もうひとつの「DOOR」

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□ 霧の物語 □

霧の物語 1

*モバイルからの閲覧では、一部表記が崩れます。ご了承ください。

 お湯が沸くのをただぼんやりと待っていたら、やかんが急に歌い始めた。
歌というより叫びだ。
まるで壊れたバイオリンのような乾いた音だった。
私は突然ハッと思い立ち、ガスの火を消して家の外にある物置小屋に走った。






 私、矢野やの霧絵きりえ、18歳。
来年高校を卒業したら、デザイン学校に行くことになっている。

病弱だったママはもう10年も前に死んで、それからずっとパパと二人暮し。
最近となってはパパは海外出張が多いので一人暮らしに近い。

今もパパは出張中だから、山の中の別荘に一人で来ている。ひとりぼっちは慣れているから、白樺林に囲まれた寂しい場所にいてもなんでもない。

緑が多いからここは大好き。
それに、ちょっと離れたところにある別荘に毎年来ている私の彼氏(と、いう事に勝手にしてるんだけれど)の、康信君と2年前から仲良しなれたんだもの。

彼、今日あたりここに来るはずだけど・・・。


 そしてここには、ママの弾いてたピアノもある。
私はそんなに弾けないけど、レコードを聴きながらそのピアノを見ているだけでも良かった。

ママはピアノが上手かった。
そして、ドビュッシーの曲を弾いていることが多かった。

もう10年以上も前からママのピアノを聞いてないけれど、今でも覚えている。
優しくて、流れるようなメロディーは、ママ以外に弾ける人がいないような気がする。
(なぜかはっきりとは言い切れないけど。)

ママのお得意は、「前奏曲集」の中の「霧」という曲。私の名前もここからついた。

サラサラと細かい音。白樺の木の間から流れ出る霧は、深く立ちこめ、すべてを語りつくして、消えていく。そんな曲だ。

生まれた頃から私はこの曲を聞かされていた。






 「えーっと、確かこの辺にあったはず。ヨイショっと。」
 
物置小屋の中は、空気が冷たく張りつめていた。

たしかに10年前、ここに私のバイオリンをしまったはずだ。

5分くらいガサガサやっていただろうか。
やっと小さな黒い、カビの生えたケースを見つけた。

ていねいに開けてみると、
「うわー、悲惨!!」

弦が錆びついて、2本も切れている。

「もったいない。結局、一度もまともに弾かなかったんだもんね。」

私が4歳の時、バイオリンを習うことになった。
買ってもらったバイオリンが何よりも嬉しくて、この別荘まで、弾けもしないのに持ってきていたんだ。

でもその時、ママが病気で倒れて、騒ぎの中でバイオリンは忘れられてしまった。

そして8歳の時、ママが死んだ。
ママのピアノに合わせてバイオリンを弾きたかったのに、ママはもういない。
私は泣きながら、このバイオリンをここにしまった。

 私の目から頬を伝って、壊れたバイオリンの上に涙がこぼれた。

外に出ると光が眩しかった。
目をぐいっとこすると私は、慣れない手つきでバイオリンを弾くことにした。

そっと音を出してみると、この世の物とは思えないような、奇妙な音がした。

たしかこんな事が前にもあったはずだ。
とてつもなく、なつかしい気がする。
いつだったか、これと似た事が―――――・・・。






(つづく)





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Date:2011/03/05
Trackback:0
Comment:6
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

* No Title

ほう。「読書文芸クラブ」ですか。
そしてクラッシック。
とても大人しそうなお嬢様を想像してしまいました。

中学校のときに書いた作品だそうですが、
ちゃんと先を期待させる書き方になっていますね。

ちなみに私は吹奏楽部でした。
2011/03/05 【ヒロハル】 URL #- 

* ヒロハルさんへ♪

この「読書文芸クラブ」は、部活動とは違って授業の一環みたいなもんでした。
部活は演劇部。目立ちたがり屋だったんです(笑)。
で、読書文芸の方は演劇部の顧問が担当だったので、安易に選んだという・・・(^^;
(単に運動音痴だったという話も)

でも、そう、私、ほとんどクラシック音楽しか知らずに中学までは育ったんです。お嬢っぽいでしょ?(笑)

中学生の時は、小説といったら赤川次郎くらいしか読んだことがなくて、ものすごく影響受けてますね(^^;

そっかぁ、ヒロハルさんは吹奏楽部。
やっぱりその後バンドを組む人は吹奏楽部という下地がある人が多いですね~。そして、上手なんです、そういう方達(^^)
2011/03/05 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* No Title

秋沙さんの中学時代~。
なんか、想像するとドキドキ。(オヤジか!)
この小説からは、中学生ならではの勢いというか、初々しさ、冒険心が伝わってきますね。
クラッシックで培われた秋沙さんの感覚♪
いいな~~。
ぜったいしっかりそんな感覚は生きてると思う。小説にも、人生にも。

まあ・・・実は4年間ピアノを習ったくせに、練習せずに逃亡した私からしたら、憧れです(*^_^*)
ああ、しっかりやっておけばよかった。
どんなことでも、小説のネタになったのに!
(最近、そんなことばかり思ってしまいます・笑)

続き、待ってます♪♫
2011/03/05 【lime】 URL #GCA3nAmE [編集] 

* limeさんへ♪

なにドキドキしてんですか(笑)。
中学生の私、良くも悪くも脳天気で天真爛漫でしたよぉ。
傷付けられた人も多かったんじゃないかしら。

確かに、なんというかイキオイのある作品かも。怖い物知らずって強いですよね(笑)。

limeさんも4年もピアノを習ったのなら、小説のネタにするにはじゅうぶんじゃないですか!(^^)
私だって、ギターは通算3~4年しか弾いてませんよ(^^;
ピアノだって、子供の頃は練習がイヤで泣きながらやってたし、中学生くらいになると全然練習せずにレッスンに言って、しょっちゅう先生にため息をつかれてました(笑)。

小説を書くとかお芝居をするのには、どんな経験だって無駄ではないと思いますよ。
べつに音楽じゃなくたって、limeさんのこれまでの人生全部、ネタになると思います。(と、最近私も自分に言い聞かせてます・笑)
2011/03/06 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

* 切ない始まりですね。

でも、綺麗なピアノの音が聴こえてきそうな空気に包まれます。
ヴァイオリン! fateは楽器はからっきしですが、聴くのは大好きです。
聴いてみたいな、ピアノとヴァイオリンの協奏。
そんな気持ちになりました。
2011/11/13 【fate】 URL #- 

* fateさんへ♪

うわぁぁぁぁ、この作品まで読んでくださっちゃうんですかっっ(^^;
いやぁ・・・「くちなしの墓」があまりに進まなくて時間つぶしにウケ狙いでupしてしまった作品なんですが・・・。
書き始めはがんばっていますが、最終的にはやっぱり中学生の作品です。笑ってやってください(^^)
2011/11/13 【秋沙 】 URL #mQop/nM. [編集] 

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