なんだか、現実にそれを見ているようでしみじみしました。

もう一個しゃべくりたいことがありましたが、長くなりすぎるので諦めました(^^;
また、お邪魔いたします~

2011/11/07 【fate】 URL #- 

* fateさんへ♪

私も登場人物の名前を考えるの、苦手です~(>_<")
大抵、お話の途中で後悔したりします(笑)。
(その点、スピンオフは非常にラクチンだったりする)

fateさんは、こちらも意識していなかったような部分を読み取ってくださって、コメントをいただくのがとっても楽しみです(^^)
確かにそうですねぇ、このお話はタイトルも「旅路」ですし、旅情ミステリーみたい(笑)。
「自然」とか「街並み」とか、そういう物っていつも変わらずそこにどーんと構えていてくれるのに、人間たちは自分たちの事情で精一杯で、勝手に自分たちの心境でそれらを捉えているのかもしれない。

とどまる事なく通りすぎていく、まさに「旅情」を感じて欲しいお話なだけに、なんだかfateさんは序盤でテーマを読み取ってしまってくださった感がありますが(笑)、ぜひもう1個の語りたい事も書きに来てくださいね~。
2011/11/07 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* 日常と非日常の交錯

…のような気がするんです。

加奈子さんと陽君の出会いって…加奈子さんが「日常」から外れなかったら、きっと出会わなかった二人ですよね。
陽君たちって「三途の川」じゃないですが、そんな非日常の中にいる人たちのような気がするんです。
2011/11/26 【有村司】 URL #- 

* 有村さんへ♪

そうですねぇ~。

日常から解放されて、非日常を楽しむのが「旅」ですよね。
だけど、一般人にとっては非日常であるはずの「旅」が日常と化してしまっているのが、坂木と陽なわけで。

そんな両者の人生が、ふっと交錯してしまう、そんな瞬間の物語なのかもしれません。
決して平行線になったり、合流したりすることのない、交差。

陽と坂木の運命は、とっても過酷なもので。決して表の世界に出てきて人と交わって人生を謳歌するなんてことができないわけで。

私がスピンオフを書き始めたきっかけは、そんな二人をいわゆる一般的な日常を生きている人たちと交わらせて、表の世界にも足跡をつけてあげたい・・・と思ってしまったことからなんです。

有村さんがそのへんのところまで読み取ってくださっているようで、嬉しいです(^^)
2011/11/26 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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