もうひとつの「DOOR」

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□ 旅路 □

旅路 (4)

 取材のふりをして歩いていた二人だが、小さな町の散策はすぐに終わってしまった。

仕方なくホテルに戻ってキーを受け取ると、坂木はロビーの奥にあるさっき食事をした喫茶店を指差して言った。

「ちょっとコーヒーでも飲んでくる。おまえもどうだ? 陽。」

「朝にも行ったばかりじゃない。気に入ったの?」

「海の見えない部屋にこもってるよりは、いくらか観光気分にもなれるってもんだ。」

「そう、じゃぁ僕は部屋に戻って、ちょっと端末をチェックしてるよ。」

そこで二人は別れて坂木は一人、海に面したテラスでコーヒーを注文して新聞を広げた。


まだ1ページ読むか読まないかくらいの時間が経った時だった。

「あの、ここよろしいですか?」と突然一人の女性が坂木に声をかけた。

「んぁ?」

紙面から顔を上げた坂木は、女性の顔を見てから思わず、周りの席を見渡した。
空席は他にもある。
なんだって合い席なんかするんだ?知らない女だ。

「かまわんが・・・え~っと・・・?」

有無を言わさず、女性はさっさと向かいの椅子に座った。
小旅行と言った感じの手荷物を、隣の椅子に置いている。

ぽかんとしている坂木に、いきなり真正面から女性は聞いてきた。
「お連れの方はどうしたんですか?このホテルに宿泊なさってるんですよね?」

坂木の警戒心がむき出しになる。
「・・・・誰だ? あんた」

「さっき、背が高くて髪がくるくるしている方とご一緒でしたよね?あの方とはお仕事ですか?
今朝ちょっと、あの方とお話をしまして・・・」

そこでやっと、坂木にもピンときた。

「あんたか? 今朝あいつにケガをさせたのは。ふん、人騒がせなことをしてくれたもんだ」

「・・・!。お聞きになったんですか?」

「相棒がケガして帰ってきたら、そりゃ何があったのか問い詰めるに決まってるだろう」

「・・・・・」

ウェイターが注文を取りに来たので、加奈子もコーヒーを頼んだ。
坂木はもう知らん顔で、新聞に目を落としている。

(なんだかぶっきらぼうで失礼な男ね。「相棒」って言ったからにはやっぱり仕事仲間なのかしら)

「あの」

坂木は紙面から目を離さずに「あぁ?」とだけ答える。

その態度に少しイラつきを感じながらも、なるべくにこやかに加奈子は問いかけた。

「このホテルに泊まってらっしゃるんですよね?」

「それがなんだって?」

「それだったら、私も今からチェックインしようと思いまして」

「んぁ?」

「女の一人旅は、この土地では警戒されるみたいなんです。その・・・自殺志願者じゃないかって思われるみたいで。だから、あなた方と仕事仲間に見えるようにさせていただこうと思いまして」

坂木は目線だけ加奈子に向けて、ふふんと笑った。

「その通りなんだから仕方ないんじゃないか?
 そうやって体裁ばっかり気にするから、失恋ごときで死のうなんてバカなことを思いつくんだ。
 それともやっぱり最初から『狂言自殺』か?」

加奈子はガマンしきれなくなって声を荒げた。

「死のうと思ってここに来たわけじゃないんです! でも・・・死にたいほどつらいめにあったのは本当です! それで・・・海を見ていたらなんとなく死んでしまおうかって思って・・・。
 だけど、迷ったり躊躇したり思いなおしたり、そういうことだってあるじゃないですか!
 それを笑うなんて、あなたも、あなたの相棒だというあの人も、ずいぶん失礼じゃないですか!?」

しかし坂木は落ち着き払った顔で、また紙面に視線を戻しながら答える。

「頭に血が上りやすいタチなんだな、あんた。おおかた、死のうとしたのも頭にきて身を乗り出してみたとかそんなところなんだろ。『なんとなく』死んでみようなんて思うくらいなら、今までも『なんとなく』お気楽に生きてきたんだろうな。」

加奈子はあっけにとられて、その男のヒゲ面を眺めた。言葉が出ない。

とにかく、この男のペースに巻き込まれていたら、あのもう一人の若い男の事を聞きだすこともできなくなってしまう。
冷静になろう・・・。
加奈子は黙って立ち上がると荷物は席に置いたままフロントへ行き、さっさとチェックインを済ませた。

テラスの席に戻ってもまだ、男は顔も上げずに新聞を読んでいる。
取り付く島もない感じだ。
向かいにもう一度座った加奈子は、冷めてしまったコーヒーを仕方なく黙ってすすっていた。

その時だった。

「坂木さん・・・?」

テラスの出入り口のほうから、呼びかける声がした。

呼ばれた男が新聞から顔を上げるのと一緒に加奈子もそちらを振り向くと、あの青年が立っていた。

「あれ? あなたは・・・」と、加奈子に向かって不思議そうに訊ねる。

「あ、あの・・・先ほどはどうも。」

「このホテルに泊まっているの?でもどうして坂木さんと・・・」

「いえ、あの。さっきお二人でいるところを見かけたから、このホテルなのかなって・・・」

人懐っこい笑顔にちょっとホッとしながら加奈子は答えたが、つかの間だった。
青年は真面目な顔つきに戻って、ヒゲの男に話しかける。

「坂木さん、『編集部』から連絡が入ってるよ。『取材』の日程を繰り上げて欲しいんだって。
詳しいことは、部屋でメールを見ながら話そう。」

「そうか・・・。わかった。」

坂木と呼ばれたヒゲの男は、新聞を閉じて立ち上がった。

「あの・・・」
思わず加奈子は二人を呼び止めた。

ヒゲが振り返って口を開いた。

「あんたはあんたの仕事があるだろう。部屋で資料の整理でもしてたらどうだ。ついでに自分の心の中もな。」

(あら。話を合わせてくれたの? 結構面白いじゃないの、あのヒゲの人・・・サカキって呼ばれてたわね。)

呆然としているうちに、二人の男はホテルの廊下へと消えてしまった。

(あ、肝心のもう一人の名前がわからなかったわ。)


---------

部屋に戻る途中で、陽は坂木に訊ねた。

「なんであの女性と一緒だったの?」

「知らん。俺たちが一緒に歩いているのを見かけたらしい。
 勝手に座り込んで、『一人でいると自殺志願者だと思われるから、あなた方の仕事仲間ってことにしていただいて、このホテルに宿泊しようと思って』だと。図々しいオンナだ。」
 
陽は可笑しくてしょうがないというように、くすくすと笑った。
「面白い人だね。坂木さんに一目ぼれしちゃったとか?」

「バカやろう。きっとあれは、おまえのことが気になってるんだぞ。まずいな。
こっちのことを探られたりしたら、やっかいだ。そんなことで本部に仕事を変更してくれなんて言えないしなぁ。」

陽はまだ、含み笑いをしながら答える。
「大丈夫だよ。そこまで無茶する人のようには見えないもの。真夜中まで僕たちにまとわりついたりはしないだろうし」

「それで、仕事が早まったのか?」

急に陽が「仕事」の顔になった。読み取れない、無表情な顔。

「当初の予定通り、今夜」

「そうか」

二人は、最終的な段取りのチェックをするために、部屋へ入った。



(つづく)




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Date:2010/08/19
Trackback:0
Comment:4
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

*

やっぱり、陽が出てくるとにんまり(*^_^*)
でも、ぶっきらぼうの坂木がもう、面白くてかわいくて。
やっぱり秋沙さんには、引き続き白昼夢を書いていただきたい!切願。

『旅路』の途中だというのに、私の白昼夢はもう「エレジー」に突入しました。前編、後編に分けました。
実は・・・・。
エレジー(後編)は、ずいぶん変わりました。
秋沙さん、読んでびっくりするんじゃないでしょうか。
泣いちゃだめよ。(怒っちゃだめよ)
自分でもびっくりな感じです。
どうか、エレジー(後編)は秋沙さんにももう一度読んでほしいです。
2010/08/19 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* limeさんへ♪

引き続き白昼夢を書かせていただきたい!!
けれど、ネタはください(笑)

もうエレジーなんですねぇ・・・寂しすぎる。
でも、あの終わりが来なければ、その前のたくさんのお話たちが生きてこない、不思議な世界ですよね。
後編、読みました。
そうじゃないかな、と覚悟してました。やっぱり泣きました(怒ってないっすよ)。
よくぞあそこまでハッキリと書きましたねぇlimeさん。
書きながら泣いちゃったんじゃないですか?
お疲れ様でした・・・。
あ、まだ最後のお話が残ってますね。
もう一度かみしめながら読ませていただきます。
2010/08/24 【秋沙】 URL #mQop/nM. [編集] 

* 加奈子さんって…

秋沙さまそのものじゃないですかねえ。

お話の登場人物になってまで(「専門用語」(笑)では二次元に入り込んでまで)坂木さんや陽君と交流を持ちたいんですね…加奈子さんという「二次元媒体」を使って。

いわば、加奈子さんは秋沙さまの「アバター」のように思います^^
2011/11/27 【有村司】 URL #- 

* 有村さんへ♪

おおお!なるほど!

そうですね、きっとそうなんです。
だからこそ、私は加奈子に「近親憎悪」みたいな感情を持ってしまうのかもしれないですね(^^;

いやぁ、有村さん、まだ「旅路」を最後まで読んでいないのに鋭いご意見。恐れ入ります(笑)。
2011/11/28 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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