もうひとつの「DOOR」

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□ くちなしの墓 第一部 □

濃緑の葉 6

 ラグビーと勉強とに追われるように月日は流れ、壮太と梶田はめでたく同じ大学に入学することができた。
 
優勝とまではいかないまでも、全国大学ラグビー対抗戦では常連の名門校だ。

しかし、そこまでのチームとなると、高校のラグビー部では花形だった二人も上には上がいることを思い知らされる。

ますます二人は、練習にのめりこみ、そして段々に頭角を現していった。

壮太の進学を心底喜んでいた祖母は、最近では膝の神経痛がひどくなって、立ち歩くのがかなりしんどそうな日が増えた。体力的にも、だいぶ弱っているようだ。
しかし、近所の人たちがいろいろと面倒を見てくれて、それほど不便はしていないようだった。
今では近所の大人たちも、すっかり昔のワルだった壮太を忘れたかのようだ。

梶田と小夜子の仲も順調らしい。
高校を出てすぐに事務員として働きに出た小夜子は、仕事帰りによく壮太の祖母を訪ねて来て夕飯の手伝いをしてくれることもあり、練習帰りに壮太の家に寄った梶田と会うことも多かった。

「俺の家でデイトかよ」
と、壮太はよく二人をからかった。
しかし、二人が尋ねてくることを祖母が心待ちにしている。
壮太も、4人で食卓を囲む時が密かに楽しみだった。

壮太は、祖母の身体を気遣いながらも充実した毎日を過ごしていた。
思いがけず大学にまで進学できて、ラグビーをする毎日だけでじゅうぶんだった。

一度、帰り道に梶田にふざけ半分で言ったことがある。
「お前、小夜子と付き合いながらラグビーの練習もして勉強もして、よく身体がもつなぁ。」
実際梶田は、浮ついたところが無い。
時々、ラグビー部の中に、恋人ができた途端に練習に身が入らなくなるものもいたのだが。

梶田は気持ちよく豪快に笑った。

「はははは。まぁ、小夜子はだいぶん我慢してくれてるのかもしれないけどな。」

「休みの日まで練習練習だろ。俺はそれだけで必死で、女の事なんかまで手が回らない気がするけどな。」

「相手がちゃらちゃらした女子大生なんかだったら、大変だろうな。」

梶田もふざけた口調で返す。

大学三年の春になっていた。
もうすぐ大学ラグビーの地区大会が始まる。
練習はますます過酷になっていた。

今まで気にもとめていなかったが、ふと、壮太は疑問に思って口に出してみた。
「小夜子、大学に行くにはじゅうぶんな成績取ってたんだろ?なんで進学しなかったんだ?」

「あぁ・・・おじいちゃんとおばあちゃんは進学を勧めてくれたらしいけどな。
 あいつの家・・・もともと小夜子と両親が住んでいた離れに、小夜子の両親が亡くなってからはおやじさんの弟夫婦が呼び戻されて住んでるだろ?
 ゆくゆくは、その弟があの工場を引き継ぐ事になってるそうだ。今はまだじいちゃんばあちゃんが頑張ってるけどな。
 弟夫婦は・・・あまり小夜子の存在を良く思ってないらしいんだ。
 まぁ、次男だって事で家を放り出されていたところを、長男が死んだからって呼び戻されたわけだから、弟夫婦にも複雑な心境ってのがあるんだろうな。」

「それと小夜子の進学がどう関係あるんだ?」

「小夜子は、早く自立して家を出たいらしい。」

「そうなのか・・・。」

小夜子の叔父夫婦なら、壮太も知っている。
派手好きで、見栄っ張りという印象であまり好きではない。
壮太に対する態度も明らかに冷たいので、話をしたこともほとんど無かった。

「叔父夫婦は、さっさと工場を自分の物にしたいらしい。
 小夜子は、そうなる前には家を出なくては・・・と言っていた。
 もっとも、じいちゃんばあちゃんの身体が元気なうちはいいが、弱ってきたら心配だとも言っているが。」
 
「そうか。」

梶田は、まっすぐに前を見つめて歩きながら話し続けた。

「あと2年・・・どうにか大学ラグビーで活躍して、社会人ラグビーに引き抜かれるところまで行きたいんだ。
あと2年だって本当は待ちたくない。
俺は、早く小夜子を幸せにしてやりたい。学生結婚でもいいと思っているくらいなんだがな。」

「学生結婚!?」
思わず壮太は素っ頓狂な声で聞き返していた。

「あぁ。
 まぁそれはさすがに、俺のお袋が反対するだろうけどな。」
 
苦笑する梶田の顔を、ぼんやりと壮太はみつめた。

毎日の練習だけで必死で泥まみれになっている自分に比べて、梶田はなんと高尚で、未来までみつめてしっかりと歩んでいることだろう。

口を真一文字に結んで考え込むようにしている梶田の横顔は、すっかり大人の男の逞しさを身につけていた。

いい男だ。壮太は心から思った。
小夜子は幸せになる。
そう信じて疑わなかった。


だがその確信は、それから間もなく脆くも崩れ去った。



◇       ◇       ◇        ◇



      
 辰巳に連れて行かれたのは、大衆的な居酒屋だった。
 
年齢層が高めの客たちで賑わっている。
かえってこういう場所のほうが、周りに聞かれたくない話も平気でできるものだ。

注文した冷酒が来ると、辰巳は自分と坂木の猪口に酒を注いだ。

「まぁ飲めや。」

そう言うと、辰巳は自分の猪口の酒をぐいと一口で飲み干した。
また手酌で次を注いでいる。

坂木は仏頂面をしながら、ちびりと猪口に口をつけた。

「いつまでそんなふくれっつらをしてるんだ。
 たまには俺と酒を飲むのもいいだろう。久しぶりじゃないか。
 そう言えばお前さんと初めて会ったときも、こんな居酒屋で話をしたなぁ。」
 
坂木はそれには答えずに、逆に質問をかえした。

「陽はいつ戻ってくるんだ?」

「まぁ、2~3日は準備があるだろうからな。遅くとも1週間以内には片付けてくるだろう。」

「危険はないと言ったな?」

「そりゃぁ、まるっきり安全な仕事なんかないがな。
 陽だったらそう難しくもない仕事だろう。セキュリティーの解除が主な仕事だからな。」
 
「・・・。」

「そう心配するな。お前さんのパートナーだろ。信用してやれよ。」

「俺が怒っているのはそういうことじゃない。なんで『第二支部』の仕事なんだってことだ。」

「そんな駄々っ子みたいな事を言うなよ。仕事は全国にある。
 それともなんだ? 陽と組みで第二支部の仕事にお前さんも行かせりゃぁ良かったか? 変装でもしてな。」
 
「ふん。」

「・・・ま、実のところそれもちょっと考えたんだ。
 お前さん、婆さんの墓参りもしたいんじゃないかと思ってな。
 なんて名前だったか・・・ほら、あの友達の墓も。」
 

「・・・梶田。」

坂木の胸が、刺すような痛みを感じた。

あれからすでに20年ほどの歳月が流れている。
もう思い出してもそれほど辛くはないと、坂木は思っていた。

しかし、こうして声に出して親友の名を口にすると、こんなにもまだ痛みを感じるものなのか。

「あぁそうだ。梶田君だったな。
 最後に話をしたのは、お前さんだったそうだな。」
 
「・・・あぁ。」

やめてくれ。
坂木は叫びだしそうだった。
思い出話なんてまっぴらだ。

「どんな話をしたんだ?」

坂木はそれには答えず、猪口の中のよく冷えた酒を一気に仰いだ。

喉を通る冷たい感触の後に来る胃の府まで焼かれるような感覚に、どうにか坂木の感情の爆発が抑えられた。
いや、頭の中がどこか、麻痺したのだろうか。

あの時の梶田の言葉、顔つき。
忘れるわけが無い。

 またどこからか、ほんの刹那、クチナシの香りが通り過ぎたような気がした。
 
 
 
 
    (つづく)




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Date:2010/11/29
Trackback:0
Comment:10
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

* No Title

おおっ話が一気に。

そりゃー坂木さんの心の傷になるはずですな。

この過去が、現代の陽の任務とどうつながってくるのかも楽しみです……って、もしかしてつながらなかったとか……(汗)
2010/11/29 【ポール・ブリッツ】 URL #0MyT0dLg [編集] 

* ポールさんへ♪

あぁぁぁぁぁぁそれは言わないでぇぇぇぇぇ(^^;

つ、つながらな・・・い・・・と思う・・・たぶん(^^;
2010/11/29 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

ううう。
もうすでに悲しい。切ない・・・。
梶田は小夜子と幸せになるんじゃないのね(T_T)
何があったのよお。
・・・・辰巳に訊いてやろう。むりか。

はやく、続きを・・・・・。

それにしても、いいなあ、このおっさんたちの語らい。
2010/11/29 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* limeさんへ♪

あー、たぶん辰巳に聞いたら、べらべらしゃべってくれるんじゃないすか?(^^;

梶田と小夜子がこのまま幸せになったとしても、それはそれでなんだかちょっとせつない坂木の思い出話で成立しましたかね?(笑)
でも、そうはいかないようにしてしまうあたり、私もlimeさんにかなり影響受けて似てきたかもしれません(^^;

おっさんたちの語らいも、酔いがまわってきたらどうなってしまうことやら・・・。
もう、私にも止められません(^^;

2010/11/29 【秋沙 】 URL #- 

* こんにちは^^

おっとーーーー!!
話が一気に展開の様相を見せてますね~~。


やっぱり梶田は亡くなってたんですね・・・・・。
そんな気がしていました。
文中に出て来る、「弟夫婦」。この人達の存在が、何だか引っ掛かります。
あははは! また私の深読みなんでしょうけど(爆)。


最近ちょっと喘息の調子が良くなくて、頻繁に訪問が出来てませんでした~。ごめんなさいね~~v-406
続き、楽しみにしてますよ~e-266
2010/12/02 【】 URL #9dnUgMTg [編集] 

* 蘭さんへ♪

体調どうですか~?くれぐれも無理はしないでくださいね~。
ここからは、さらに更新がゆっくりになる可能性大ですから~(^^;

はい、「非の打ち所の無いいい人」は長生きしないものであります(極論)。

あはは、「弟夫婦」!!
そうか~もうちょっとその夫婦を書き込んでみてもよかったかな?(笑)
2010/12/02 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

遅ればせながら、「くちなしの墓」地味に読んでます。
このお話とかって、ある程度の設定はlimeさんがされているんですかね? やっぱり?
それともほとんど秋沙さん?

私の中で坂木はイメージ的にシティー○ンターの海坊主なんですが……知ってます?
2011/02/02 【ヒロハル】 URL #- 

* ヒロハルさんへ♪

ありがとうございます~。
相変わらずだらだらとした文章で、いっぺんに読むのは相当骨が折れると思われます~。ごゆっくりどうぞ~(^^)

このお話は、珍しくほとんど私が創作しております。
でも、書き始める前にlimeさんに簡単にあらすじをお話して承諾を得ました。
その時に、ちょっとlimeさんが「こんなのもいいかも・・・」と提案してくれた部分を、この先の第二部に少し盛り込むつもりです。

シティーハンター、ちゃんと見たことはないんですが、「海坊主」はネットでその姿を見てみました(^^)
そうですね~、ヒゲにサングラスというところはバッチリですが、坂木はあんなにマッチョじゃないです(笑)。
背も低いしちょっとだけ小太り(ガタイがいいと言えって)で、どちらかというと、そこらへんにもいそうなむさ苦しいオッサン?
なんちゃって、もともとはlimeさんが生み出したキャラなのに、私がここまで言っちゃっていいのかしら(^^;
2011/02/03 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

ああー…orz

辰巳さん!!坂木さんの心の傷をえぐるようなことを言うのは、わざと!?わざとなの!?

なんか、後のストーリーを想像するだけで辛くなってきます…。
2011/12/16 【有村司】 URL #- 

* 有村さんへ♪

「な!?ひどいだろ!?俺はここまでKYか!?秋沙のせいでどんどん俺の評判が悪くなるんだよ。俺はここまでひどい奴じゃないぞ!?」
と、辰已が騒いでおりますが・・・(^^;

ちょっとせつない初恋の思い出・・・のように見えた(?)このお話、このあたりから悲壮感が漂ってまいります・・・。
どうぞ、ご気分のよろしい時に読み進めて下さいませ・・・(^^;

2011/12/16 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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