もうひとつの「DOOR」

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

にほんブログ村 小説ブログへ 人気ブログランキングへ←こちらもぽちっとお願いします(^^)

→ 「スポンサー広告」目次へ戻る
*    *    *

Information

□ 旅路 □

旅路 (10)

 その部屋には、タバコの煙がこもっていた。
テーブルの上には何かの機械と、吸殻が山盛りになった灰皿がある。

坂木が陽を支えながら奥のベッドルームに連れて行き、横にならせている。
陽はなすがままのようだ。

加奈子はどうしていいかわからず、とりあえずバスルームからタオルとガウンを持って来た。

陽がさっき手を持って行った左の耳から、坂木がイヤホンのようなものを引き抜いている。加奈子がタオルを差し出すと、坂木は無言でそれを受け取り、陽の濡れた服を脱がせ始めた。

目のやり場に困った加奈子は慌てて部屋の入り口の方へ行き、二人に背を向けたまま
「あの、フロントに頼んでお医者様を呼んでもらいますか?」と聞いたが、
「必要ない。あんたはとにかく、黙ってそこにいてくれ」と坂木に一喝された。

その厳しい口調に圧倒されて仕方なく加奈子はそこにとどまり、ちょうど坂木の動きだけが見えて陽の姿が目に入らない位置に立った。

坂木は、てきぱきと慣れた手つきで陽の濡れた服を床に投げ、タオルで身体を拭き、ガウンを着せている。
しかし、ふと陽の腕をガウンの袖に通そうとしていた坂木の動きが止まった。
そして、その手に握られていたクロスのペンダントに気付くと、痛みを感じたような表情を浮かべた。

再び陽の着替えを続けながら、坂木は低い声で加奈子に問うた。
「あんた、どうしてここにいた。」

加奈子は尋問を受けているような緊張感に襲われた。
「あ、あの、眠れなくてバーで飲んでたんですけど、お二人が今夜は来ないし、なんとなく部屋に戻る前にこのフロアに降りてみて・・・」

「なんとなく?」
坂木は手を止めて、あきらかに加奈子を疑るような目つきで見ている。

「は、はい。自分でも何してるんだろうっておかしくなって・・・それで、あの、戻りかけた時にそこの非常扉があいて陽・・・さんが入ってきたんです。」

「陽は、あんたに何か言ったか?」

「え?」
何のことだろう。「声を出すな」と言われたが、そのことだろうか。
答えに詰まっていると、携帯の着信音が鳴った。坂木のものらしい。
画面を確認すると、「ちっ」と小さく舌打ちをした坂木は、憮然として通話ボタンを押した。

「もしもし。・・・あぁ、大丈夫だ。あぁ。戻った。びしょ濡れで熱を出してるようだがな。あぁ・・・だから大丈夫だと言ってるだろう。
こいつを着替えさせてやるから、後でまたかける。・・・わかってるよ」

不機嫌に電話を切った坂木は、また加奈子に向き直った。

「何か話をしたか?」

「い、いいえ。こんな時間だから声を出さないで、と言われただけです。」

「そうか・・・。」
坂木は長いため息を一つつくと、ガラスのコップにウィスキーらしき褐色の酒を少し注いだ。
そして何か錠剤のようなものを出してくると、陽の上半身を助け起こした。

「坂木さん・・・」
かすれた、小さな声で陽が言っているのが聞こえる。

「飲め。身体が温まる。」坂木が陽の背中を支えてコップと薬を差し出した。

「坂木さん・・・もう、大丈夫だよ。・・・ほら、ペンダントも戻ってきたし・・・」

「あぁ、わかった。わかったから少し眠るんだ。」

坂木はもう一度陽の身体を横にすると毛布をかけてやりリビングのほうへ出てくると、
その場に立ち尽くしている加奈子とは目を合わせずに、低い声で言った。
「陽は、ペンダントを探しに行っていたんだ」

「こんな夜中に・・・?」と加奈子が言いかけると、畳み掛けるように坂木は続けた。

「あんた、見たところ頭が良さそうだ。陽のことが気にかかるのもわかるがな、これ以上は立ち入らないでくれ。そのほうがいいのは、あんたならわかるだろう。部屋に戻ってあんたも眠るんだ。このことは忘れてくれないか。」

「で、でも・・・すごい熱を出してるみたいだし・・・」

「大丈夫だ。とにかく今夜は眠らせるから。いいな。こいつは大切なペンダントを探していたんだ。天気が荒れてなかなかみつからなくて、こんな時間になったがな。」

まだ立ちすくんでいる加奈子に、坂木はふっと力が抜けたように少し優しい口調になって言った。

「心配かけてすまない。大丈夫だ。こいつには俺が付いているから。あんたは部屋に戻って眠ってくれ。」

「え? あ、はい・・・だけど・・・」

すると、また坂木は急に厳しい顔つきになった。
「いいから戻れ。今夜のことは忘れて、誰にも話すな。・・・でないと・・・。
・・・そうでないと、あんたの命の保障はできない。」

「えっ!?」

びっくりしている加奈子を無理やりに部屋の外へ押し出すと、坂木はドアを閉めた。


しばらく扉の前で呆然と立ち尽くした加奈子だったが、これ以上食い下がる理由も見当たらない。

仕方なく自分の部屋に戻って寝る支度をしながら、今見たことや言われた言葉を何度も思い返した。

わからないことだらけだ。
「命の保障はできない」なんて、なんの冗談だろう?
そんな冗談まで言って、私を部屋から追い出そうとするなんて・・・とも思ったが、坂木の真剣な表情と声を思い出すと、笑えない気分だった。

ぐるぐると同じことを考えていたが急激に酒の酔いがまわってきたのか、いつのまにか深い眠りにひきずりこまれていった。




---------------

 加奈子の足音が廊下を遠ざかっていくのを確かめると、坂木は陽のベッドの傍らに椅子を持ってきて座った。
額に触れてみると熱は高いようだが、薬が効いてきたのか静かな寝息をたてている。

それを確かめると坂木は、そっと陽の手に握られたペンダントを抜き取った。
鎖が切れている。
しばらくそれをじっとみつめていたが、やがて携帯電話を取り出し、さっきの着信番号にダイヤルをした。

2コールもしないうちに辰巳の少しイライラしたような声が聞こえた。
「もしもし? 陽はどうなんだ?」

「薬が効いて眠っている。もう大丈夫だろう。」

「そうか、ちゃんと仕事は終わってるんだな?」

「大丈夫だと言ったじゃないか。」

「手はずどおりに片付いたんだな? まさか秘書の遺体は海に落ちたなんてことはないな?
 海に流されて遺体が発見されないとか、書類の隠し場所の鍵がどこかに落ちてしまったなんてことになったら、完全に失敗だぞ。」

「あぁ大丈夫だ。それはすぐに上から確認したと言っていたのを聞いたんだろ?」

「確かに聞いたが・・・。なんでそれから、戻ったという報告があんなに遅れたんだ? しかもまだ外にいるらしい音がしているうちに、通信を切りやがったぞ、陽のやつ。」

「それは・・・ペンダントを探していたんだ。」

「ペンダント?」

「あいつのお袋の形見のペンダントだ。」

辰巳が沈黙した。

「ターゲットと崖の上でもみあってな。鎖が切れて崖の下に飛んだらしい。それをあいつは・・・探していたんだ。あの嵐の中でな。」

受話器から一つ、大きなため息が聞こえた。

「まったく無茶をする・・・。それで、ちゃんと取り返してきたんだな? 誰かに見られたりしていないな?」

「・・・あぁ。」

電話でよかった、と坂木は思った。表情を見られていたら、加奈子に目撃されたことを辰巳に気付かれてしまったかもしれない。

「ペンダントを落とすなんて、珍しく凡ミスだな。」

「もともと無茶な指示を出したのはそっちだろう? 最初から秘書をやればよかったんじゃないのか?
あの老人は指示を出すだけで、結局はその秘書が毎日書類をチェックしてあの崖の途中にある隠し場所へ運んでたんだろ?
もっと綿密な計画をたてておけば、わざわざ嵐の夜にあんなキケンな場所で仕事をしないですんだっていうのに・・・」

坂木の語調がだんだん興奮して激しくなるのを、辰巳はさえぎった。

「まぁそういうな。嵐の夜なら足をふみはずして落ちても不自然ではないだろ?
やつの手配した荷物を積んだ船が出るまで日がなかったんだ。それにあの秘書がな、思った以上に頭の切れる奴でな。」

「その上、武道の才能もあったらしいじゃないか。まったく、こんな危険な仕事になるっていうのをあんたたちは・・・」

「まぁまぁ。そんな大声を出しなさんな。陽が目を覚ましちまうだろ。」

そう言われてしまっては、坂木はぐうの音も出ない。

「とにかく、仕事は完了したんだ。切るぞ。」

怒りを抑えながらそれだけ言うと、辰巳の返事を聞かずに携帯を閉じた。


陽は相変わらず静かな寝息を立てている。

坂木はグラスにウィスキーを少し注ぐと、ストレートで飲み干した。

(あの、加奈子という女、どう思っただろうか。なんだってあんなところにいやがったんだ。
こっちの仕事にまで勘付く事は無いだろうが・・・。)

しかし、加奈子が部屋に入ってすぐにバスルームからタオルを持ってきたすばやい行動と、陽の服を脱がせ始めた時の慌てた表情を思い出すと、少し頬がゆるんだ。

鎖の切れたクロスのペンダントを手にとり、じっとみつめる。
そして、眠っている陽にそっと話しかけた。

「ほんとに、おまえは無茶をする。これがみつからなかったら、どうするつもりだったんだ?
俺は・・・お前が熱を出したらそばについていてやれるだけか?

・・・お前の傷は、一生ぬぐってやれないのか?」

子供のように少し頬を熱で赤くしながら眠る陽の髪を、坂木はくしゃっと手でかき混ぜてから、立ち上がると部屋の明かりを消した。



・・・・つづく
 はい、お叱りはごもっともです(^^;。
逃がしちゃいました。
しかも、かなりあやふやな言動で(笑)。

皆様からツッコミが入りまくるであろうことは覚悟しております。
甘んじてお受けします(笑)。


・・・あと3話です。
え~っと、言い訳というか、確認しておきますが、
決して「旅路」は、ハードボイルドでもミステリー小説でもございません。
すみませんでした~~~。(終わってないのに謝る)





← BACK         目次へ         NEXT →




関連記事

にほんブログ村 小説ブログへ 人気ブログランキングへ←こちらもぽちっとお願いします(^^)

→ 「旅路」目次へ戻る
*    *    *

Information

Date:2010/09/09
Trackback:0
Comment:8
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

* こんにちは^^

ここまで一気に読みました~~!! 溜めてたな~~。

あ、お久しぶりです、秋沙さんv-290 ご無沙汰しちゃって、本当にすみませんe-330

加奈子・・・一体何がしたいv-359
陽の何が知りたくて、二人の間をウロウロしてるんだろう?? うーん・・・加奈子の心理が早く知りたい・・・。

秋沙さんの所で読める二人が、本当に愛おしいですv-345
limeさんの所では二度と会えない陽と坂木。
でも、秋沙さんにどんな形であっても、これからもずっと二人に旅をさせて欲しいと思ってしまう私なのでありました。
2010/09/09 【】 URL #9dnUgMTg [編集] 

*

陽くんがペンダントを探したのは当然です。

もしも警察に発見されたりしたら、有力な証拠物件になりかねませんからねえ。

そこから足がついたりすると、下手したら陽くんが責任を取らされて組織に殺される結果になったかもしれません。

危ういところでした。



加奈子さんを逃がしたことについては、坂木さんが「殺した後で死体を処理する手間とリスク」を計算した上でのことでしょう。

↑は、なにもいっていないも同然の言葉ですが、そういった言葉をぼそりと入れておけば、こういった犯罪ものとか冒険ものの要素がある作品では妙に説得力が出てくるので使いこなせるとお得です(笑)

ほかに、そういった「なんとなくもっともらしい言葉」には、「生かしておいたほうが事態の攪乱に役立つ」とか、「なにかあったら組織が始末するだろう」とかがあります。わたしの小説はそういうもっともらしい言葉だらけだったりします(^^;)

小説は気合いとハッタリだ(^^)
2010/09/09 【ポール・ブリッツ】 URL #0MyT0dLg [編集] 

* 蘭さんへ♪

ここまで一気に・・・ですか!?
そ、それは・・・お疲れ様でした(^^;

読みにくい文章だったでしょう?ごめんなさい。

どうも私は、limeさんのように簡潔で読みやすい文章が書けないもので・・・。


加奈子ね、ちょっとイライラしてきますよね?やっぱし(笑)。
たぶん、加奈子自身にも何がしたいのかわからないんだと思います。
プライドを傷つけられたような気がしてこだわっているのと、ただの八つ当たりと、
やっぱり・・・陽という人物に魅せられてしまったのかもしれませんね。

二人をいとおしいと思っていただけて、本当に嬉しいです。
実はストーリーはどうでもよくて(ぉぃ)、この二人をずっと旅させておきたいだけの小説なので。
2010/09/10 【秋沙 】 URL #- 

* ポールさんへ♪

なるほど、気合とハッタリですね?φ(.. )メモメモ
(笑)

いやぁ、ありがとうございます、加奈子を逃がした理由をきっちりとミステリー小説っぽくまとめていただきまして。
よし、そういうことにしておこう(笑)。

・・・でもね、実はね、坂木にはべつの感情もちょっとあるんです。
最終回までにそこまで私の下手な文章が表現し切れているかどうか甚だ疑問ではありますが・・・。

2010/09/10 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

*

蘭さんのコメントにもありましたが、私もここで陽と坂木に会えてうれしいです。
もう、二度と続編は書かないと決めたので、あとは秋沙さんに生かしてもらうだけです。
(なんちゃって、ごめんね、押しつけて)

10話、ちょっと加奈子になった気分でドキドキしちゃいました。
私もね、きっと加奈子だったら、ウロウロしますよ。二人のそばを。ストーカーで捕まりますね。 (^^ゞ

2010/09/10 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* limeさんへ♪

私も好きになると猪突猛進、一歩間違えるとストーカーになってしまいそうなタイプなので(^^;
加奈子がこの行動をとったのは、なんとなくわかる気がしちゃうんです。
そのあたりが、読者様たちにどう映るのか、ちょっと心配だったんですが・・・。


二人にはずっと旅を続けていてもらいたくて、こうして書かせていただいてますが、
あの結末があると知っているからこそかける言葉も多くって・・・
複雑です(^^;
2010/09/12 【秋沙 】 URL #- 

* そっか…

ペンダント探してたんですね…。

私はまた何か仕事でエライことになってるのかと思ってました。

今はとにかく、坂木さんと陽君を、少しでも長く見ていたいという気持ちです。

加奈子さんもね^^

(あ、骨董屋今日も更新してます)
2011/12/02 【有村司】 URL #- 

* 有村さんへ♪

そうなんです、ペンダントを・・・(ToT)

有村さんはもう、limeさんの「渇望」をお読みになりましたよね・・・?
私がこのお話を書き始めたのは、あれを読んだ直後だったんじゃないかと思います(ちょっと記憶があやふやですが)
陽の生い立ちを知って、ショックが大きくて。
だからどうしても、ペンダントを重要なファクターにしたかったんですね・・・。

もう、なんだか、読者様には私の書く陽と坂木では申し訳ない感じですが、私が二人とずっと関わっていたいからいいの(*^_^*)


骨董屋!!
先程携帯からこのコメントを見て、待ちきれずに携帯で読んじゃいました!
コメントを書く時間がなかったので拍手だけぽちして返ってきちゃいましたが、後ほどもう一度じっくりと拝読してコメントもします~~。

ありがとう有村さん!!(^O^)
2011/12/02 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://akisadoor.blog118.fc2.com/tb.php/39-158556a6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。