もうひとつの「DOOR」

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□ 旅路 □

旅路 (12)

 街へ出て軽く夕食を済ませた加奈子は、ホテルの部屋に戻った。
 
一息ついて、ふと、この何日かテレビも新聞も見ていなかったことに気付いた。
テレビのスイッチを入れて、どこかニュースをやっているところが無いかと、チャンネルを回す。
急激に世の中の動きから自分が取り残されているような気分になっていた。

ちょうどニュースをやっている局をみつけた。「今度は秘書が転落死」とタイトルが出ている。
画面に集中しようとしたその時、携帯電話のベルが鳴った。
仕方なく、またテレビを消してバッグから携帯を取り出す。

相手は、会社の後輩の若菜だった。

一瞬、出るのをためらったが、思い切って通話ボタンを押し明るい声で「もしもし?」と電話に出た。

「あ・・・センパイ・・・?」
「は~い、どうしたの?若菜」

遠慮がちな声を出していた若菜が、突然堰を切ったようにしゃべりはじめた。

「センパイ!どうしたんですか?ずっとお休みで・・・わたし・・・心配で・・・。
 具合悪いんですか? 今、家ですか?」

ほんの少し、加奈子の頭の中に「本当に心配したの?」という意地悪い気持ちがよぎったが、
「大丈夫よ、ごめんね、心配かけて。」となるべく明るく返事をした。

「あの・・・センパイ・・・怒ってます・・・よね? 私のこと。」

「え?」

「優一さんとあの子のこと・・・わたし・・・」

電話の向こうの若菜は、半べそをかいているのか声を詰まらせている。
加奈子は、心の霧が晴れるように優しい気持ちになってきていた。

「知ってたんでしょ? いいわよ。もう気にしてない。」

「ごめんなさい・・・私・・・どうしていいかわからなくて・・・。
 でも、私はセンパイのこと応援してたんです、ホントです! 嘘だと思われても仕方ないけど・・・。
 彼女には『あきらめたほうがいい』って言ってたんです。
 だけど・・・いつのまにか優一さんが・・・。」
 
「もういいって、本当に。仕方ないわよ。」

「優一さんも心配していました。加奈子センパイがあれからずっとお休みだから。
 『まさかとは思うけど・・・』って。でも、自分から連絡するわけにはいかないからって。」
 
「そうなの・・・」

優一らしい優しさかもしれない。それで若菜に連絡をするように頼んだのかしら。
残酷な優しさ。

でもそんなことを聞いても、もう加奈子の心は揺らがなかった。そのことに自分でも少し驚いた。

「若菜、心配かけてごめんね。そりゃぁ最初はショックだったけど、もう大丈夫よ。
 ちょっとね。ついでだから旅行したりしてたの。あ、会社には体調不良って言ってあるから旅行はナイショよ?大丈夫。来週には出勤するわよ。」
 
「ホントですか~? 良かったぁ。」

もうケロっと明るい声を出す若菜に少々呆れながらも、まぁこの子はこれがいいところだから、とも思えた。

仕事の様子などを少し聞いて電話を切ると、すっかり吹っ切れている自分にちょっと可笑しささえ感じた。

「そろそろ、戻らなくちゃね。」

なんとなく、じっとしているのがもったいないような気がして立ち上がったとき、昼間の陽の言葉を思い出した。
『その人はきっと、今夜もバーでのんだくれているかもしれないね』

バーに行ってみよう・・・。加奈子は部屋を出た。




 薄暗いバーのカウンターの一番端の席に、ヒゲの男が背中を少し丸めて座っていた。
一人のようだ。

不思議に、加奈子はその背中をみつけて、思わず笑みがこぼれた。
隣に座って「こんばんは」と声をかける。

坂木は驚きも振り向きもせず、「あぁ」と小声で答えた。

「陽さんは・・・? もう眠っているのかしら。」

「知らん」

「え?」

「俺が部屋にいると一緒になって起きてやがるからな。ここにも一緒に来ようとしたが、病み上がりなんだからやめておけと言って置いてきた。」

加奈子は、二人のやりとりを想像して思わず吹き出してしまった。

「なにがおかしい」

「だって・・・なんだか坂木さんって、陽さんには弱いんですね。いろいろ言う割には振り回されてるって言うか・・・やだ、ごめんなさい」

加奈子がこらえきれずにくすくすと笑いながら言うと、坂木はむっとした顔をしたが、内心そんなに嫌ではなさそうな顔をしている。

なんだか、今なら素直にこの人と話ができそうだ・・・加奈子はそんな気がしてきていた。

「あの・・・私、陽さんの前であんなこと・・・。本当に申し訳なかったと思ってます。
 しかも、自分勝手で独りよがりな理由で。恥ずかしいことをしました。」
 
「あいつがたまたま、近くにいたことに感謝するんだな。」

「えぇ・・・本当に。そうですね。あぁいう人がいてくれて良かった。ちょっと不思議な人だけど・・・。
 坂木さんは、子供の頃からの陽さんを知ってるんですか?」
 
坂木は答えない。

「陽さん・・・お母様を亡くしてからはどうしてたんですか?」

「・・・ある施設で育った。そこを出てからは一緒に仕事をしている。」

「そうなんですか・・・。ずっとお二人で旅を?」

「旅っていうほど悠長なもんじゃないがな。まぁ仕事柄一箇所には落ち着いていられない。」

「坂木さん、ご家族は・・・?」

少し間があってから、坂木は「いない」と答えた。

「てっきり奥様がいるかと思ってました。恋愛についてのお言葉、かなり効きましたよ。」
ちょっと皮肉をこめて加奈子は笑いながら言った。

坂木は、紫煙を吐きながら答えた。

「そんなに経験もないし結婚なんかしたこともないから、あんなことが言えるんだ。あんただってそう思ったんだろ?」

「え? あぁ・・まぁ確かに。」
ふふふ、と加奈子が笑うと、坂木もちょっと苦笑いをした。

「正直、かなりこたえました。坂木さんに言われたこと。
 確かに・・・くだらない恋愛だったかもしれない。都合のいい相手を選んだだけかもしれない。
 でも、それなりに真剣で一生懸命でした。
 確かに、結果はこうなってしまったし、自分に本当に合う相手では無かったのかもしれない。
 だけど、優一を好きだったことも、そのおかげで仕事も頑張ってやれたってことも、後悔したくない。
 いい恋愛、いい経験をしたって思うことにしました。」
 
黙って酒を飲んでいた坂木が、静かに答えた。

「・・・それで、いいんじゃないか?
 あんたが『いい恋愛だった』と思えば、それはいい恋愛だったんだろう。
 そのせいで死んじまったらそこまでで、あんたにとっても、相手にとってもいい思い出は一つも残らないからな。」
 
「そうですね。ちっぽけな世界で、ちっぽけな悩みで死のうとしたんだなって。」

「・・・あんた、家族は?」

「え・・・? あ、はい、九州の実家に母がいます。父は私が学生の時に亡くなって。
 父が遺してくれたお金が少しはあったので、私も弟も大学を出ることができたんですけどね。
 今は弟がお嫁さんをもらって、母と一緒に暮らしてます。
 もうずいぶん帰ってないな。母は、私の顔を見るたびに結婚をすすめるばかりなんで、なんだか帰りづらくて。」
 
「そうか、それならなおさら、あんなことで死ななくてよかったじゃないか。」

「・・・そうですね・・・。」

それからしばらく、二人は黙って前をみつめたまま、酒を口にしていた。


「坂木さんと陽さんって、なんだか家族みたいですね。」

「あぁ?」

「家族っていうか、夫婦っていうか・・・あ、ごめんなさい。変な意味じゃないですよ?」

「あたりまえだっ」
心なしか、坂木が赤くなったように見えて、加奈子は可笑しさがこみ上げた。

「なんだか・・・ちょっと羨ましいくらいでした。夕べの陽さんを気遣っている坂木さん・・・」

坂木は煙草に火をつけようとしたが、なかなかライターに火がつかなくてあせっているように見える。
 
「私も、あんなふうに支えあって信頼しあえる人に、めぐり合いたいな。
 優しいだけじゃなくて・・・叱ったり激励してくれたり・・・でも時々は話もきいてくれて・・・
 べつに、返事なんかしてもらえなくてもいいんです。
 ・・・こんなふうに、お酒を飲みながら黙って聞いてもらえるだけで・・・」
 
言ってしまってから加奈子はハッとした。

坂木も落ち着かない様子でグラスの酒を飲み干した。

「そろそろ閉店だな。俺は戻るぞ。」

「あ・・はい。そうですね。私ももう寝ることにします。おやすみなさい。」

「あぁ」

そそくさとバーを出て行く坂木を、加奈子はカウンター席から見送った。
少し寂しい気持ちもあったが、何か温かいものが心の中に広がっていた。



・・・・エピローグへつづく

え~~~~~、
何度も言いますが、このお話はサスペンスでもハードボイルドでも、ましてや推理小説ではありません(^^;

本編とはちょっと違う陽と坂木の姿を・・・



もうええわ!
・・・という皆様の声が聞こえまする。

はい、次回、最終回でございます。

もうちょっと、おつきあいくださいませ♪





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Date:2010/09/16
Trackback:0
Comment:8
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

* こんにちは^^

この回を読んで、やっと私の中で加奈子に「色」が付いたように思えましたi-228
二人の会話が本当に優しく、「生きてる」事を実感させるような本当にステキな空間。
ホッとするような、安心するような・・・・・

でも、今回の坂木との会話で、加奈子に「前向き」な部分が戻って来て、そして加奈子らしさを取り戻せた感じがすると思えるのは私だけではないはず。

エンディング、凄く楽しみになりましたよ~~e-343
2010/09/17 【】 URL #9dnUgMTg [編集] 

*

確かに・・・・・・。笑。
ミステリーでもハードボイルドでも推理小説でもない。
スピンオフだし。ありでしょ。

これだけでも独立したお話になっていて面白いです。
2010/09/18 【ヒロハル】 URL #- 

* 蘭さんへ♪

蘭さ~~~~ん

このコメントをいただいて、なんだか救われたような気持ちになりましたよぉぉぉ。

書いてるときも、こうして掲載している間も、
ず~っと加奈子さんのキャラがこれでよかったのか、って自信が持てなかったんですぅ。
性格については、まぁ、ちょっと極端ではあるけれど、まぁよくいる人物像かなとは思っていたんですが、なんせ行動がねぇ・・・「そこまでするか?」ってな感じでしょ?
そしてこの変わりようですから・・・(^^;

こんなふうに感じていただける方がいてよかったぁ。
蘭さん、本当にありがとう!

この会話で、加奈子さんの心がどう動いていくのか、エピローグをお楽しみに・・・。



2010/09/18 【秋沙 】 URL #- 

* ヒロハルさんへ♪

そうですよね、「スピンオフ」ですから(笑)。

なんでしょうね、無理やりに分類するならば、「恋愛小説」なのかもしれません(^^;
2010/09/18 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

*

一度読んでいつんだけど、また読み返しながら、坂木の可愛らしさに思わず顔がにんまり。
加奈子と坂木の会話って、めちゃくちゃ私のつぼなんです。坂木をやりこめてしまう感じがたまらない。

加奈子は、勘違いされやすいけど、自分に正直な人なんですよね。だから自分勝手に見えてしまうけど。(うん、居るよね、そんな子)でも、うらやましいタイプ。こうやって思い切って行動できただ、ちょっと大胆な恋愛だって出来るよな~って。大胆に失敗もしそうだけど・笑
とにかく、この12話は、加奈子グッジョブでした!
(蘭さんのコメント、私もうれしまったです~)

ああ、もう次回でおわり?寂しい・・・・(T^T)
もっと会話が聞きたかったなあ。
でもきっとまた、秋沙さんが書いてくれることを夢見て。最終話も楽しみにしてます!
2010/09/19 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* limeさんへ♪

limeさん・・・?どうしました?誤字が多いようですが・・・(笑)。
お忙しかったか、眠かったかかしら・・・?
どちらにしてもコメントありがとうございます(^^)

坂木がこんなふうにやり込められてしまうのは、きっと陽と加奈子だけでしょうね。
ふふふ。

やっぱり加奈子は、どこか私に似ているんだなぁとあらためて思いましたよ。
大胆に失敗、何度したことか(笑)。
2010/09/20 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* ああ、すごく良かったです!

これ、この味が秋沙さんだ! とまだそんなによく知らないのに、fateは知ったかぶりでガッツポーズです!
ものすごく綺麗な世界でした。
まさに旅路!
彷徨える三つの魂の心の旅!
偶然、しかもある意味最悪の出会いをした三人がそれぞれに辿る心模様。それが揺れながら、さざめき合いながら、水面の木の葉がついと寄ったり離れたりするような軌跡を描きながら、ふらふらと心もとなく漂う。
そして、最後に描いた縁(円)が、虹を渡すようにそっと架かって終わる。
その中核となっているのが、やはり、秋沙さんの『恋愛論』です。
これは、そういう恋と旅情を綴った秀作だと思います。
この時点で、むしろ、二人の仕事が分からないことが世界をモノトーンで彩って、読者をどこかドキドキしたままの安らかさを保っています。

そして、また別な視点での今後を暗示させる。

とても、素晴らしかったです(^^)

ゆない。さんもお風邪を召されたようですし、どうか安静に、お大事になさってください!
バカは風邪ひかないそうですので、fateは大丈夫! と断言出来るのが、何気に悔しい…(^^;

2011/11/11 【fate】 URL #- 

* fateさんへ♪

あれ?もう最終話までお読みになったのかと・・・(^^;

いや、もうこの段階でそんなふうに言っていただけちゃうと、最終話は蛇足のような気がしますが(笑)
嬉しいです~~(ToT)
ただただ、坂木と陽を自分でも書いてみたい!というだけでスピンオフを書かせてもらっちゃっていて、自分らしさとか私の描きたい世界とか、そんなの全然考えちゃいなかったんですよ。

fateさんから感想をいただいて、もう一度「旅路」を読み返してみて、あぁこれは恋愛小説だったんだなぁと自分で今更思ったりして(^^;

もう「恋愛」なんて忘れちゃってるはずなのに、ね(^^)

ありがとう、風邪はどうにか大丈夫そうです!
バカは風邪ひかない・・・?
いや、それ、どうなんだろ。このあたしが、しょっちゅう風邪ひいてるし(^^;
2011/11/12 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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