もうひとつの「DOOR」

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□ くちなしの墓 第二部 □

くちなしの墓 2

 陽が第二支部の仕事に発ってから、一週間が過ぎようとしていた。
 
これまでに陽からの連絡は、一通の短いメールのみだった。

「ここでの仕事は無事に完了しましたが、ちょっとやりたい事があるのでもう少しこちらにとどまります。」

 メールを受信した時、咄嗟に返信ボタンを押した坂木だったが、本文を打ち込もうとしたその指が止まった。

「俺の育った町で、何をしようって言うんだ?まさか、俺の過去に関係のあることなのか?
 陽・・・お前はいったい、どこまで知っているんだ?」
 
そんな疑問が頭の中を渦巻いて、結局携帯電話をベッドの上に放り投げてしまう。


ホテルを変えよう。

なんの脈略も無くそう思い立った坂木は、すぐに身支度をして繁華街の裏通りのビジネスホテルをチェックアウトした。
隣のビルが近くて、窓からはその壁しか見えない部屋には飽き飽きしていた。

眺めの良いバルコニーがある高級ホテルの部屋に身を落ち着かせて、坂木はほんの少し、気分転換ができた気がした。
しかし同時に、ついいつもの習慣でツインの部屋を選んでしまったことを後悔した。

結局は、また携帯電話を取り出して、陽に連絡を取るかどうかを悩んで部屋の中をうろうろしたが、決心がつかなかった。
しばらく考えてからダイヤルしたのは、辰巳のオフィスだった。

「辰巳だ。」

3コール目で、明らかに不機嫌そうな辰巳の声が聞こえた。

「俺だ。」

「なんだ、お前か。今忙しいんだ。」

「陽は、仕事が終わったのに戻らない理由を、そっちには言っているのか?」

「逆にこっちが聞きたいね。お前さんには何も言ってないのか?」

「・・・・。」

「高級ホテルの部屋はどうだ?いいご身分じゃないか。」

どこに宿泊しているのかの情報は、常に本部には伝わっている。
もちろん、費用も本部から出る。
本部に近いところにいるのにホテルに、しかも高級ホテルに泊まることなどは普通の使徒にはなかなか許されることではない。

幹部の辰巳がしぶしぶ認めているからこそできる、坂木のわがままだった。

「陽に許可を出してるんだろう?なんであいつは第二支部に残ってるんだ?」

「許可を出すも何も、あいつが何かやりたいと言い出したら誰にも止められん。
まったくお前さんたち二人には頭が痛くなる。」

「陽は何をするつもりなんだ?」

「・・・墓参りだとよ。」

「墓参り?」

「あぁ。そうだ。お前のばあさんの墓参りだよ。」

「なんだって?」

「まったくあいつは・・・鉄砲玉みたいなやつだな。
 まぁ、どうせ少し休暇をやるつもりだったから、仕方なく許可したんだ。」

「俺のばあさんの墓って・・・あいつには場所もわからないだろう!?」

「お前の本名を聞かれた。あとはお前がいた街の場所だ。それしか俺には情報がないと言ったら、それだけで探すからいい、だとよ。」

「・・・・。」

「とにかく俺は忙しいんだ。確かめたいなら自分で陽に聞いてくれよ。」

そう言うと、辰巳は乱暴に受話器を置いたらしい。

坂木は、しばらく呆けたように受話器からの「ツー・ツー」という音を聞いていた。

「余計なことを・・・。」

永代供養を頼んであるとは言え、OEAに入ってからは一度も祖母の墓に行っていない。
どうなっているのか気掛かりだったことは確かだ。
しかし・・・。

陽はいったい何を考えているのか。
そんなことはいいから帰ってこい、と連絡するべきなのか。

坂木はバルコニーに出てタバコをふかしながら、捨てたはずの故郷の景色を思い出していた。
眼下にはホテルの庭園があり、その向こうにはネオンが輝き始めた黄昏の都会が広がっている。
夏の草の匂いが11階の部屋まで昇ってきて、かすかにくちなしの花の香りが混ざっているような気がするのは、故郷を思い出しているからなのか、坂木にはわからなかった。



◇     ◇     ◇     ◇




 その日、壮太が仕事を終えた時には、梅雨の曇り空だった。

しかし、銭湯で少々長湯をしてしまったら、上がったときには雨が降り出していた。
傘を買おうか迷ったが、このくらいの小雨なら、と手ぬぐいを頭に乗せて自分の部屋までの道を走った。

アパートが近づいてくる頃には、雨足が強まってきていた。
勢いよくアパートの外廊下に駆け込むと、自分の部屋の前に人影がある。

薄暗がりの中を近付いてみると、ハルキを背中におぶった小夜子だった。

「小夜子か?どうしたんだ?」

「壮ちゃん・・・。」

小夜子の顔には、切羽詰った表情があった。

「どうした?何があった?」

「壮ちゃん・・・あの男が・・・。あの男が店に・・・。」

「あの男?」

とにかく、ここで立ち話をしていては、雨が降りこんでくる。
壮太は、まず小夜子を部屋に上がらせた。

くずれるように畳に座り込んだ小夜子に、壮太はポットのお湯を入れた湯のみを渡した。
髪が雨に濡れている。
乾いたタオルで眠っているハルキの頭を拭いてやってから、そのタオルを小夜子に手渡したが、上の空の小夜子は自分の髪を拭くことはしなかった。

「で、あの男って誰なんだ?」

小夜子は、唇を噛み締めたまま、握っていた紙切れを畳の上に置いた。

それは、地方新聞の小さな切り抜きだった。
3年前の、梶田の事故を伝える記事だ。
ほとんど判別のつかないほどの荒いドットで、梶田を轢き殺した男の顔写真が載っている。

「小夜子・・・まさか・・・。」

小夜子は硬い表情のままうなずいた。

「でも、お前・・・この男の顔は見たことないだろう?」

「他のお客さんが、『工藤さん』って話しかけてた・・・。『出てきたのか?』って。『三年ぶりだねぇ』って。」

壮太の脳裏に、あの、判決を下されたときに下卑た笑いを浮かべた工藤の顔が、つい昨日見たかのようにはっきりと思い出された。




     (つづく)
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Information

Date:2011/02/13
Trackback:0
Comment:12
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

* No Title

絵に描いたような悪役ですね。

小夜子ちゃんの貞操どころか生命まで心配になってきます。

さらには子供の命まで……。
2011/02/14 【ポール・ブリッツ】 URL #0MyT0dLg [編集] 

* No Title

陽の名前が出てきただけで、にやけてしまう・・・。
陽は、坂木の本名を知らなかったんですね。
そして、辰巳に聞く。
ふふ。
なんだかそんなところが陽らしい。
この二人、なんとも微妙な気遣いがあるんですよねえ。

陽は、今何を考えてるのかな。
(生みの親にも不可解な子です・爆)

さあ、あの男が、何かひと波乱起こしそうですね。
壮太、守れるのか。
ハラハラしながら待ってます!
2011/02/14 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* ポールさんへ♪

まぁ、なんのオチもないサスペンスですから・・・(^^;
推理小説ではないんですよぉぉぉ

それ以上言わんといて~~~~(笑)
2011/02/14 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* limeさんへ♪

うふふ。
本名くらい知ってろよ!ってツッコミ入れたい気もしますが、やっぱりこの二人の事だから(というか坂木の事だから)話してないんじゃないかな~と。
「お墓参りしたい」なんて坂木に言ったら、怒られそうですよね。「いいから帰ってこい!」って。(寂しいもんだから)。

陽はどんなふうに辰巳に言って、どうやって許可をもらったのか想像するだけでも楽しい(^-^)
辰巳に「陽は苦手だ」と言わしめる部分をフル活用したんでしょうね(笑)。

陽が今何を考えているのか・・・わかんないんですよ、あたしにも!!
limeさんにもわからないなら、あたしにわかるはずもないですね(いいのかそれで)。
2011/02/14 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

追いついた。笑。
やはりあの男が絡んできましたね。
ここからの展開を知るのが怖いくらいです。

あっ、ゆっくりと書いてくださいね。笑。
2011/02/16 【ヒロハル】 URL #- 

* こんにちは^^

ご無沙汰しちゃってました、秋沙さん~~e-330
ごめんなさいv-406v-406

現在形から始まってたので、一瞬「何の話だったっけ??」と混乱しそうになりました(笑)。

とうとう出て来たんですね・・・・。
しかも、小夜子の前に現れた?
もしかして、ここから一気に展開して行くのかな?
次回が気になるところですv-393
2011/02/16 【花木蘭】 URL #9dnUgMTg [編集] 

* ヒロハルさんへ♪

あっという間に追いつかれましたね(^^;

はい、「あの男」が戻ってまいりました(笑)。
あんな絵に描いたような悪役、絡ませないはずがありません(^^;

徐々に、(いや結構唐突かも・・・)「あの男」の人物像もわかってまりますので・・・
ここからはごゆっくり(笑)おつきあいください。
2011/02/16 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* 蘭さんへ♪

いえいえ、なかなかナイスタイミングですよ蘭さん(^^)

ご無沙汰と思って来てみても、いつも一話進んでいるかどうかという感じでしょう?(笑)

とうとう出て来ちゃいました。「あの男」。

頭の中で構想を練っていたときには、遅々としてお話が進まないのではと思っていたのですが、いざ書き始めてみたら意外とすんなり、というか急転直下で進んでしまうかも(^^;

あ、あくまでも「ストーリーが」急転直下なのであって、私の書くスピードは相変わらずなんですが(^^;
2011/02/16 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

実際にひき逃げ犯なんてこんなものだよね。

母と妹が当て逃げされたことがあった。
全損事故だった。
二人共後遺症で苦しんだ。
犯人はね、逃げたけど現場にナンバープレートが落ちていたの。
すぐに捕まった。
会社の車で乗っていたのは社員だった。
その会社の社長、事故った方が悪いって一度も謝罪に来なかったよ。
翌年、その社長が運転する車が事故を起こした。
自分は半身不随、同乗者二人即死。
罰だと思うよ。

坂木が天罰を加えるのも近いのかな。
楽しみだわさ。

2011/11/21 【ぴゆう】 URL #- 

* ぴゆうさんへ♪

そんなことがあったんですか・・・。

それは・・・このテーマ、ちょっと辛いことを思い出させてしまったようで申し訳ありません。

だけど、天罰ってあるんですねぇ、と思ってしまいました。
その社長、事故を起こしてしまった後、どう感じたんでしょうね・・・。


さぁ、坂木(壮太?)が工藤に天罰を与えることができるかどうか・・・
それは続きで・・・。
2011/11/21 【秋沙 】 URL #- 

* No Title

ひい~~~!!

出てきたよ!外道の工藤!!
まさか小夜子目当てで梶田さんを轢き殺したんだったら、おばちゃん絶対に許さないからね…!!!
2011/12/25 【有村司】 URL #- 

* 有村さんへ(汗)

うああああ、またコメントの順番を間違えてしまいました~~~~ごめんなさいっっ!!


出てきましたよ~~~~工藤。
いやぁ、さすがに小夜子目当てって事はありませんが(^^;
ただの酔っぱらい運転ですからぁぁ。
2011/12/26 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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