もうひとつの「DOOR」

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□ くちなしの墓 第一部 □

濃緑の葉 7

 その日、祖母と話している梶田がなんとなく上の空なのを、壮太は気にしていた。

祖母も同じように感じたのか、いつもなら帰ろうとする梶田を引き止めてまで話し込むところが、
「毎日練習で疲れとるんやろ。試合も近いしもうお帰り。」
と自分から言い出したほどだった。

壮太が玄関先まで梶田を見送りに出ると、
「ちょっといいか。ここでは話せないことがある。」
と梶田が手招きした。

梶田は押し黙ったまま自転車を押しながらしばらく歩き、公園に入っていった。
以前に、小夜子への想いを壮太に打ち明けた、あの公園だ。

すっかり夕闇が落ちた公園はあの時と同じように、クチナシの花が生垣に咲きはじめている。

(小夜子についての話だろうか。まさかうまく行ってないとか?)などと、壮太も無言で梶田の後に従いながらぐるぐると考えをめぐらせていた。

大きなため息をつきながら、前と同じベンチに梶田が腰をおろした。

まだ頭の中でいろいろと想像だけが先走っていた壮太は、自分の自転車のスタンドも立てずに、梶田を見下ろして黙って突っ立っていた。

もう一度、大きなため息をついた梶田が、意を決したように言葉を発した。


「小夜子が・・・小夜子が妊娠した。」

「・・・なっ・・・えっ!?」

壮太の言葉も思考も、いっぺんに停止した。
妊娠?

やや間があってから、壮太はどうにか言葉を返そうとした。

「妊娠って・・・あれか? あの、妊娠か?」

壮太の混乱した言葉に、梶田は少し笑って答えた。

「妊娠に、あの妊娠もこの妊娠もあるか。」

「う・・・いや、まぁそうだな。」

梶田の笑顔を見て、頭が少し働き始めた壮太は、ばたばたと自転車を停めて自分もベンチにへたりこむように座った。

「そうなのか・・・。」
「あぁ。」

しばらく二人は、言葉もなくベンチに並んで座っていた。

やっと思考回路がまともになってきた壮太は、思い切って梶田に問いかけてみた。

「それで・・・どうするんだ?」

「どうするって?」

「・・・う、産ませるのか?」

「当たり前じゃないか。」
至極当然、というふうに梶田は答えた。

その表情に迷いが無いことを確認した壮太は、安堵感と、新たな不安や疑問がいっぺんに沸いてきて、思わず早口になった。

「いや、お前、当たり前って言うけどなぁ。まだ学生だぞ? どうするつもりなんだ?」
「そこは・・・確かに俺も困っている。」

「お前・・・困るくらいだったら・・・」

「殴ってもいいぞ、俺を。」

「あぁ?」

「殴らないのか?」

「そういうことじゃないだろう!? いや、まぁ、確かに、なんでこんな、試合もあるし大事なときに・・・とも思うが。」

「これだけは言っておくが、決していい加減な気持ちでこうなったわけじゃないんだ。」
「当たり前だっ!」

「将来を・・・今度の大会でいい試合をして、卒業したら社会人チームに入って、そうしたらすぐにでも小夜子を嫁にもらいに行くという約束をしたんだ。
その約束の証だった。」

「そうなのか・・・。」

なぜか、それを聞いて壮太が赤くなった。

「俺は、嬉しいんだ。俺と小夜子の子供ができたということが本当に。
ちょっと早くなってしまったが、なんとか、学生結婚でもいいから籍を入れたい。
お袋や、小夜子のじいちゃんばあちゃんがどう言うかまだわからないが、一緒に暮らすのは卒業してからでもいい。けじめはきちんとつけようと思っている。
少しの間・・・小夜子には苦労をかけてしまうが。」

「そうか・・・。」

「まずは、俺の両親に打ち明けて、当面の生活のことなんかを相談してみる。
それから、小夜子のじいちゃんばあちゃんだな。」

「そうか・・・。」

「お前にも、心配かけたり、力になってもらうこともあるかもしれないが、よろしく頼む。」

「いや、まぁ、俺に何かできることでもないが・・・。
 まずは、お前のお袋さんが納得してくれるといいがな。」
 
「そうだな。
 まぁ、お袋にとっても初孫になるわけだし。なんとしても説得してみせる。」

「そうか。」

「またお前に殴られるんじゃないかって、そのほうが心配だったんだけどな。」

梶田が白い歯を見せて、にっと笑った。

「『また』ってなんだよ。俺は一度もお前を殴ったりしてないじゃないか。」

「『小夜子を傷物にしやがって!』とか言われるかと思ってな。」

「そんなこと言うか。馬鹿やろう。」

壮太は、ふざけて軽く梶田の横面にパンチを入れた。
内心、複雑ではあったのだが、なぜか、梶田の力強い口調に自分にも甥っ子か姪っ子が生まれるような、わくわくする心持でもあった。

梶田も、やっといつものように快活に笑った。

「じゃ、びっくりさせて悪かったな。これから帰って、お袋に話さなくちゃな。
 あ、お前のおばあちゃんには、まだ黙っておいてくれよ。余計な心配をかけちゃ悪いし。」
 
「あぁ。まぁ、すぐに知られるような気もするけどな。」


もう一度、満面の笑顔を見せた梶田は、決意に満ちた、逞しい顔をしていた。

「じゃぁな。」

その男らしい後姿を、壮太は公園から見送った。
クチナシの香りが、その時は幸せな清々しい気持ちにさせてくれた。



しかしそれが、壮太の見た梶田の最後の姿になってしまった。


     (つづく)




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Date:2010/12/02
Trackback:0
Comment:8
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

* No Title

うわあ……。

梶田くん気持ちはわかるがちょっとそれはなんですよ。

小夜子さんがどうなるか、先を読まないでもわかる気がするなあ……。

うわああ……(←マイナス思考)
2010/12/02 【ポール・ブリッツ】 URL #0MyT0dLg [編集] 

* ポールさんへ♪

やっぱりそれはちょっとなんですかね(^^;

すみません・・・梶田に代わりまして、作者のわたくしがお詫びいたします・・・(笑)

先を読まないでもわかっちゃいますよね。すみません、ワタクシの力不足でございますm(_ _)m

えぇそりゃぁもう、転落の一途を・・・たどりますかね(^^;
壮太がんばれって感じでしょうか。
2010/12/02 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* いったい、なにが・・・。

そうなのね、梶田。
そうか、そうか(>_<)
複雑だけど・・・愛があるんだし・・・。
けじめは付ける男だしその辺は大丈夫と思うんだけど・・・。
(親戚のおばちゃんか?)

え?
でも、それよりも、それが梶田の最後の姿って??
なに? 何があったの? ポールさんにはわかって私にはわからないの?

そして、どうして壮太・・・坂木は大事な人とそんな風に別れなきゃならない運命なんでしょう(T_T)

いや、私にも責任がありますが。

壮太、がんばって。
辰巳になんとかさせよう。
(ああ、だめだ、辰巳は空気が読めない!!)
2010/12/02 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* こんばんは(再)。

・・・・・・・・・・・・・・

あ、ダメ。
発作が起きそうですv-399
ショック過ぎてv-406

何ですか、この展開うわ~~~~~~~e-330
私の方が、ショック死しそうですよ~~~v-404v-404

次回を待つ!!
2010/12/02 【】 URL #9dnUgMTg [編集] 

* limeさんへ♪

言ったじゃありませんか、だんだんlimeさんに影響を受けて、登場人物に対してドSになってきた私ですって(笑)。

きっと、このまま何事も無ければ、梶田はきちんとけじめをつけて、自分の親と小夜子の祖父母の了解も得て、小夜子と幸せな家庭を築いていたことでしょうねぇ。

でも、それでは成立しないのが小説の世界('-'*)フフ

そして・・・そうですとも!辰巳は空気を読めません!
この先・・・辰巳のKYぶりをお楽しみに(笑)。
2010/12/03 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* 蘭さんへ♪

うわ、どうしよう(^^;
このお話が終わる頃には私は殺人者になってしまうかもしれない(^^;

これまでの私の2作とは、違う展開をお見せすることになると・・・思われます。覚悟しておいてください(笑)。
発作がおきそうなときは読まないでください(^^;
2010/12/03 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

ギャー!!

そんなあああ…!!

ギャー!!

落ち着けっ!有村!

でも言葉が出ないんです…!!そんなあ…!!
2011/12/17 【有村司】 URL #- 

* 有村さんへ(^^;

だだだ、大丈夫ですか?
(いや、私の書いたもののせいなんですが)

もう、ここでは私からはなんとも・・・。
先を読んでいただくしか無い(^^;
2011/12/17 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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