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【ブックレビュー】 怖い本3 「ぼっけえ、きょうてえ」

 この本は・・・
レビューを書こうとしながらも、あまり人に強くオススメしたいという感じではありません(^^;

ものすごく、好き嫌いがあると思います。

まず、日本の古い因習にまつわる、どろどろとしたお話などが苦手な方にはおすすめしません。
それから、お話に入り込んで鬱になりがちな方にも・・・。

著者の岩井志麻子、一時期よくテレビなどにも出演していましたね。
ずばっと斬るような毒舌や、下ネタもさらりと言ってしまうキャラが受けたんでしょう。
そういう女性、キライではないんですが・・・。

小説も凄まじいです(^^;

実際、この私、わりと最近になってからもう一冊この著者の本を読んでみたのですが、あまりの凄まじさに途中で気分が悪くなり、やめてしまったという・・・(^^;
(どう気分が悪くなったかは、後述)

「ぼっけえ、きょうてえ」 著:岩井志麻子  角川ホラー文庫

―-教えたら旦那さんほんまに寝られんようになる。…この先ずっとな。
時は明治。岡山の遊郭で醜い女郎が寝つかれぬ客にぽつり、ぽつりと語り始めた身の上話。
残酷で孤独な彼女の人生には、ある秘密が隠されていた…。
岡山地方の方言で「とても、怖い」という意の表題作ほか三篇。
文学界に新境地を切り拓き、日本ホラー小説大賞、山本周五郎賞を受賞した怪奇文学の新古典。
 (BOOKデータベースより)



もうねぇ、何がきょうてえかって、4篇全てのお話全体に漂う、淫靡で湿った感じの人間の愛憎やら欲望やら失望やら怨念の類。
真に恐ろしいのは、人間の情念そのもの。
全ての怪奇現象は人間が作り出したもの。救いの無い、日本人であるならその血の中にはこういった暗い因習がまだ息づいているのかもしれない・・・と思わされてしまう。

表題作の「ぼっけえ、きょうてえ」で、女郎が語る、あまりに無残で救いの無い身の上話。
でもそれを受け入れてなお生き抜いていく女郎の姿に、思わず肌が粟立つほど。


でも、私がこの本で一番考えさせられて今なお引きずっているのが、
「あまぞわい」というお話。

(ちょっとネタバレです。しかも長いです)(^^;

舞台は瀬戸内海に浮かぶ小さな島。
男は海に漁に出て、女たちはその帰りを待ちながら海草や貝を拾い、男たちが持ち帰る魚を捌きながら暮らしている、島全体が閉鎖的な集落のようなところ。
物語は、錦蔵という男の子が、爺ちゃんから「あまぞわい」の古い言い伝えを聞かされるところから始まります。

「そわい」というのは海沿いの岩場にあって、潮が満ちれば海に沈み、引き潮のときだけ顔を出す洞穴のようなところ。
この島には「あまぞわい」という「そわい」がある。
この「あま」には二通りの言い伝えがあり、「海女」と「尼」らしいのだが、錦蔵は「海女」のほうの話を聞かされる。

昔、この島の漁師にかなりの乱暴物の男がいて、いつも懐には魚を捌くためと言いつつ仲間を脅すのにも使うために刃物を持っていたが、嵐の中で漁をしていて海にその刃物を落としてしまった。
海に金物を落とすと海神様の怒りに触れると言われているが、嵐で船が引っ繰り返りそうになりどうすることもできなかった。
しかし、その日から海は荒れ、そわいからは錆びた鉄のような匂いがたちのぼり、魚も貝も海草も腐ってまったく獲れなくなってしまう。
飢えた村人たちは、その男が金物を海に落としたせいだと噂し合い、今にも男を責め殺そうかと殺気立ってくるが、男はなぜか足腰も立たないような病になってしまう。

その時、海女(海に潜って貝を獲る海女ですね)であるその男の女房が村人たちを、「わたしがその刃物をみつけてきます」と怒鳴りつけ、一人沖へと漕ぎ出し海に潜り、そのまま帰らなくなってしまう。
しかし、その後なぜか男の落とした刃物が「そわい」に流れ着き、ぴたりと時化がやんで魚も獲れるようになった。
だが、それ以来その「そわい」からは夜毎に女のすすり泣く声が聞こえてくる。
それは、あの「海女」が、婿を恋しがって泣く声だという・・・。

爺ちゃんは言います。
『のう、キン坊よ。女いうもんは、どねぇなろくでなしの男でも、いったん添うたら恋しゅうて恋しゅうてかなわんのじゃ。女は惚れた男のためなら何でもするんじゃ。身を捨てても尽くすし、死んだ後も慕って泣き続ける。可愛いもんじゃろ。』

この錦蔵が大人になり、岡山の町で酌婦をしているユミにほれ込み、自分の船を売ってまで身請けの金を払って島へ連れ帰って嫁にする。
この、「ユミ」が実はこのお話の主人公。
そこからはユミの目線でお話が進んでいきます。

酌婦をしていたときには、そこそこ贔屓にしてくれる客もついていたユミだったが、そろそろ三十路の声も聞こえ、誰かの嫁になることを夢見ていなかったわけではない。
始めは粗忽で田舎物の錦蔵を敬遠していたが、あるとき寝物語に何気なく錦蔵が語った「あまぞわい」の言い伝えが、自分が子供の頃に婆ちゃんから聞いた話によく似ていることに不思議な感動を覚えて、島に行く決心をした。

しかし、町育ちというだけで、島の女たちからはよそ者扱いされ、網も引けなければ魚もまともに捌くことができないユミに、あっという間に錦蔵も熱が冷めて、暴力を振るったり罵声を浴びせるようになる。

絶望的な気持ちになり、錦蔵に「女は一度添うたら男に尽くし通す」などと教えた錦蔵の祖父に憎しみを覚え、あの言い伝えの海女は、馬鹿な亭主を恨んで泣いているに違いない、と投げやりになっているときに、島でただ一人、足が不自由で漁師になれず、教員をやっている恵二郎という男と言葉を交わし、亭主が世話になっている網元の息子であるその恵二郎と、あっという間に逢引をする仲になるが・・・。

ハッキリ言ってしまうと、その後どうなったか、というストーリーはもう、私にとってはおまけみたいなもんで(笑)。

途中に、ユミが婆ちゃんから聞いた「尼ぞわい」の言い伝えが語られます。

昔、岡山の尼寺にそれは美しい尼僧がいて、男たちは経を聞くのではなく尼の顔を拝みに集まってくるほど。
その中に、この島の漁師がいたのだが、漁師はどうしてもその尼が恋しくて、ほとんど力ずくで島へ連れ帰り自分の女房にしてしまう。

始めのうちこそ、下へも置かないほど大切にしていた男だが、経をあげることしかできず、貝を採ることも魚を捌くこともできない女房に、次第に不満が募っていき、夢から醒めたように気持ちも冷めてしまう。
男は、さっさとまた岡山の町に情婦を作り、やがてそれが尼だった女房に知れて責めたてられる。
どうにも女房が疎ましくなった男は、尼さんを騙して海に連れ出し、そわいに置き去りにしてしまう。
泳ぐこともできない尼さんだから、潮が満ちればあっという間に溺れ死んでしまった。

それ以来、そのそわいからは、夜毎に女のすすり泣く声が聞こえるという・・・。

婆ちゃんは言います。
『なあ、ユミ。男いうもんは、どねぇに惚れぬいた女でも、いったん飽きたら本当に無慈悲に捨ててしまうんじゃで、男は飽きた女やこ、海の藻屑にしてもかまわんのじゃ。』
『今も泣き続けとるなんぞ、考えたらたまらんな。恨んで泣いとるんじゃろうなぁ。そう思やぁ、男を慕って泣いとるという「海女ぞわい」の話のほうが救われるか。』


・・・どうです?
この二つの言い伝え。

男と女の間にある深淵を見てしまったようで、ぞっとしませんか?(^^;

でもね、私が本当に「きょうてえ」と思ってしまったのは、その後の婆ちゃんの言葉でした。

『あまぞわいは今も女の泣き声がするんじゃて。男を慕って泣いとんか、男を恨んで泣いとんか。
案外、海女のほうが男を恨んどって、尼の方が男を恋しがっとるかもしれんぞ。
・・・・・そういうもんじゃ。』


さぁ、あなたはどう思いますか?(笑)
そして、あなたはどれに近いでしょうか。
男に尽くして死んでなお、男を恋しがって泣くのか。
男に尽くして死んで、男を恨んで泣くのか。
男に捨てられて殺され、男を恨んで泣くのか。
男に騙されて殺されてなお、男を恋しがって泣くのか。

・・・・あぁぁ、ぼっけえきょうてえ。

男性諸氏、女が怖くなりましたか・・・・?(^^;


こんなふうに、岩井志麻子の小説、女の情念がびしばし来ます。
たくさん読んだわけではないのに、そんなふうに言っていいのかわかりませんが。

前のほうに書いた、「気分が悪くなってしまった」という小説。
それもやはり女の情念でした。
静かで、でも内面からじわじわと女の精神を蝕んでいく恋しい男への愛憎。

なんというか。。。
エグいから気持ち悪い、とかそういうのではないんです。
お腹や胃が気持ち悪くなったり痛くなったりするのではなく、子宮に響く感じがしちゃうんです。
自分の中の「女」に、あまりにも直接的に訴えてくる感じがして、怖くて読み進められなくなっちゃいました。

でも、ここまで「女」でありながら「女」の中にあるどうしようもない本能的などろどろした部分を書いてしまう岩井志麻子・・・天晴れ!と思ってしまったりもするのです。



最後まで読んでくださった方、ありがとう。
気分悪くなりませんでしたか?ごめんなさい。

なんか、ただでさえ少ない読者が、もっと減りそうな気がする(^^;





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Date:2010/10/28
Trackback:0
Comment:3
Thema:読んだ本。
Janre:本・雑誌

Comment

*

小説は「ぼっけえ、きょうてえ」一篇しか読んでいませんが、「あれ」をネタにした話としては本邦一どころか世界一の短編小説だと思います。で、この作品だけ読んで、「わたし向きの作家ではない」と判断して、以降は読んでいません。賢明な判断だったと思います(おい)

むしろ、岩井氏といえば、わたしとしては爆笑エッセイを書いたり対談をする人、としてのイメージのほうが強かったり(笑)

日本を舞台としたホラー小説がお好きなようですが、個人的には坂東眞砂子氏とか半村良先生のほうが好きです。特に、半村先生の「能登怪異譚」中の短編「箪笥」は日本を舞台としたホラー小説のマイフェイバリットです(^^)
ほかにも、実は本格SFで有名な小松左京先生もけっこうホラーを書いているのでお読みになられてはいかがでしょうか? 「石」「骨」「すぐそこ」が小松先生のマイフェイバリットなんですが……。
2010/10/29 【ポール・ブリッツ】 URL #0MyT0dLg [編集] 

*

岩井志麻子。
あの、怖そうな人ですね・笑
そしてこの表紙。
日本の風習、因習的な怖い話が苦手は私は手に取らないだろうと思われる本です。
だから、秋沙さんのレビューで、体験出来て得した気分。
・・・やっぱりレビューだけで怖い((((;゚Д゚))))
私もわりと怖い系の小池真理子や坂東眞砂子は読みつくしましたが、それとはまた違う、精神をえぐるような怖さですね。
小池真理子に関しては、9割がた読みつくしましたが、これまた精神的にやられる怖さです。
でも、残り1割が愛憎にまみれたほぼ官能小説なので、そうなると興味を失いました。(男と女のエロいドロドロは苦手です)

やっぱり爽やかに恋したい(´Д`。)

私は上のどのタイプでもないですね、きっと。
恋して、冷めて、じゃあ、元気でね・・・って感じでしょうか。
秋沙さんは???
2010/10/30 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* ポールさん・limeさんへ♪

まとめてレスですみません(^^;

お二方とも、坂東眞砂子お好きなんですね!!
私も大好きで、何冊か読んでおります。
レビューも書きたいなと思ってましたが、どれか一冊を選ぶことができず、また「怖い本」に括っていいものかわからず後回しにしております。

岩井氏の爆笑エッセイ、読んでみたいかも。

私、日本の古代史が好きなので、その流れでこういう因習的な話を好んでしまうんですよね。
だけど、岩井志麻子は、それだけじゃなくて男と女のドロドロが強烈ですからね(^^;
やっぱり好き嫌いがありますね。

半村良や小松左京(ホラーがあるとは意外でした)は、まだ読んだことがないので、ぜひ挑戦してみようと思います!

あ、小池真理子は・・・たまたま読んだ一冊(もうタイトル忘れちゃったけど)が、あまり後味が良くなくってそれから読んでません・・・(^。^;)

確かに、limeさんにエロいドロドロの恋愛は似合わないかも(笑)。
私はわりと、ドロドロですよ~~~?(ё_ё)
今だから客観的に見れますが、昔のあたしは、捨てられてなお恋しくて泣く女になりがちだったかも~。
今はたぶん、殺される前に殺しちゃいますが(^^;
2010/11/01 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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