もうひとつの「DOOR」

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□ くちなしの墓 第一部 □

濃緑の葉 5

 「あの・・・あのね、壮ちゃん。私・・・。」
 
小夜子は、赤い鳥居の前でもじもじとしていた。

「なんだ?」
壮太は立ち止まって何気なく聞き返したが、小夜子が言わんとしている事はわかっていた。

「うん、あの・・・私、梶田君と・・・。」

まだ言い出しかねている小夜子に、壮太のほうからぶっきらぼうに言った。

「付き合ってるんだろ?」

「え? ・・・あ、うん。そうなの。」

小夜子は一瞬、ぽかんと口を開けて驚いていたが、すぐに素直にうなずいた。

「聞いてたの? 梶田君から。」

「いや・・・。ただ、夏休み前に『付き合いたいと思っている』とは聞かされてた。」

「そうだったんだ・・・。」

ホッとしたのか、小夜子の表情はみるみる明るくなってきた。
すぐにいつもの歩調で歩き出して壮太に追いついてくると、自分の家の方向へと歩き出した。
壮太も合わせて歩く。

「べつにね、付き合ってると言っても今は梶田君、勉強もラグビーも忙しいし、二人で会う事もあんまりないんだけどね。」

「そうか。」

「梶田君、学校でもすごい人気あるだろうし、あんまり周りに知られちゃったら怖いな、なんて思っちゃうんだけど・・・。」

「そうか。」

「ただ・・・なんとなく・・・。なんとなく壮ちゃんには知っててほしいな、って。
 梶田君も、壮ちゃんの事は本当に親友だと思っているみたいだし。」

「そうか。」

壮太はただぼんやりと、急に饒舌になった小夜子に相槌を打っていた。
その横顔は、今まで壮太が見たことの無いほど、恥じらいと幸福な高揚とで輝いている。

「俺も梶田と、このところロクに話ができないからな。」

「うん・・・そうだよね。壮ちゃん、梶田君と同じ大学の推薦取るんでしょ?」

「取れれば、の話だけどな。」

「取れるよ、きっと。二人のコンビネーションは抜群だもん。大学だって二人一緒にほしいと思うよ。」

「コンビネーション? 梶田ばっかり見てたんじゃないのか? 試合のとき。」

壮太がからかい口調で言うと、小夜子はぱっと頬を赤らめた。

「もう! そんなこと言って。」

「はいはい。俺のこともついでに見てくれてありがとうよ。」

「壮ちゃん!」


小夜子が自宅の玄関に入っていくのを見届けてから、壮太は自転車にまたがってもと来た道を漕ぎ始めた。

「良かったじゃないか。」

小さく口に出して言ってみる。
あの二人ならいい組み合わせだ。
壮太は心からそう思っていた。
妹と親友が仲良くなった、そんな感覚だろうか。

ただ、赤い鳥居の前を通り過ぎるとき、すっかり暗くなった祠の回りにクチナシの白い花が浮かぶように咲いているのを見たときだけ、なぜか胸が少し痛んだ。

雨上がりの空気の中に、その甘い香りがどこまでも漂っているような気がした。



◇       ◇       ◇        ◇

      
      
      
 坂木は、本部の建物が大嫌いだ。

コンクリート打ち放しの内装は、重い気分を更に暗くさせる。
まるで監獄だ、と坂木はいつも思う。

夕べの雨は上がっていたが空は相変わらずどんよりとしていて、蒸し暑かった。
黒雲の隙間に、奇妙に赤い夕焼けが光るくらいの時間になってから、ようやく坂木は本部に到着した。

さっさと用事を済ませてこの場所から離れたい坂木は、まっすぐに辰巳のオフィスに向かい、ノックもせずにドアを開けた。

いかにも幹部の部屋らしい大きなデスクの向こう側で、深々と黒い革張りの回転椅子に座っていた辰巳が、
「お早いご出勤じゃないか。」と皮肉を言った。
しかし、その表情は旧友に会ったかのようにどこか楽しげだ。

「俺をからかうためにわざわざ呼びつけたのか。」

坂木は、後ろ手にドアを閉めて、腕組みをしながらそのドアに背をあずけて立った。

「まぁ、そうカリカリするな。座れよ。」

辰巳は相変わらずニヤニヤと笑いながら立ち上がると、デスクの前の応接セットのほうへ出てきた。

坂木が初めて出会ったときと比べるとだいぶ髪に白い物が混じってきた辰巳だが、逞しい身体を黒っぽい上質なスーツに包んだ姿は、相変わらず威圧感がある。

しかし坂木は、そこから動こうとはせずに上目遣いに辰巳を睨みながら訊いた。

「なんで陽に第二支部の仕事なんかまわした? 俺になんの断りも無しに。」

「陽はお前のパートナーではあるが、所有物じゃぁ無いぞ。
 まぁ心配するな。難しい仕事では無いからな。」
 
「だったらなおさら、他の奴でもいいじゃないか。」

「危険は少ないが、セキュリティーの解除に少々厄介なところがあってな。
 その点では、誰よりもお前さんのパートナーが適役だったって事だ。」
 
「ふん。本部の教育が足りないんじゃないのか。人材不足ってのは。」

「陽がその分野ではずばぬけて天才的だってことだよ。」

坂木がドアのところから動こうとしないので、ソファーに一人で座っていた辰巳ももう一度立ち上がり、窓へ歩み寄ってブラインドの羽根の角度を変えた。

西の空の黒雲から、赤い太陽の残光が射しているのが見える。

「それなら、俺まで呼びつける必要は無かったろうが。」

「まぁそう言うな。たまにはお前さんと酒でも飲むのもいいかと思ってな。
 ・・・陽がなぁ、ま、これは陽には口止めされてたんだがな。
 お前さんがどうも梅雨時になると様子がおかしくなると言って心配してるんだよ。」
 
「あぁ?」

「あれから何年になる。」

「・・・・。」

「お前さん、まだ小夜子のことを・・・。」

「思い出話をするつもりなら、俺は帰るぞ。」

辰巳の言葉をさえぎって、坂木はドアノブに手をかけようとした。

「おいおい。もうその態度が引きずってるって証拠じゃないか。
 お前さんはこの場所が嫌いなんだろ?
 わかってるよ。どこか外に出よう。」
 
あっという間にドアのところまで来た辰巳は、さっさと坂木の横をすり抜けて部屋を出て廊下を少し行って振り向くと、
「ま、お前さんも俺もいい歳だ。たまには思い出話もいいじゃないか。」
とにんまりと笑うと、先に立って歩き出した。

「くそ。まっぴらだね。俺はそんな年寄りじゃないぞ。」
と乱暴に辰巳のオフィスのドアを閉めた坂木だったが、しぶしぶその後に続いた。



   ・・・つづく


 
 
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Date:2010/11/26
Trackback:0
Comment:10
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

* 辰巳ーーーー。

辰巳、久しぶりだねえ(T_T)
また会えてうれしいよ・・・・って、喜んでる場合じゃなくて!
えええ? 辰巳は坂木のそんな過去を知ってるんですね?
その後の事も?
うおおお。
面白い。しみじみした情景なのに、ドキドキわくわくします。
いやあ、辰巳を出すとは!やられたなあーー。
辰巳、好きに使って下さい(*^-^*)

小夜子との会話も、キュンとせつないけど可愛らしくて好きです。
かわいい子ですよね、小夜子。
壮太、いいのかい?本当に。

ああ、どっちの時代も気になります。
とくに現代のほうは、なんだか顔が緩みます。
いいですよねええ、中年の男達の会話も(*^-^*)
2010/11/26 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* No Title

そうか坂木くんはそうやってヒネていったのか……(笑)

辰巳さんにさえ出会わなければ、というやつだったんですかねえ。
2010/11/27 【ポール・ブリッツ】 URL #0MyT0dLg [編集] 

* limeさんへ♪

はい!辰巳もお借りします(^^)

やはり、坂木のお話には辰巳ははずせません。

どうも、私が書く辰巳は、limeさんのそれよりも歳が上になってしまいがちなんですが・・・
お許しいただけますか?(^^;

坂木以上に空気を読まないオヤジ丸出しな辰巳・・・今回もやってくれることでしょう(笑)


小夜子、かわいいですか?
そう言っていただけて少し安心しました・・・。
相変わらず女性のキャラの書き込みがヘタな私です。
小夜子の、さっぱりとして無邪気で、でも落ち着いた大人っぽさもあるところがうまく伝わればいいんですが・・・。

壮太、鈍いというかなんと言うか・・(^^;
とにかく、梶田がいい奴過ぎるんでしょうかね(^^;
2010/11/28 【秋沙 】 URL #- 

* ポールさんへ♪

辰巳に会わなかったら坂木はどうなっていたでしょうね・・・

それはまだまだ、先のほうで明らかになる・・・はず・・・です(^^;
2010/11/28 【秋沙 】 URL #- 

* なんか謎がいっぱいでドキドキします。

切ない展開になりそうで、いや、すでにいろいろ切ないですが、人間というもの…というより、『生命』の摂理のようなものにちょっとため息ですね。
進化論がもし本当であれば(fateは進化論には懐疑的ですが)、生命は進化を繰り返し、突然変異して環境に適したモノが生き残ってきたことを思えば、異質なモノを排除したいという根源はどうしても消えないのだろうか…などと。
子どもっていうのは、一番『生命』としては正当だから、一番、正直で生き残ることに敏感ですね。
ただ、人間が原始生物と違うのは、理性という大脳皮質を発達させた点なんだから、受け入れることや許すことを学ぶべきで、それが出来ないなら「人間やめろ!」と言いたい。
まぁ、人間かどうか分かんないfateには言われたくないだろうけど(^^;
でも、そういう残酷性、実はfateもよく描くテーマで、だけど、温かいものもあるんだよ、ということを語りつくすためには必要だったりする。
ただ、語る度に、触れる度に、人間の本性に時々どうしようもない憤りと、そして奇妙だけど、どうしようもない愛しさを感じたりして。
こういう、切ない人間ドラマを観ると、まぁ、まだ世界には救いがあるような気になります。
なんだかんだとくっちゃべりましたが、この世界観というか流れる音楽のような空気がとても好きです。
ではでは。
また来ます~
2011/10/25 【fate】 URL #- 

* fateさんへ♪

だだだ、大丈夫ですか?fateさん。
さっぱり意味がわからなくないですか!?(^^;)

本部って何?辰巳って誰?そもそも坂木と壮太って同一人物なの?とか・・・(^^;)
スピンオフだからとは言え、あまりにも不親切な書き方をしてしまった事をお詫び申し上げます・・・。

あまり深く考えずに書いている事がお恥ずかしくなるくらい、fateさん深く読んでくださって・・・m(_ _)m。
そうですね、人間のもつ残酷さというのは私もよく考えます。
人間は本来、残酷で残虐な行動を取るものなのか、それとも「性善説」を取るのか。
やっぱり「理性」なんでしょうね、人間を人間らしくするのは。だけど「理性のみ」で生きていたら、何故か人間らしさがなくなっちゃうような気もするわけで。
あれれれ、矛盾するぞ(^^;)

ま、まぁ、とにかく、こんな感じで私は全然深いことは考えずに書いておりますが、人間のダメだけど可愛い部分とか、感じながら読んでいただけるなら、こんなに嬉しいことはございません。
どーしても登場人物の関係とか背景がわかんなくなったら、無理せずlimeさんの「白昼夢」を読んでみてくださいね。(責任逃れ)(笑)。
2011/10/26 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

甘酸っぱい青春の一ページではないんだねぇ。
何か悲しみと繋がるのだろうか。

坂木の過去を辰巳が知っているということは、
もしやして組織に入るきっかけにもなるのかな。

小夜子・・・名前が寂しいのよねぇ。
気になるなぁ~
2011/11/16 【ぴゆう】 URL #- 

* ぴゆうさんへ♪

むむむむ。
ネタバレになってしまうので、あまり書けませんが・・・。
(いや、べつにサスペンスとか推理小説ではないのだから、ネタバレとか気にするのもあれですが)

確かに、「小夜子」って名前は美しいけれど、なんとなく物悲しさというか儚さがありますねぇ。
ちょっと安易に名前つけすぎたかな(^^;

甘酸っぱい初恋小説(そんなジャンル有り?)にしておいてあげても良かったんじゃないかと最近思ってしまう作者です(-"-;)
次回辺りから、だんだん悲壮感が漂ってまいりますが、なかなかお話は進みませんので、ごゆっくりよみすすめていただければ・・・(^^;
2011/11/16 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

おはようございます。

やっぱり「哀しいお知らせ」だった~~~!!!
壮太!!小夜子は自分にとって「妹なんかじゃない」と何故気づかないの~~~!?

そして辰巳さん!お久しぶりです!^^
2011/12/15 【有村司】 URL #- 

* 有村さんへ♪

壮太、鈍いですよね~~~(^^;
小夜子は、妹みたいなもの、でありながら、壮太にとっては「マドンナ」なのかもしれないですね。
今まで見てきたツッパリねぇちゃん達とはあまりにも異質で美しくて。だから「女」とは思えない。
可哀想な坂木・・・(^^;


辰已が登場致しました~!
有村さんとはすでに、カラオケ仲間の辰已(笑)。
これから辰已が暴れて・・・いや、活躍してくれますので楽しんで読んであげてください(^^)
2011/12/15 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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