もうひとつの「DOOR」

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□ 旅路 □

旅路 (8)

「なぜあの時、私を見て笑ったの?」

加奈子の問いに、陽はゆっくりと振り向きながら
「え?」と聞き返した。
子供のような、全く邪気のない目をしている。

「あの・・・だから・・・私が海のところで泣いていた時・・・」

しかし、何回か丸い目でまばたきをした陽から出た答えに、加奈子は拍子抜けする思いがした。

「笑った・・・? 僕が・・・?」

思わず、ムキになってしまう。
「そうよ・・・! 確かにあなた、笑ってたわ! 私の泣き顔を見て」

「そうだったかな・・・。よく覚えてないけど・・・。
 貴女が死のうとしているのかどうか気になって近くに行ったんだ。
 でも、死ぬつもりでは無さそうだなって思って安心したんだ。それで笑ったように見えたのかな?」

「そんな・・・。なんか、後から考えた言い訳に聞こえるわ。
 それに、死ぬつもりでは無いなんて、どうして勝手に思えるの?」
 
ちょっと何かを思い出すかのように視線を動かした陽は、静かに答えた。



「涙を流していたから。」


「え?」

どういう意味だろう。泣いていたら、泣くほどつらいことがあったのだから、
死のうとしていることにならない?
加奈子は頭が混乱してきていたが、目の前の青年は落ち着いた様子でコーヒーカップを口に運んでいる。

「・・・・よく・・・わからない。」

「そうかな・・・? 自分のために涙を流せるのなら、まだ心が生きているってことだなと思った。
 それだけだよ。」
 
「心が・・・生きている?」

「そう。本当に絶望してしまったら心が死んでしまう。笑うことも泣くこともできなくなる。」

「あなた・・・死のうとする人の気持ちがわかるの?」

日の光を受けた青年のシャツがハレーションを起こしたようにまぶしく見える。
その胸元にあるクロスのペンダントが、金色に光を反射した。
ふっと、その表情が和らいだような気がして、加奈子はもう一度訊いた。

「死のうとしたことがあるの?」

穏やかな顔つきのまま、少しうつむいてその手に包んだコーヒーカップの中の液体をみつめながら、青年は答えた。
その深い色を瞳に映しながら。

「死のうとしたわけじゃないけど。死んでいたも同然だった。」

「事故・・・とか?」

「ううん。心が死んでしまったんだ。」


一段と強い風が、海からテラスへと吹き込んだ。
陽は、言葉を返せずに目を見開いて自分をみつめる加奈子を安心させようとするかのように、ちょっと微笑んでみせた。

加奈子はうろたえていた。
少年のようだけど、どこか冷たいと思っていた青年の瞳の中に、深い深い闇を見てしまったような気がした。きっと、自分より年下なのに。

「い・・・今は・・・?」

「今?」

「死にたいと思ったりしないの・・・?」

陽は顔を上げて、海の向こうのはるか彼方を見渡しながら、つぶやくように話し始めた。

「僕は、いつだって死ねるよ。一度死んだようなものだから。
 でも・・・僕に・・・その頃の僕に、生きろと言ってくれた人がいたんだ。自分のために生きてくれって。
 だからもう今は、自分から死のうとは思わない。その人のために死ぬのでなければ。」
 

加奈子は、自分が今どんな表情をしているのかが、一瞬どうしようもなく気になった。
笑って良いのか、真剣に聞くべきなのか。
"いつだって死ねる"・・・? "その人のために死ぬ"・・・?
あまりにも非現実的な言葉のような気がした。
なのに、なぜだろう。
切り立った崖の上から下を覗き込んでしまったような、ぞっとするような感覚が背中を走った。

「じゃぁ、あなたは、その人のために生きているの?自分の人生なのに・・・?
 なんだか・・・おかしいわ。」
 
言ってしまってから、ちょっと言い過ぎたか・・・と思ったが、陽は穏やかな微笑を浮かべたままだった。

「そうかな・・・?
 その人のために生きているのであって、その人のせいで生きているのではないんだ。
 結局、全部僕が選んだことなんだよ?
 ・・・今の僕は、全て僕自身が選んできたことの結果だよ。」
 
全て自分で選んできたこと・・・。

この人はどういう人生を歩んできたんだろう。

陽は、そんな加奈子の混乱を見抜いたかのように、ちょっといたずらっぽい顔をした。

「貴女だって、誰かのために、死のうとまで思いつめたんじゃないの?」

「私? 私は・・・」

急に自分のことに話をふられて、加奈子はとまどった。
昨日崖から落ちそうになったときよりも、「死」という言葉が現実的に響いている気がした。

加奈子が言葉に詰まっている時、ヒゲの男がテラスに戻ってきた。
なぜか加奈子は少しほっとしたが、男の表情は険しかった。

坂木は席にはつかず、低い声で言った。

「陽、部屋に戻れ。仕事の指示だ。」

「次の行き先、決まったの?」

「・・・いや。」

なぜか坂木はそこで、ちらりと加奈子を見た。

「詳しいことは部屋で話す。来い。」

そう言うと、さっさとロビーのほうへと出て行く。

立ち上がった陽は、小さく「じゃ」と加奈子に声をかけるとその後を追っていった。

加奈子は除け者にされたような寂しい気がした。考えてみれば当たり前なのだが。
海のほうへ散歩に行こうかとも思ったが、強い風に乗っていつのまにか空に黒い雲が広がってきていた。
それに、今、崖の上から海を見下ろすのはとてつもなく恐ろしい気がした。
もう少し、街を見てこようかな・・・雨にならないうちに・・・。

なんとなく、部屋に一人で戻るのは耐えられなかった。




「あの女に、仕事のことを聞き出されたりしなかっただろうな?」

厳しい顔つきのまま、坂木が言う。

珍しく、早足で部屋に向かう坂木を、少し後ろから陽が追うようについて歩いていた。

「うん。仕事の話はしていないよ」

「めんどうな女だからな。気をつけろよ」

「もう、ここでの仕事は終わってるんだし、そんなに気にしなくてもいいんじゃないの?」

「・・・それが、事情が変わった。上のミスだ。やり残したことがあったんだと。」

「・・・」

無言のままで二人が入った部屋の中は、もう日の光が入らず薄暗かった。

湿った風が、嵐の予感を運んできていた。


  (つづく)






ここから先は、私のちょっとした冒険です。
スピンオフとしては、すでにお話がほとんど終わっているはずなんですが、
ちょっと波乱を起こしてみたくなりました。蛇足かも(^^;


もう少し、ご辛抱ください。

相変わらず続編は書き進められていません(>_<)
だんだん、書き進めることよりも、できあがるまでここにべつの事を書いちゃおうかなぁなんて、そっちのネタを考え始めてしまっています。
しかも、小説じゃなくてたわごとのほうを(ダメじゃん)。





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Date:2010/09/03
Trackback:0
Comment:11
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

*

こんな会話を陽とできるなんて、美奈子、うらやましいなあ・・。と、本気で思ってしまうやきもち焼きです。
「笑った・・・?僕が・・・?」ってとこ、大好き。
案外陽は、坂木以外には冷たい男なんじゃないかと思います。辰巳にもかなり失礼な態度ばかりだし・笑

この次の秋沙さんの冒険。
ただただ、感謝です(*^-^*)
2010/09/04 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

*

筆が進まないんですか……。

それでも、その構想を毎日書き続ける努力はしたほうがいいと思います。

書いているとそのうちなんとかなってきます。

一度放棄すると、二度と出来上がることがない、というのが、わたしがこれまでに得た戦訓で……。
2010/09/04 【ポール・ブリッツ】 URL #0MyT0dLg [編集] 

* limeさんへ♪

美奈子って誰ですか~?(笑)

「笑った・・・?僕が・・・?」が気に入っていただけるなんて、予想外でした(笑)
私も、案外陽は冷たいんじゃないかと思いまして。
よかったぁ、limeさんに「陽は冷たくなんかしない!」って怒られたらどうしようかと思ってました(笑)

冷たいっていうか、立ち入らないんでしょうけどね。
楽しい話なら一緒に笑うし、辛いことを話せば「辛いね」って言ってくれるんだろうけど、それ以上のことは言ってくれない感じがするんです。
とらえどころがないですねぇ(^^;

2010/09/04 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* ポールさんへ♪

そうですね。
一行でもいいから、進めていかなければ。
一度放棄したら戻れないような気がします。
他にもたくさんネタがあるんだったら、放っておいてみたら意外にクリアに見えてきたりすることもあるんでしょうかねぇ・・・。

ただ、物理的にPCに集中して向かう時間が取れないことが多いのが問題です。

いやいや、たとえPCに向かって打つ時間が取れなくても、頭の中ですすめておくように努力せねばね!!

ポールさん、いろいろとアドバイスありがとうございます!励みになります!!
2010/09/04 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

*

だ〜〜〜!
加奈子だ!ごめん。
美奈子ってだれよ・笑
物語を組み立てる上で、消えていった人物もたくさんいるので、その中の一人かな。(ただボケてるだけだって認めない女)
それにしても、とらえどころのない陽のキャラを、よくぞそこまで・・・・。脱帽です。
2010/09/04 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* No Title

旅路、8話まできたよ~~
加奈子って、すごく自分に正直に生きてるかんじ。でも、なんかわかるな~、やさしい恋人にうらぎられて悲しいよりも悔しくなってしまう気持ち…。それをずばりと坂木に指摘されて、加奈子はきっとぎくりとしたでしょうね。自分でも認めたくないような気持ちだったろうから…。
2010/12/11 【西幻響子】 URL #U8GV5vt2 [編集] 

* 西幻響子さんへ♪

うわ~、読みづらいお話を一気にここまで・・・お疲れ様です(^^;

そうですね、加奈子は正直というか、そういう点では少し子供っぽいのかもしれないな、とも思います。

女性だったら誰でも少しは思い当たると思います。失恋したときや相手に浮気されたとき、悲しいよりも悔しい気持ちのほうが強いというのは。
ずばり指摘されると、ちょっとイタイですね。
でも、こういうことを女性にずばっと言ってしまってもなんとなく許されるのは、坂木のキャラなんじゃないかな~と勝手に思ってます(^^;
2010/12/11 【秋沙】 URL #mQop/nM. [編集] 

* 今まであまり気にしなかったのに…

んんん??? この二人の仕事って何?
と今更思ったfateでした。
なんだか、ドキドキしますね~

『その人のために生きているのであって、その人のせいで生きているのではないんだ。』
これ、ちょっくらfateにも、身に覚えがあって(というか現在進行形なんだけどな!)ちょっと悶えました(^^;
選んだ結果がここにある。
はい、その通り!
過去も未来も『今、このとき』の一瞬の積み重ねの結果に過ぎない。
深い! 深いですよ! 秋沙さんっ!!

なんか、この3人ってものすごく~くさり気なく怖いハナシしてますよね。
けど、それだけ、秋沙さん、作者さまご本人が辛いことや哀しいことをくぐりぬけてきた証かと思うと、今、ここで輝いていらっしゃる作者さまを本気で尊敬してしまいます。
若い人が描く軽い‘狂気’や恋愛論、そして同時にものすごくpureな世界も大好きですが、人生という重みをその作品にさり気ないエッセンスとして乗せる、ある程度の経験を得た方の作品はそれなりの重みと深みを感じて呻ってしまいます。

ヒトと関わると人は傷つき、人と関わると煩わしいこともあるけど、関わらずにはいられなくて、人を救うのもやはりヒトだと思える。
そういうことを物語として描ける世界が素晴らしい。

人間模様は、それだけで様々な色合いを醸し出して、眺めるだけでも楽しみがあります!






2011/11/09 【fate】 URL #- 

* fateさんへ♪

あぁそうですよねぇ。「白昼夢」未読のfateさんには訳がわかりませんよね(^^;
え~っと、それでは、あえてここで説明はしないでおきますね。
これから読み進めていくとわかる所もあると思いますし、やはり、limeさんの本編を読まないとわからない部分もありますが・・・。
そういえば、limeさんの本編でも、最初のうちは二人の「仕事」はぼんやりとしかわからないものでした。

いやいやいや、fateさん。
このお話の中核はやはり「白昼夢」本編にありまして、陽が話す内容はやはり、limeさんが創り上げたキャラクター故の内容なんです。
だから、私の人生経験なんてほとんど入ってなくて(^^;
(ほんと、坂木の恋愛論くらいですわ)

私などはたいして辛い経験も哀しいこともありませんし、いつも誰かのせいにして生きてきております(^^;
だからfateさんがとっても深い所を読み取ってくださると、いつも嬉しいのと同時になんだか申し訳ない気持ちになります(笑)。
いつか、limeさんの書いた「白昼夢シリーズ」をfateさんが読むとき、その時こそ陽という人間の深みと重み、そしてそれを書き上げたlimeさんの人間を見る暖かさ・・・(既にRIKUでご存知とは思いますが)そんなものを感じてくださったら、と思います。

でも、本当にfateさんのコメント、いつも楽しみです。これからもよろしくです♪
2011/11/09 【秋沙 】 URL #- 

* 好きなんだなあ…^^

おはようございます^^

秋沙さまは、陽君や坂木さんが本当に好きなんだなあ…^^と思いました。
陽君や坂木さん(あと辰巳さんも)をすごく「よく見てる」な…と。

limeさまから思いがけず「宿題」を貰ってしまったワタシですが、他人様のお子を、ここまで深く愛して動かす自信はないです…orz

それと「白昼夢」の世界が完結してしまった今、スピンオフという形で、白昼夢の人たちに逢えることの感謝を…秋沙さまとlimeさまに…ありがとうございます^^
2011/12/01 【有村司】 URL #- 

* 有村さんへ♪

もう、ホントにストーカーばりの惚れ込み方です(笑)。

実はね、limeさんとはブログを立ち上げる以前からお付き合いがあるので、「白昼夢シリーズ」をlimeさんが書き始めた当初から、いろんな事をメールで語り合ってるんです。
だから、小説の上には書かれていないような深い部分までキャラクターについての話(モデルになってる人物とかそういう情報も)を聞かせてもらったりしたんですよ。
「くちなしの墓」を書くにあたっても、細かい年齢設定とか、limeさんがどの程度坂木の過去について頭の中で考えてあるのかとか、だいぶインタビューさせてもらいました。

あはは。「宿題」なんて思わなくてもいいんじゃないかな~。
「使えそうな機会があったら使ってみて?」と言われた程度に考えておけば(^^)
長谷川さんを主役にする必要なんて無いですし、ね?


そうなんです。「白昼夢」の世界が終わってしまうのはあまりにも悲しくて。
ずいぶんと「秋沙色」に染めちゃいましたけど、とにかくあの人達に生きて動いていてもらいたいんですよね~(^^;
2011/12/01 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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