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□ くちなしの墓 第一部 □

濃緑の葉 11

 「産む」と決心してからの小夜子は、みるみる明るく元気になっていった。

小夜子の祖父母も、最初は驚き、反対したものの、小夜子の決心が固いことを受けて、だんだんとひ孫の誕生を楽しみにするようになったようだ。

事務仕事だから大丈夫、と言って臨月ぎりぎりまで仕事をする約束も、会社との間に取り付けていた。

小夜子が仕事帰りに壮太の祖母を訪ね、一部始終を話した時には、祖母は泣いたり怒ったり心配しておろおろしたり大変な騒ぎだったが、最後にはやはり自分のひ孫ができるかのように楽しみにし始めた。

壮太は、そんな小夜子を少しだけ痛々しいような気持ちで眺めていたが、できるだけは力になりたいと思うようになっていた。
しかし、実際には、小夜子の腹がかなり目立つようになって来る頃には、壮太の生活は変わってきていた。

祖母がほとんど寝たきりになってしまい、大学へ通うこともままならなくなっていたのだ。
祖母はそのことをとても気にかけていたが、壮太は「ある程度の単位は取れているから、休んでいてもまた取り戻せる」と、嘘をつきながら祖母の看病をしていた。
梶田が死んで以来、ほとんど練習に顔を出さなくなっていたラグビー部には、とっくに休部届けを出してあったが、その事は祖母には話さずにいた。


年が明け、冬が過ぎ、日差しの暖かさが増してきたある日、小夜子の祖母からの電話で、小夜子が無事に元気な男の子を出産したと聞いた時も、祖母の具合があまり良くなくて、壮太は病院に行くこともできなかった。

 そんなふうにして、なかなか小夜子と赤ん坊に会う機会がないまま、ほとんど初夏と言っていいような季節になっていた。
 
陽気が良くなったせいか、祖母の具合が少し良くなり、起き上がっていられることが増えてきたある日、小夜子が赤ん坊を抱いて訪ねてきた。
しばらくの間、小夜子の祖母が時々持ってきてくれていた榊の葉も、今日は小夜子が持ってきた。

祖母とともに、赤ん坊を見ることを楽しみにしていた壮太だったが、玄関から入ってきた小夜子を見た途端、なんとも面映いような気持ちを覚えた。
梶田を失った時には、あんなにも暗い表情で顔色も悪く、笑ったとしても硬い笑みを見せていた小夜子が、暖かな、穏やかな顔をしている。
少しふっくらとしたように見えるその頬は、「母」になった喜びと、ほんの少し色香のようなものを漂わせていて、壮太は思わず見とれてしまっている自分を慌てて恥じたほどだった。

赤ん坊を見せられた祖母は、「あら可愛らしい」「大人しくてえらいこと」「かしこそうな顔だ」「きっと大人になったら色男だ」などと思いつく限りの褒め言葉を並べ、涙ぐんだりしながら大喜びをしている。

壮太は「なんや壮太。そんな隅っこで。」と祖母に声をかけられて、やっと恐る恐る小夜子の腕の中で眠る赤子の顔を覗き込んだ。

眠っているので目元はわからないが、口元が小夜子に似ているような気がする。
眉毛がまだ薄いとは言え太めで一文字になっているあたりは、梶田ゆずりか。

「お地蔵さんみたいだな。」

なんと言っていいかわからず思わず口から出た言葉に、小夜子と祖母は大笑いをした。

「壮ちゃん、抱っこしてみる?」

「え?俺がか?」

赤ん坊を触ったことなどない壮太は怖いからイヤだと言ったが、祖母と小夜子に「いいからいいから」と面白がるかのようにすすめられ、おっかなびっくり手を赤ん坊に伸ばした。

「こうやって、首のところとお尻を支えてね・・・。」

ぎこちなく受け取ってみると、予想以上にずっしりとした重さを感じた。
ほわほわと柔らかい髪の毛、顔の辺りでしっかりと握られた小さな手、乳の匂い。
壮太の心の中に、うまく説明のできない甘酸っぱい気持ちが広がった。

「そんなに肩に力を入れなくても大丈夫だよ、壮ちゃん。」
と、小夜子が笑うが、どうにも緊張してしまう。

そのうち、ぐっすりと眠っていたはずの赤子が、抱き方が悪いのかむずかりだした。
ぐずぐずと、だんだん泣き声になってくる。

「お、おい、どうすんだよ、これ。」

小夜子は笑って赤ん坊を受け取ると、「よしよしよし。おじちゃんが緊張してるから怖くなっちゃったのよね~。」と慣れた調子であやしている。
すぐに、赤ん坊はまた静かになって眠り始めた。

「仕方ないだろう。赤ん坊なんて初めて抱いたんだから。」

壮太がふくれっつらで言い訳をするのを、祖母と小夜子はまた笑った。

「そろそろ、お乳の時間だわ。本当に泣き出しちゃうから、帰るね。」

祖母は残念がったが、またちょこちょこ顔を出すから、と言って小夜子は帰り支度をした。

玄関先まで見送った壮太は、
「その・・・生活とか、大丈夫なのか?」と尋ねてみた。

「うん、あと半年もすれば、この子はおばあちゃんに見ていてもらって仕事にも復帰できるし。」

「そうか・・・。」

「壮ちゃんのおばあちゃん、あまり具合良くないのね?」

「まぁ、このところ暖かくなってるし調子はいいけどな。」

「そう・・・壮ちゃんも大変ね。大学・・・ずっと休んでるんでしょ?」

「ばあちゃんの調子が良くなってくれば、また復学できるから大丈夫だ。」

「そう・・・?お大事にしてね。」

「あぁ。」

帰っていく小夜子の後姿を見送りながら、腕がなんとなく痛いのに気付きながらもだらしなく頬が緩んでしまっている自分に気付いて壮太はあらためて新しい命の力を感じた。
しかし、同時に、我が子を抱くことができなかった梶田の無念を思い、少しだけ薄れかけていた親友を亡くした悲しみも蘇ってくるのだった。



    (つづく)





す、すみませんっっ!!
「濃緑の葉」今回で終わる予定でしたが、ダメでしたぁぁぁぁm(_ _)m

あ、あと1話・・・の予定です。え?もう信じられない?
うぅぅぅ、狼少年の気持ちですぅ。


今回は、過去のお話だけで、現在の坂木が出てきませんでしたね(^^;
あれから酔っぱらいの辰巳はどうしたんでしょうか。
ちょっと書こうかとも思ったんですが、もういいや、ほっとこう、と思ってしまった作者です。





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Date:2011/01/04
Trackback:0
Comment:6
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

* No Title

赤ちゃんは、男の子だったんですね。
じ~~~ん。

赤ちゃんを囲む風景はとてもほほえましくて温かいけども、なにかその、これから何か起こるんじゃないかという思いがあって、手放しで喜べないような・・・。
ひねくれ者・笑

それにしても、坂木と赤ちゃん・・・・。
似合わない (^_^;)
あ、まだ若く、初々しい坂木ですもんね。
ぎこちなく赤ちゃんを抱く姿が浮かんできて、笑ってしまいます。
次回で「濃緑の葉」、終わるんですね。
早くも次が楽しみです。

しかし、とうとう放置された辰巳。
一度はカッコいいところ、見れるんでしょうか。

すっかりあなたはOEAコメディ担当幹部・・・(^o^;
2011/01/04 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* limeさんへ♪

もう、濃緑の葉はあとは状況説明だけでさらっといこうと思って書き進めていたのですが、どうしても、壮太が赤ん坊に対面するところを細かく書きたくなってしまって、結局長くなっちゃいました(^^;

辰巳、いつまで放置しておいたものやら(^^;
かっこいいところ・・・見せたい気もするんですが、どうも今回は不安が大きいです(笑)
2011/01/05 【秋沙 】 URL #1wRwRxBQ [編集] 

* No Title

?終わりませんね。笑
10話に『くちなしの花』が、第一部のエンドロールのように流れ…
これはもしや、二部にて赤ん坊と共に一歩未来に踏み出した小夜子とそこに寄り添うように存在してきた坂木の運命に何かしらの変化が?次の二部で新しい展開が始まるのか!?
と、むずむずと早とちりの妄想が私めの脳内で頭を擡げていましたが…
待てよ?一部のあらすじでは、『濃い緑の葉をもつ植物が二つ…』まだひとつしか出てきてませんよね。
まさか坂木なだけに榊とは言いませんよね。笑
15、16話くらいなっても、私は一向に構いませんよ。
複雑で長いのは好きなので、この際じっくりお願いします。
って、ジャンル的にはそういうわけにもいかないのかな?
余談ですが、『日々のたわごと〈嗚呼、独りよがりと誤解の罠〉』を読んで、バンドVo.さんに辰巳を見てしまいました。詩の解釈には、思わず噴き出してしまいました。私は、色と匂いのある個性的な詩だと思いましたよ。
こちら、引き続き楽しみにしています。(*^0^*)
2011/01/15 【】 URL #41q05U9. [編集] 

* 銀さんへ♪

あ・・・え~~~っと、「坂木」だけに「榊」ですぅ、ごめんなさ~い(^^;
最初のほうで、小夜子が「おつかいもの」として「榊の葉」を持ってきていましたよね?
あれ、伏線になりきれなかった伏線です(笑)。

あはは、うちのボーカルに辰巳を見ましたか!!
確かに、見た目おとなしくて地味な感じなくせに、中身はまるでオヤジです!(笑)
まぁ、辰巳みたいな豪快さや強引さは皆無ですが(^^;

今日、バンドのリハがあったんですが、またなんだかおかしな事を言ってましたよ、彼女。
歌詞がまぎらわしくて間違いやすいとぶつぶつ言ってたんですが、「『あなたの肩にもたれ息をひそめ』てるのは誰だ?あなたか?私か?蝶か?」とか(^^;
で、一人で「あ、蝶は息しないか」とノリつっこみ。
ドラムのやつに「いや、生きてりゃ息はするだろう」と言われ、「それこそ虫の息か?」と皆で笑い。

・・・大丈夫ですかね?このバンド(^^;
2011/01/17 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

とうとう酒場に置いて行かれたたつみん…描写すらしてもらえませんでしたね(笑)

新しい命の誕生が、小夜子ちゃんに強さと新しい風を運んできてくれたようでホッとしました。

そしてやっぱり季節はくちなしの頃…。
2011/12/21 【有村司】 URL #- 

* 有村さんへ♪

えへへ。辰已、放置しちゃいました(^^)
まぁ、放置されてもめげないのがKY辰已ですが(笑)。

母は強しです。どんどんこのあと、小夜子、強くなります(ぇ)。

そう、そして、しつこいくらいにくちなしの季節・・・。
2011/12/21 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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